オートバイ競技のレース成績に、レーサーの体組成や無酸素性運動能力が有意に関連
オートバイレーサーの体組成や運動能力とレース成績との関連を詳細に解析した結果が報告された。オートバイのスピードウェイ競技レーサー対象の研究結果であり、レース成績には経験、つまり年齢が大きな影響を与えているものの、身長や体重、無酸素性運動能力なども有意な影響を及ぼしていることがわかった。また、水素イオン濃度指数(pH)や二酸化炭素分圧とレース成績との間に負の相関があることもわかった。ポーランドからの報告。
オートバイレーサーのパフォーマンスを規定する要因を探る
モータースポーツで好成績を収めるには、エンジンを含むメカニカルの性能と、レーサーのテクニックに加え、車体とレーサーの総重量が小さいこと、空力抵抗が少ないことが、加速と最高速度に重要となる。よって、レーサーの身体は大きいよりも小さく、体重は軽いほうが有利と考えられる。今回紹介する論文の著者らは、それらの関連を総合的に検討することを試みた。
研究の目的は主に二つあり、一つはレーサーの年齢層(ジュニアとシニア)で、体組成や無酸素性運動能力、心肺機能、レース成績を比較すること。二つ目は、それらのパレメーターの相互の相関の有無を検討すること。
ポーランドのトップクラブ所属レーサーを21未満と以上に分けて比較
研究対象者は、ポーランドにおけるオートバイスピードウェイ競技の最高のカテゴリーである「Speedway Elite League」に所属する複数のクラブから集められた、計60人の男性オートバイスピードウェイ競技レーサー。適格基準は、いずれかのクラブと契約していて、過去に少なくとも1シーズンのレースに参加した経験を有する16歳以上のレーサーであること。運動に支障のある状態の選手は除外した。
21歳未満のジュニアと22歳以上のシニアがそれぞれ30人ずつであり、年齢はジュニアが19.7±1.1歳、シニアが29.7±5.2歳で有意差があった。
VO2peakなどに年齢による有意差
まず、研究の第一の目的である、ジュニアとシニアとを比較した結果をみると、身長、体重、血圧(収縮期/拡張期とも)、ヘマトクリットに有意差はなかったが、BMI(21.5±1.4 vs 22.4±1.0)や体脂肪率(10.3±2.7 vs 12.5±2.9)はジュニアのほうが低く、ヘモグロビンはジュニアのほうが高値であり(14.8±0.8 vs 14.1±0.7g/dL)、それぞれの群間差が有意だった。
ウィンゲートテストで評価した無酸素性運動能力は、ピークパワーとトータルパワーに有意差はないものの、疲労指数(fatigue index;FI)はジュニアのほうが有意に低く(23.1±4.4 vs 25.4±3.4%)、シニア選手の易疲労性が認められた。
心肺機能関連パラメーターでは、安静時の分時換気量(VEpeak)、酸素摂取量(VO2peak)、二酸化炭素排出量(VCO2peak)、および心拍数は有意差がなかった。運動負荷時は、VO2peak(2.7±0.3 vs 2.8±0.3L/分)とVCO2peak(3.4±0.5 vs 3.9±0.4L/分)はシニアのほうが有意に高く、心拍数(185±13 vs 179±9bpm)はジュニアのほうが有意に高値だった。
その他、ウィンゲートテスト後の乳酸値や血液ガス関連パラメーターに、有意な群間差はみられなかった。
シニアのほうが勝率などのパフォーマンス指標が高い
シーズン中の参加レース数は、群間に差がなかった。
一方、勝利したレース数(13.3±9.7 vs 21.4±14.3回)や勝率(18.6±10.6 vs 28.6±14.3%)、ポイント(88.3±47.2 vs 119.8±50.8点)は、シニアのほうが優れていた。
レーサーのパフォーマンスは、体組成の影響が大きい
続いて、研究の二番目の目的である、前述の体組成や無酸素性運動能力などとレース成績の相互の相関を検討した結果をみると、ジュニア選手では、年齢と勝利したレース数(r=-0.37、)、および勝率(r=-0.36)との間でのみ有意な負の相関が認められた。
一方、シニア選手では、多くのパラメーターがレース成績と有意に相関していた。例えば、運動後のpH(r=-0.38)と二酸化炭素分圧(r=-0.45)は、シーズンを通しての平均獲得ポイントと負の相関が認められた。
これらの結果から、スピードウェイ競技レーサーの中でシニア選手はジュニア選手よりもスポーツレベルが高いということが示された。この事実は、「トレーニングやレースで得た経験と、心肺機能がジュニア選手よりも優れていることの影響が大きいためと考えられる」と著者らは考察している。
結論としては、「レーサーのスポーツレベルは、人体測定パラメーター、とくに身長、体表面積、除脂肪体重(体脂肪率)の影響を受けるため、クラブ運営者はレーサーの採用において、これらの指標を考慮することが重要と言える」と述べられている。
文献情報
原題のタイトルは、「The Relationship Among Body Composition and Anaerobic Capacity and the Sport Level of Elite Male Motorcycle Speedway Riders」。〔Front Physiol. 2022 Apr 13;13:812958〕
原文はこちら(Frontiers Media)