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「2050年には地球が6つ以上必要になる」持続可能な食事のためのオーストラリア栄養士会の見解

Sustainable Development Goals(SDGs)――持続可能な開発目標、その達成のために、栄養関連専門職への期待が世界的に高まっている。栄養は人々の健康に不可欠であるばかりでなく、栄養不良の人がいる一方で栄養過剰のために疾患に苦しむ人が同時に存在するという問題への対応、食料生産に伴う温室効果ガス削減への取組みなど、多くの分野で栄養士のかかわりが望まれている。ここでは今春、オーストラリア栄養士会のジャーナル「Dietitians Association of Australia」に掲載された同会のポジションステートメントの内容を一部抜粋して紹介する。

「2050年には地球が6つ以上必要になる」持続可能な食事のためのオーストラリア栄養士会の見解

人間の健康だけでなく、「地球の健康」も考えなければいけない

オーストラリアでは、同国の温室効果ガス排出量の16%が農業によるものであり、同国の人々の食生活はG20諸国の中で、1人あたりの温室効果ガス排出量が最も高いという。仮に世界中の人々が同国国民と同じような食生活を送ったとしたら、その食料生産を維持するために、2050年には地球6個半以上の天然資源が必要になると試算されるとのことだ。これは、同国で食される食品は、エネルギー密度が高い一方で栄養素の少ない食品が多いことに基づくという。

実際、オーストラリアでは、例えば小児肥満の有病率は16.9%であり、これは世界平均の5.7%より極めて高い。成人では世界平均が13.2%であるのに対して同国は30.7%だ。その一方、同国の人口の12.3%は食料不安に直面していて、他の高所得国の平均である7.6%より高い。

本論文の著者らは、このような状況の解決方法を探るため、スコーピングレビューの手順を参考にした研究を行った。結果として推奨事項が4つにまとめられ、それらはオーストラリア栄養士会の検討を経て、論文の結論に述べられている。

オーストラリア栄養士会による政策提言

この研究では、同国栄養士会による政策提言という目的のための専門作業班が設けられ、研究対象とすべき3つのテーマが特定された。

研究対象とすべき3つのテーマ

  1. 健康的で持続可能な食事の特徴とはどのようなものか
  2. 人々の健康と環境の持続可能性の評価のために、これまでの研究ではどのようなアプローチがとられてきたか
  3. エビデンスに基づき、オーストラリアでも健康的で持続可能な食事を促進するための政策オプションを示す

文献データベースの検索により、これら3点に関連のある研究報告を収集。また、本研究の特性から、論文化されていない文書の情報も無視できないため、ネット検査により、重要な内容であるにもかかわらずあまり認知されていない文献(いわゆる灰色文献)を収集した。灰色文献の検索にはGoogle Scholarを用い、トップ100件の情報を検討した。採否の検討は2名の研究者が行い、意見の不一致は討議によって解決した。

人々の健康と地球の健康のための4つの推奨事項

本論文は非常に大部なもので、その中から要点のみをピックアップすると、研究テーマの(1)として掲げられていた、「健康的で持続可能な食事の特徴とはどのようなものか」という質問に対しては、以下のように4つの要素にまとめられている。

健康的で持続可能な食事のための4つの要素

  1. 栄養的に適切で、健康的で安全。
  2. 環境への影響が少なく、天然資源と生物多様性を保護し得る。
  3. 文化的に受け入れられる。
  4. 入手が容易で、経済的に公正かつ手頃な価格である。

栄養士にはSDGs達成への貢献が求められている

論文の結論は前述したように、オーストラリア栄養士会のポジションステートメントとして4つにまとめられている。その結論部分ではまず、改めて栄養士の役割について述べられている。

具体的には、「栄養士は、現在の食料システムを変革する取り組みと、今後の世界の持続可能な開発目標に貢献するという重要な役割を担っている。そのための貢献は、とくに食品産業や農業部門などの変化への協力を必要としている」とまとめている。また、同国固有のアドバンテージとして、「先住民族の視点と先住民族の専門知識は、健康的で持続可能な食品システムに関連する効果的な統治と政策立案にとって重要」とも述べられている。

オーストラリア栄養士会の4つの推奨事項

  1. フードシステムに関する先住民族の知識を尊重し、フードシステムの健康、公平性、持続可能性の成果を改善するための戦略的計画を詳述した、包括的で十分なリソースを備えた国家食品栄養戦略の開発。
  2. オーストラリアの食事ガイドラインでの生態学的持続可能性の原則の強調は、食品システム全体の変化を引き起こし、社会の変化を促進し得る。
  3. 健康的で持続可能な食品へのアクセスを改善するための方向性の転換。例えば、健康と生態系への影響を統合した食品表示システムの開発と推進、当該食品の販路の拡大、地方自治体の行動を促進するための連邦政府および州政府の支援など。
  4. (先住民族である)アボリジニとトレス海峡諸島民が集団的パートナーシップ、効果的な高等教育、継続的な専門家育成を通じて、食料システムの変革に貢献する機会を増やすなど、能力開発活動への投資。

文献情報

原題のタイトルは、「Dietitians Australia position statement on healthy and sustainable diets」。〔Nutr Diet. 2022 Feb;79(1):6-27〕
原文はこちら(John Wiley & Sons)

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