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ドイツ空軍パイロットのサプリ摂取率、スポーツ習慣のあるパイロットはサプリ利用率が有意に高い

ドイツ空軍のパイロットを対象に、サプリメントの摂取状況を調査した結果が報告された。スポーツを行っているパイロットはサプリ利用率が有意に高い一方で、操縦している航空機のタイプでは、サプリ摂取率はかわらなかったという。

ドイツ空軍パイロットのサプリ摂取率、スポーツをしているか否かで有意差

軍のパイロットには強い身体的負荷がかかっている

米国では成人の半数が栄養補助食品(dietary supplement;DS)やエナジードリンク(energy drink;ED)を毎日摂取していて、3分の2は毎日ではないながらも定期的に利用しているとされている。ドイツではそれよりもやや低いものの、DSの利用率は18~50%と報告されている。

DSは食事による栄養素の不足を補うという字義の範囲を超えて、健康の促進やアスリートの間ではパフォーマンスの向上という目的のためにも利用されている。アスリートがDSやEDを利用するのは一般生活者よりも高い身体活動量を補うという目的も含まれるが、軍隊の兵士も一般生活者より身体活動量が多い。そのため兵士を対象とするDSやEDの利用状況に関する研究報告は既に行われている。ただし、空軍パイロットに特化した調査はこれまでほとんど行われていない。

空軍パイロットは、極めて強い重力加速度に曝されるなど、高い身体的能力を要求される。そこで本論文の著者らは、ドイツ空軍パイロットのDSやEDの利用状況の実態を調査した。

DSは34%、EDは16%が習慣的に摂取

2020年11から翌年1月にかけて、ドイツ空軍に所属するすべての中佐にアプローチし、部隊司令官を通じてすべてのパイロットに調査に関する情報が伝達された。オンラインで202人から回答が得られた。そのうち19人は必要なデータが不足、2人は現役パイロットでないために除外された。

他の181人は、年齢中央値37(範囲24~59)歳、男性179人、女性2人で、79人がジェット機パイロット、48人がジェット機以外の固定翼機パイロット、59人が回転翼機パイロット、3人はドローンパイロット。ドローンパイロットについては少数のため、詳細な分析は行われなかった。

年齢や性別(男性の割合)は、操縦している機体の種類による有意差がなかった。また、全体で85%のパイロットがスポーツを行っており、その割合も操縦している機体の種類による有意差はなかった。

スポーツを行っているパイロットはDS利用率が有意に高い

習慣的なDSの利用は34%のパイロットが報告した。習慣的なEDの利用者は16%だった。摂取しているDSの種類の数は、中央値2(範囲1~7)であり、頻度は中央値が毎日(毎日~3カ月に1回)だった。

一方、EDは少なくとも週単位で摂取されており、16%はより頻繁に摂取し、8%は週に5回以上EDを摂取していた。EDを摂取する習慣のあるパイロットのうち、64%はその理由について回答せず、19%は「倦怠感を抑えるため」、15%は「味の好み」と回答した。

パイロットの性別、年齢、航空機の種類で比較しても、DSやEDの利用率に有意差はなかった。ただし、スポーツを行っているパイロットはDSの利用率が有意に高かった(37対15%、p=0.032)。EDの利用率に関しては、スポーツを行っているか否かで比較しても有意差がなかった(17対12%、p=0.478)。

6割近くは独学でDS利用を決定し、50%はネットで購入

DSの入手経路は50%がオンラインで、続いてスーパーマーケットが27%、薬局が17%。また、軍医から入手したパイロットが10%であり、その他、スポーツショップ、ジムなどが少数存在した。

DSを習慣的に利用しているパイロットの58%は個人(独学)で利用を決定していた。その他、23%は軍医から、16%はスポーツ仲間から推薦されて利用していた。インターネット上のフォーラムの情報も12%を占めていた。

利用率の高い上位3つのDSは、プロテイン、マグネシウム、オメガ3脂肪酸

利用率の高いDSとして、プロテイン(33%)、マグネシウム(22%)、オメガ3脂肪酸(20%)、ビタミンD(17%)、クレアチン(12%)などが挙げられた。

DS摂取の理由は、36%が「パフォーマンスを向上させるため」で、22%は「健康上の理由」、20%は「栄養上の理由」だった。DSを摂取しているパイロットの42%は、「望ましい効果を得られた」と回答し、反対に18%は、「DS摂取の影響はない」と回答した。

利用前に軍医に相談すべきであり、サプリに関する情報提供も重要

著者によると、この調査はドイツ空軍パイロットのサプリ利用率と利用理由に関する初の研究とのことだ。論文の結論では、この調査から得られた重要なポイントを二つ挙げている。

その二つのポイントとは、第一に、「合理的な予防的医療手段としてサプリを使用する場合、事前に軍医に相談すべきである」こと、第二に、「多くのパイロットがサプリを習慣的に摂取し、主としてインターネットやスーパーマーケットで購入しているという実態を鑑みると、サプリ摂取による健康リスクの可能性に関する啓発が必要である」という内容だ。

文献情報

原題のタイトルは、「The Prevalence of Dietary Supplement Usage in Military Aviators」。〔Int J Environ Res Public Health. 2022 Apr 20;19(9):5017〕
原文はこちら(MDPI)

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