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女子サッカー選手の栄養はどうあるべきか? 選手・保護者・スタッフらの考えをインタビュー調査

エリート女子サッカー選手の栄養サポートの考え方について、選手本人とコーチ、保護者、栄養士、スポーツサイエンティストにインタビューして定性的に検討した結果が報告された。栄養ガイドラインに対する認識が、それぞれの立場でかなり異なることなどが明らかになったという。英国からの報告。

女子サッカー選手の栄養はどうあるべきか? 選手・保護者・スタッフらの考えをインタビュー調査

女子サッカー選手の栄養戦略の諸問題

女子サッカー選手の栄養に関する研究は、男子選手での研究に比べて立ち遅れていることが報告されている。現状では、男子選手対象に実施された研究からのエビデンスを女子選手に援用しており、性別特異的な要素があまり考慮されていない。実際のところ、女子サッカー選手では、エネルギー可用性の低下(low energy availability;LEA)が多く、選手の88%がLEAだとする報告もみられる。とくに炭水化物の摂取量については、選手本人、コーチ、栄養士など、立場によって考え方が大きく異なる可能性のあることが指摘されている。ボディーイメージや皮下脂肪への影響との関連で「炭水化物恐怖症」とも言える状態を経験する選手も存在する。

女子サッカー選手の間では、エネルギー不足が蔓延している可能性があるが、その理由はまだ明確になっていない。一つの問題として、アスリートに推奨される栄養のガイドラインの存在やその正しい理解が、選手や保護者、コーチなどの関係者の間で十分でないことの影響が考えられる。

現状を変えるための最初のステップは、現状を克明に把握すること。そのような考え方に基づき本論文の著者らは、エリート女子アスリートを取り巻く利害関係者を対象にインタビューを実施し、定性的な分析を行った。

選手と保護者、スタッフ、計47人にインタビュー

インタビューの対象は英国代表選手を含む、16歳以上のエリート女子サッカー選手と、その保護者やサポートスタッフ。選手の所属チームのゲートキーパーへのメール連絡を通じて募集された。対象者数は、選手12人、保護者9人、コーチ9人、スポーツサイエンティスト7人、栄養士5人、その他のメディカルスタッフ5人、計47人。各カテゴリーの対象者へインタビューを行い、新たに洞察すべきトピックがなくなったと判断された時点で対象者の募集を中止した。

インタビューはZoomによるオンラインで行われた。インタビュー中、カメラ機能はオンにし、18歳未満の選手(5人)については保護者が同室した。

2人の選手と3人のスタッフに対してパイロットインタビューを行ったのち、上記の参加者に対して半構造化インタビューを実施。後述の4つのテーマについて質問した。インタビュー時間は平均36±18分だった。

論文では、4つのテーマに対する各インタビュイーの回答がまとめられている。ここでは、それらの中の一部を紹介する。

テーマ1:エネルギー補給の重要性は認識されているが、知識が十分でない

まず、エリート女子サッカー選手のパフォーマンスに必要な栄養関連のテーマを挙げてもらった。エネルギー補給、体組成、水分補給、回復などのさまざまな要素が挙げられたが、大半の選手(12人中9人)は、試合日のパフォーマンスのためにはエネルギー補給が重要だと認識していた。ある選手は、炭水化物の重要性を認識して以来、パフォーマンスが向上したと、ポジティブな影響について具体的に話した。このような認識は、より多くの栄養サポートを受けていた場合により多く観察された。

選手1

昨シーズンの最も良い例を挙げると、FAカップの決勝で延長戦に突入した時のことだ。多くのアイデアや戦略があり、我々はそれらを試合中に本当にうまくこなしていた。しかし試合前と試合中のエネルギー補給がなければ、それは不可能だったろう。

選手2

長距離ランナーは炭水化物の重要性を理解しているだろう。しかしサッカー選手ではまだあまり理解されていない。われわれのプレー時間は90分間だ。100mスプリントではない。

選手以外の回答者も大半がエネルギー補給の重要性を理解していた。ただし、何をいつ食べるべきかについての理解が明らかに欠如しているケースもあり、知識と実践のギャップが浮き彫りになった。例えば、ほとんどの選手とスタッフ(栄養士を除く)は、試合前日に炭水化物をより多く摂取することの必要性を理解しておらず、試合当日の炭水化物摂取のみが重要だと考えていた。

テーマ2:「炭水化物で太る」という心配

エネルギー不足の問題の延長として、一部の参加者は炭水化物を意図的に避けていた。スタッフの一部はこのような選手を「炭水化物恐怖症」と呼んでいた。炭水化物で太ると信じて疑わないことをうかがわせる回答も得られた。

選手4

炭水化物やカロリーを増やすことなどは、体重が増える危惧から非常に困難だった。太るとわかっているので、炭水化物を食べたくない時がある。

このような考え方のために、トレーニングや試合後のグリコーゲン再合成に支障が生じる懸念が栄養士から報告された。

栄養士4

混合プロテインシェイクでなく、プロテインのみにこだわる選手がある。混合シェイクに含まれる炭水化物により太ると考えているからだ。その事実は非常に問題で、筋グリコーゲンが迅速に、または十分に回復していない可能性がある。

テーマ3:ボディーイメージ、ソーシャルメディアの圧力

テーマ1と2はパフォーマンスに関連する内容だったが、女子アスリートでは皮下脂肪やボディーイメージの懸念も強いことが明らかになった。

コーチ5

選手は一般的に、スリムであることを望んでいると思う。

選手4

女性にとって、体重はデリケートなテーマのように感じる。それは我々が住んでいる社会、とくにソーシャルメディアの中では、常にそうだと感じる。

スポーツサイエンティスト5

選手はジムにいる時も、アスリートだと認識されることを望んでいないようだ。パフォーマンスと怪我の予防のために、タンパク質を増やして筋肉量を増やそうとしていながら、例えばドレスを着た時にどのように見えるかを心配している。

スポーツ栄養士が少なく、スタッフの考え方が混乱している

論文ではこのほか、テーマ4として「栄養サポート」に焦点を当て、女子サッカー選手の科学的サポートにおいては、国内レベルと国際レベルで大きな差があること、専門的に認定された栄養スタッフ、つまりスポーツ栄養士が不足していることなどが課題として示されたと述べている。

結論は、「重要なこととして、サッカーの栄養ガイドラインの理論的および実際的な認識について、混乱および対照的な見解が観察された。組織、利害関係者が、選手中心の教育的および行動変容介入方法を開発するためのプラットフォームを形成し、ポジティブなパフォーマンスの栄養文化を促進するよう努めていくべき」とまとめられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Carbohydrate fear, skinfold targets and body image issues: a qualitative analysis of player and stakeholder perceptions of the nutrition culture within elite female soccer」。〔Sci Med Footb. 2022 Jul 19;1-11〕
原文はこちら(Informa UK)

SNDJ特集「相対的エネルギー不足 REDs」

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