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腎機能が低下した高齢者では、タンパク質摂取が腎保護? 日本人対象縦断研究からの知見

「腎疾患患者には低タンパク食」という医学・栄養学の長年の常識が近年、変化しつつある。この変化を支持する新たな知見が、日本人高齢者を対象とする縦断研究の結果として報告された。タンパク質摂取量と腎機能低下速度との間に関連がなく、さらにベースライン時点で腎機能低下者では、むしろタンパク摂取量の多いことが腎機能の保持と有意に関連していたという。大阪大学大学院医学系研究科総合ヘルスプロモーション科学講座/森ノ宮医療大学の関口敏彰氏、大阪大学大学院医学系研究科総合ヘルスプロモーション科学講座の神出計氏らの研究によるもの。

腎機能が低下した高齢者では、タンパク質摂取が腎保護? 日本人対象縦断研究からの知見

タンパク質は腎臓に良い? 悪い?

タンパク質の過剰摂取は腎臓に負担をかけるため、慢性腎臓病(CKD)患者に対して長年、タンパク質摂取量を控える指導が行われてきた。しかし近年、加齢に伴い腎機能低下を来した患者が増えたことや、RAS(レニン-アンジオテンシン系)阻害薬などの腎保護作用のある薬物治療が普及したことから、CKD患者に対して一律に低タンパク食を指導することに疑問が投げかけられるようになってきた。とくに高齢者の場合、低タンパク食とすることで、サルコペニアやフレイルのリスクが上昇し予後を悪化させるのではないかとの指摘もある。

ただし一方で、タンパク質摂取を制限しないことによって腎機能がより速く進行してしまうという従来からの懸念が完全に否定されたわけではなく、高齢者のタンパク質摂取量を巡る議論が続いている。関口氏らの研究は、このような背景のもとで行われた。

千人以上の高齢者の腎機能の変化を2年半追跡

同氏らはこの研究に、東京都と兵庫県の地域住民対象に行われている高齢者長期縦断研究(SONIC研究)のデータを用いた。SONIC研究は2010~2013年に参加登録が行われ、69~71歳の1,000人、79~81歳の973人、89~91歳の272人、計2,245人が登録されている。本研究ではそのうち、登録時にCKDステージ5以上(eGFR15mL/分/1.73m2未満)、透析治療中、解析に必要なデータの欠落者などを除外し、1,160人を解析対象とした。

研究参加時に行った食事調査から総タンパク質摂取量を割り出して、その四分位数で全体を4群に群分けし、平均2.53年追跡。腎機能(eGFR)の変化を比較検討した。

ベースラインの腎機能はタンパク質摂取量の多寡で有意差なし

ベースライン時の総タンパク質摂取量は、平均が1.50±0.43g/kg/日、第1四分位群から順に、1.01±0.16、1.32±0.07、1.59±0.08、2.07±0.30g/kg/日であり、有意差が認められた。また、総タンパク質摂取量が多い群ほど、動物性タンパク質の摂取量が多いという有意差も認められた(いずれもp<0.01)。

総タンパク質摂取量の多い群ほど高齢で、BMIが低いという有意差も見られた(いずれもp<0.01)。

一方、eGFRは平均が69.1±14.4mL/分/1.73m2、第1四分位群から順に、68.5±13.5、68.4±15.4、70.0±13.0、69.7±15.6mL/分/1.73m2であり、群間に有意差はなかった(p=0.41)。

追跡中の腎機能低下速度に群間差がない一方、体重減少幅に有意差

平均2.53年の追跡期間中のeGFRの変化は、平均-1.89±2.98mL/分/1.73m2/年、第1四分位群から順に、-1.78±2.81、-1.90±2.94、-1.96±3.11、-1.93±3.07mL/分/1.73m2/年であり、群間に有意差はなかった(p=0.97)。

それに対して体重の変化は、平均-0.67±4.93kg/年、第1四分位群から順に、-1.06±5.25、-1.26±4.93、-0.44±4.71、0.16±4.71kg/年であり、タンパク質摂取量が少ない群で体重減少幅が大きいという、有意な群間差が認められた(p=0.04)。

タンパク質摂取量が少ない群ではフレイルリスクが上昇

続いて、フレイルの診断基準に含まれている「1年当たり4.5kg以上の体重減少」に該当する割合を検討。すると全体で21人であり、第1四分位群(10人、47.6%)と第2四分位群(9人、42.9%)でその大半を占め、第3四分位群と第4四分位群の該当者は各々1人(各4.8%)に過ぎなかった(p<0.01)。

腎機能の低い高齢者では、タンパク質摂取量が多いことが腎保護的に働く可能性

次に、腎機能低下に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、収縮期血圧、HbA1c、non-HDL-C、尿酸、高血圧・糖尿病・脂質異常症・脳卒中・心不全の既往、腎機能を評価した季節)を調整後、ベースラインの腎機能で層別化して解析を行った。

その結果、ベースラインのeGFRが60mL/分/1.73m2未満であり、CKDステージ3以上に進行している群では、総タンパク質摂取量と腎機能変化量に正の相関が認められた(β=0.98、p=0.02)。つまり、タンパク質を多く摂ることによる腎保護作用が示唆された。

ベースラインのeGFRが60mL/分/1.73m2以上(CKDステージ2未満)の群では、総タンパク質摂取量と腎機能変化量との間に有意な関連が認められなかった(β=-0.01、p=0.98)。

動物性タンパク質がより重要か?

摂取タンパク質を動物性と植物性に分けて検討すると、動物性タンパク質については総タンパク質摂取量での解析結果と同様に、ベースラインのeGFR60mL/分/1.73m2未満の群では、摂取量の多いことが腎機能に対して保護的に働く可能性が示された(β=1.07、p=0.01)。植物性タンパク質の摂取量は、ベースラインのeGFRにかかわりなく、腎機能の変化と有意な関連がなかった。

一律のタンパク制限はすべきでない

これらの検討に基づき著者らは結論を、「国内の地域在住高齢者のタンパク質摂取量はeGFRの低下とは関連がない。さらにCKDステージ3~4の場合には、総タンパク質や動物性タンパク質の摂取量が多いことが、eGFRを維持するように働く可能性がある。CKD患者を含む日本人高齢者には、タンパク質摂取制限をすべきではないと考えられる」とまとめている。

なお、腎機能が低下した高齢者では、タンパク質摂取量が多いことが腎機能の維持に働くと考えられる背景として、「加齢に伴い増加するフレイルやサルコペニアでは、貧血を含む種々の因子が相互に影響を及ぼし、腎機能をはじめとするさまざまな身体機能が低下する。高タンパク食は、そのような病態の悪循環を抑制するのではないか」との考察を加えている。

文献情報

原題のタイトルは、「Association between protein intake and changes in renal function among Japanese community-dwelling older people: The SONIC study」。〔Geriatr Gerontol Int. 2022 Apr;22(4):286-291〕
原文はこちら(John Wiley & Sons)

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