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サッカーと水泳を比較 思春期男子の1年間の身体的成長や骨密度の上昇は、サッカーの方が大きい

思春期の男子サッカーまたは水泳アスリートの1年間での身体的成長や骨密度の変化を調査した結果が報告された。12~13歳から1年の間に除脂肪軟組織と骨密度が大きく変化することや、サッカーを行っている男子は水泳を行っている男子よりも、それらの変化がより大きいことが示されている。ポルトガルやフランス、ブラジルの研究者による報告。

サッカーと水泳を比較 思春期男子の1年間の身体的成長や骨密度の上昇は、サッカーの方が大きい

PHV期の男子アスリートの成長をスポーツの種類や栄養素摂取量などと検討

最大骨量の85~90%は20歳までに獲得されると推定されている。また、思春期前後の数年間にスポーツに参加することが、成人後の骨の健康に重要な影響を与えると考えられている。ただし、スポーツへの参加が思春期の骨量の増大や身体の成長に与える影響の大きさは明らかでない。参加するスポーツによりその影響が異なる可能性も考えられるが、その点のエビデンスはまだ十分でない。

今回紹介する論文の著者らは、最大発育時期(peak height velocity;PHV)前の、サッカーまたは水泳を行っている男子の骨量の増大や身体の成長を1年間追跡し、それらの変化の程度と行っているスポーツとの関連、および、食事摂取状態などを検討した。

サッカーと水泳選手、各20名の検討

思春期の男子が参加しているポルトガル国内のサッカーと水泳のクラブ12団体にアプローチして参加者を募集した。それらのクラブに所属している選手は合計262人で、そのうち81人が募集に応じた。除外基準として、「ポルトガル国内の各競技団体への登録期間が2シーズンに満たない選手」、「最大発育時期(PHV)以前であると推定されない選手」、「慢性疾患や怪我、摂食障害、骨代謝に影響を及ぼし得る薬剤を使用中の選手」を設定。最終的に、サッカー選手と水泳選手、各20人を解析対象とした。全体の平均年齢は、12.57±0.37歳だった。

骨密度は、二重エネルギーX線吸収測定(dual energy X-ray absorptiometry;DXA)法で計測。また、半定量的な食物摂取頻度質問票(food frequency questionnaire;FFQ)によって栄養素摂取量を推計した。

摂取エネルギーやカルシウムは有意でないながらサッカー群の方が多い

ベースライン時点で、トレーニング歴(サッカー群5.2年 vs 水泳群4.4年。以下同順)、BMI(18.43 vs 18.35)で有意差はなかった。

1日の栄養素摂取量も、エネルギー量(3,282 vs 2,628kcal,p=0.273)、タンパク質(23.7 vs 21.6%)、炭水化物(60.6 vs 59.6%)、脂質(15.7 vs 18.8%)、コレステロール(488 vs 357mg)、食物繊維(36.9 vs 30.6g)で有意差はなく、カルシウムは同順に1,822mg、1,146mgで比較的大きな違いがあったが有意ではなかった(p=0.060)。

両群ともに顕著に成長し、サッカー選手は骨密度がより顕著に上昇

1年間のトレーニング量は、セッション数/時間(分)の順に、サッカー群は63±31回/5,696±2,808分、水泳群は248±28回/2万3,378±3,368分だった。

体組成や骨密度は、サッカー群か水泳群かにかかわらず、体脂肪率を除くほぼすべての評価指標について有意に上昇していた。体脂肪率は両群ともに有意に低下していた。

除脂肪軟組織は水泳選手、骨密度はサッカー選手が高値で推移

除脂肪軟組織はその評価部位(全身、体幹、下肢、上肢)にかかわらず、ベースライン時および1年後の双方で、サッカー群より水泳群の方が有意に高値だった。一方、骨密度に関しては、全身と下肢においてサッカー選手の方が有意に高値だった。近位大腿骨の骨密度に関しても、大腿骨頸部、転子部、ワード三角において有意差があり、サッカー選手の方が高値だった。

1年間の成長はサッカー群の方が速い傾向

次に、1年間での各パラメーターの変化量をサッカー群と水泳群で比較すると、全体的にサッカー群の変化量の方が大きい傾向がみられた。

効果量(d値)の大きい評価指標を挙げると、体格関連では身長(Δ値がサッカー群5.3±1.9 vs 4.1±1.4cm,d=0.7.以下同順)、骨密度関連では近位大腿骨転子部(8.1±4.1 vs 3.6±5.7%,d=1.2)、同ワード三角(6.6±4.8 vs 2.3±3.5%,d=1.1)、同頸部(6.6±4.2 vs 3.3±5.5%,d=0.7)、全身(3.4±1.9 vs 2.0±2.2%,d=0.7)など。除脂肪軟組織関連はd値が全身で0.1、部位別では0.1~0.3であり、骨密度に比較しΔ値の群間差は少なかった。

著者らは本研究の結果を、「最大発育時期(PHV)にスポーツへ参加することは除脂肪軟組織量の増加に関連しており、脂肪量の増加を抑制するように働くようだ。また骨密度の上昇も顕著であり、行っている競技で比較すると、サッカーは水泳より下肢や大腿骨頸部での骨密度上昇がより大きい」とまとめている。

そのうえで論文の結論には、「思春期の成長および参加するスポーツ競技の種類が、骨密度の上昇にとって重要であることが確認された。物理的な負荷を伴うスポーツは、骨代謝関連指標に有益な影響を及ぼすと考えられる」と述べられている。

なお、前述のとおり、有意差がないながら摂取エネルギー量はサッカー群の方が多く、カルシウム摂取量はp値が0.06と有意性の境界値に近い差が存在していた点については、論文中でとくに考察されていない。

文献情報

原題のタイトルは、「Growth, body composition and bone mineral density among pubertal male athletes: intra-individual 12-month changes and comparisons between soccer players and swimmers」。〔BMC Pediatr. 2022 May 13;22(1):275〕
原文はこちら(Springer Nature)

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