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ハーブサプリメントで有意な降圧効果を得られるか? システマティックレビューとメタ解析

血圧に対するハーブサプリメントの影響のメタ解析の結果が報告された。収縮期血圧の有意な低下が確認されたという。

ハーブサプリメントで有意な降圧効果を得られるか? システマティックレビューとメタ解析

ハーブサプリによる降圧効果に関する初のメタ解析

世界の高血圧患者数は約10億人と見積もられている。さらに2025年までに15億人に増加すると推計されている。高血圧は心血管イベントのリスク因子として最も高頻度にみられる疾患であり、10億人以上に上る患者の血圧が何らかの方法によりわずかに低下しただけでも、心血管イベント発生件数を大きく抑制可能と考えられる。

高血圧の治療・予防には、食事療法と運動療法を中心とする生活療法を基盤として、降圧薬による薬物療法が適宜追加される。このうち食事療法については、ナトリウム摂取制限、新鮮な野菜や果物、低脂肪乳の摂取が推奨される。また、主としてフェノール類が豊富なハーブサプリメントが心血管疾患に対して保護的に働くという研究結果が報告されている。

フェノール類は、ブドウ、ワイン、ブドウジュース、ベリー、ザクロジュースなどに多く含まれている。ただしその含有量は、栽培や加工のプロセスなどにより大きく異なる。一方、習慣的に摂取するハーブサプリが、血圧に影響を与え降圧療法の必要性を抑える可能性がある。ただし、その効果を検討した研究を対象とするメタ解析は行われていない。今回取り上げる論文の著者は、この研究を「ハーブサプリによる血圧への影響に関する初のメタ解析」と位置付けている。

RCTによる16報の論文、6種のハーブサプリの研究をメタ解析

システマティックレビューとメタ解析のガイドライン(PRISMA)に則して、PubMedに2011~21年に公開された論文を対象に文献検索を行った。適格基準は、植物由来のサプリメントの血圧への影響をヒト対象の無作為化比較試験(randomized controlled trial;RCT)で検討し、全文が英語で公開されている論文。肺高血圧、腎疾患、婦人科疾患の各患者のみを対象としている研究、動物やin vitroでの研究、血管機能や代替マーカーで検討している研究、アブストラクトのみが公開されている論文などは除外した。

3人の研究者のスクリーニングと全文精査により、ヒットした499報から31報の研究が分析の対象として抽出され、そのうちメタ解析に利用可能なデータが得られたのは16報だった。

検討されていたハーブサプリは、レスベラトロールが5件、ピクノジェノール3件、ビート根ジュース16件、メギ1件、ベルガモット2件、チェリージュース4件の6種類だった。

収縮期血圧の有意な低下が認められる

メタ解析は、収縮期血圧に対する影響と、拡張期血圧に対する影響が個別に行われている。論文ではその結果とともに、前記の6種類のハーブサプリそれぞれの研究結果の個別分析を加えている。

収縮期血圧への影響

収縮期血圧への影響については、13件が有意なハーブサプリの降圧効果を報告し、5件がプラセボ優位という結果を報告していた。メタ解析から、ハーブサプリの収縮期血圧に対する有意な降圧効果が示された(効果量d=1.45〈95%CI;0.93~1.96〉,p<0.05)。

サプリの種類別に解析すると、有意な降圧効果はベルガモットでのみ認められた(d=1.73〈1.14~2.32〉,p<0.001)。ベルガモットに関しては2件の報告があり、うち1件は低用量と高用量で検討しており計3件が解析対象とされ、それらのすべてが有意な結果を示していた。

その他のサプリごとの解析結果は以下のとおり。ピクノジェノールはd=3.02(-0.46~6.49,p=0.0891)、ビート根ジュースはd=1.34(-2.88~5.55,p=0.5349)、チェリージュースはd=0.99(-2.49~4.47,p=0.5772)、レスベラトロールはd=0.09(-1.14~1.32,p=0.8836)。

拡張期血圧への影響

拡張期血圧への影響については、9件がハーブサプリの有意な降圧効果を報告し、6件がプラセボ優位、3件が対プラセボで有意差なしという結果を報告していた。メタ解析から、ハーブサプリの拡張期血圧に対する有意な降圧効果は否定された(d=0.31〈95%CI;-0.28~0.90〉,p=0.3040)。

サプリの種類別の解析結果も以下のように、すべて非有意だった。ピクノジェノールはd=2.07(-1.85~6.00,p=0.3001)、ベルガモットはd=0.36(-0.36~1.08,p=0.3236)、レスベラトロールはd=-0.15(-1.32~1.03,p=0.8088)。

適切な用量設定のために今後の研究が必要

上記のように、メタ解析から示された効果量d値の95%信頼区間が比較的広かった。また論文の著者は、「システマティックレビューで抽出された研究報告の中には、検討結果を図示するのみで、メタ解析に必要な数値を示していなかった。RCTの研究報告では、他の研究者が定量的な解析可能なデータを示すことを推奨する」と指摘している。

論文の末尾では、本研究の限界点として、英語で全文が公開されている研究結果のみを解析対象としたことなどを挙げたうえで、結論には、「本研究で検討したハーブサプリは、収縮期血圧を低下させる可能性が示された。ただし、臨床効果の精緻な判断には、さらなる研究が必要であり、消化器症状などの副作用を来さない安全な摂取量の検討も求められる」と述べられている。

文献情報

原題のタイトルは、「The Effect of Herbal Supplements on Blood Pressure: Systematic Review and Meta-Analysis」。〔Antioxidants (Basel). 2022 Jul 22;11(8):1419.〕
原文はこちら(MDPI)

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