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スポーツには日常の不安症状や毎日の睡眠を改善する効果がある 中国の大学生で検証

不安や睡眠障害を有する大学生に、個人または団体競技のスポーツに参加してもらい、効果を検証するという研究結果が中国から報告された。いずれもスポーツ介入を行わない対照群より不安や睡眠障害の改善幅が有意に大きく、かつ不安の改善効果は個人競技よりも団体競技のほうが優れていたという。

スポーツには日常の不安症状や毎日の睡眠を改善する効果がある 中国の大学生で検証

不安を訴える大学生を3群に分けて介入

人は差し迫った脅威を感じると不安が募る。不安は最も一般的な精神症状の一つであり、しばしば睡眠障害を伴う。睡眠障害によって不安がさらに高まるという悪循環も生じる。

このような状態に対する最も低コストで副作用の少ない対処法として、運動が挙げられる。運動やスポーツによる不安や睡眠障害の改善効果は多くの研究から示されている。ただし、それらの研究結果に一貫性があるかというと、必ずしもそうとは言い切れない。今回紹介する論文の著者らは、一貫性が欠如している理由を、運動強度の違いと介入に用いたスポーツが個人競技かチームスポーツかという違いが関係しているのではないかと考え、その検証を行った。

不安のある対象に個人または団体競技で介入し有意差を得るために必要なサンプル数として、これまでの研究から各群60人が必要と考えられた。研究中の脱落率を約25%として、最小サンプル数を225人と設定し、中国東北部の大学のメンタルヘルス教育センターから、研究参加学生を募集。適格条件は、スクリーニングにより不安を抱いていることが確認されること、身体的疾患がなくスポーツを行えること。除外基準は、既に週に2回以上の運動を習慣的に行っていること、薬物治療歴があること。

研究参加者の背景

269人が応募し、スクリーニングにより197人が適格とされた。平均年齢は21.3歳で、男性が58.4%であり、約13%が喫煙者だった。

不安のレベルは、自己評価式不安尺度(Self-Rating Anxiety Scale;SAS)で評価した。SASは20項目の質問で構成され、それぞれ1~4点で回答。合計スコアは20~80点の範囲であり、中国においては1.25を掛けた値が妥当とされている。50点未満は正常、50~59点は軽度の不安、60~69点は中等度の不安、69点以上は強い不安のある状態と判定される。

睡眠については、ピッツバーグ睡眠質問指数(Pittsburgh Sleep Quality Index;PSQI)で評価した。PSQIの合計スコアは0~21点の範囲で、スコアが高いほど睡眠の質が悪いことを示す。0~5点は良好、6~10点は比較的良好、11~15点は比較的不良、16~21点は不良と判定した。

研究参加者を無作為に3群に分け、1群はチームスポーツにより介入、他の1群は個人競技での介入を行い、残り1群は比較対照群とした。この3群間に、年齢、性別(男性の割合)、BMI、喫煙者率、不安の持続期間、運動の頻度・時間、他者と接する頻度に有意差はなかった。また、自己評価式不安尺度(SAS)は56.32~59.14、ピッツバーグ睡眠質問指数(PSQI)は13.14~14.32であり、やはり群間差は非有意だった。

介入方法について

この研究の参加者は全員が不安レベルの高い学生であり、全員に対して週に2回、不安軽減のためのカウンセリングが行われた。また、WeChat(中国語のSNS)に週に2回以上、不安に関する投稿を行うことが勧められ、以下に記す6週間の介入期間中に3回以上サインインしていなかった場合は、解析対象から除外された。最終的な解析対象者数は、団体競技群66人、個人競技群64人、対照群67人。

スポーツ介入を行う2群の介入方法は以下のとおりで、いずれも週に2回、計6週間の介入を行った。

団体競技群

試合形式のバスケットボールを行った。毎回、10分間のウォーミングアップに続き、試合を40分間として、ゲーム終了後の10分間はディスカッションに充てた。ディスカッションのテーマは、ゲームの振り返り、次のゲームに勝つための戦略など。

個人競技群

2kmのランニングと筋力トレーニングとした。各人が1人で走行し、その後、指定された場所で筋力トレーニングを行った。全体の所要時間は約45分だった。

不安症状のある学生にはチームスポーツへの参加を勧めてみては?

ベースラインから自己評価式不安尺度(SAS)が6点以上低下した場合を「不安レベルの改善」と定義すると、その学生の割合は、対照群38.8%、団体競技群69.7%、個人競技群59.4%だった。またベースラインからピッツバーグ睡眠質問指数(PSQI)が2点以上低下した場合を「睡眠の質の改善」と定義すると、対照群28.4%、団体競技群78.8%、個人競技群78.1%だった。スポーツ介入を行った2群は、不安および睡眠障害のいずれについても、対照群より改善者の割合が有意に多かった。

不安や睡眠障害に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、BMI、喫煙・運動習慣、不眠症、他者との接触)を調整後、不安改善のオッズ比は、対照群が2.90、団体競技群は4.99、個人競技群は3.18であり、睡眠障害改善については同順に、6.69、7.98、7.32だった。

団体競技群と個人競技群を比較すると、不安改善については前者のほうが有意に優れていた(p=0.003)。ただし睡眠障害の改善については有意差がなかった(p=0.21)。

著者らは結論を以下のようにまとめている。

「6週間の個人スポーツとチームスポーツは、大学生の不安を効果的に和らげ、睡眠の質を向上させることができる。ただし、不安を和らげるには個人スポーツよりもチームスポーツのほうが優れていることがわかった。睡眠の質については、チームスポーツと個人スポーツで、同等の改善効果がみられた。この研究の結果から、大学生の不安症状を和らげるために、チームスポーツへの参加をできるだけ促すべきと考えられる」。

文献情報

原題のタイトルは、「Anxiety and Sleep Quality Amelioration in College Students: A Comparative Study between Team Sports and Individual Sports」。〔Behav Sci (Basel) . 2022 May 17;12(5):149〕
原文はこちら(MDPI)

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