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実測体重、調整後体重、除脂肪体重……タンパク質の必要量の計測に最も適しているのは?

タンパク質の必要量の計算の根拠として、体重の実測値を使う場合と、標準体重に近づける調整を行って計算する場合、除脂肪体重を使う場合という3通りで、どの程度の差が生じるかを検討した研究結果が報告された。これら3種類の計算結果には、容認できないほど大きな差がみられたという。オランダの研究者の報告。

実測体重、調整後体重、除脂肪体重……タンパク質の必要量の計測に最も適しているのは?

算出方法による乖離の程度を探る

摂取すべきタンパク質の必要量は、窒素出納の不足分に相当する。窒素出納は炎症、インスリン感受性、運動など多くの要因で変化し、筋タンパク合成・異化も関係する。そのため除脂肪体重(fat-free mass;FFM)も必要タンパク質量に影響を与え、実測体重を基準に必要量を計算した場合、性別や年齢、身体活動習慣などによる体組成の違いを無視することになり、最適な数値を得られない可能性がある。

ただ、タンパク質必要量の算出に用いる体重指標の違いが、実際の臨床でどの程度の差となって現れるかは十分に検討されていない。そこで本論文の著者らは、既存の研究データを遡及的に解析し、算出方法による必要タンパク質量の乖離の程度を検証した。

アムステルダムでの二つのデータを遡及的に解析

検証に用いたデータは以下の二つ。

一つは、オランダのアムステルダム応用科学大学で行われている一般人口を対象とした栄養評価研究のデータで、登録者は55歳以上の健康な地域住民506人(67±7歳、女性59%、BMI30.0±5.5、FFM51±12kg)。

もう一つは、アムステルダム大学医療センターの患者データで、18歳以上の外来および入院患者1,785人(66±6歳、女性44%、BMI24.0±5.0、FFM51±11kg)。

タンパク質必要量の3通りの計算方法

必要タンパク質量の計算に用いた体重は、前述のように、実測体重、標準体重に近づける調整を行った体重、および除脂肪体重(FFM)の3通りとした。それぞれの計算方法は以下のとおり。

実測体重を用いる場合

体重1kgあたりのタンパク質必要量を1.2gとして計算した。

標準体重に近づける調整を行う場合

BMIが20~30未満の場合は実測体重1kgあたり1.2gとして計算した。BMIが20未満の場合は身長の二乗に20を乗算して(BMIを20として)求めた。BMIが30以上の場合は身長の二乗に27.5を乗算して(BMIを27.5として)求めた。

除脂肪体重(FFM)を用いる場合

FFM1kgあたりのタンパク質必要量を1.5gとして計算した。なお、FFMは、アムステルダム応用科学大学の健康な住民では空気置換プレチスモグラフィー法、アムステルダム大学医療センターの患者では生体インピーダンス法により測定された。

BMIカテゴリーによっては対象の100%で過大評価となり得る

前記の3通りの必要タンパク質量の計算方法のうち、FFMを用いて計算した値を基準として、他の二つの方法での計算結果との乖離を、各データベースごとに、全体での解析、および性別・BMIカテゴリー別に解析した。

その結果、実測体重を計算に用いた場合、FFMを用いた場合との間に、健康な住民のデータベースの解析では92~100%、患者データベースの解析では78~100%という、極めて大きい乖離がみられた。また、理想体重に近づける調整を行った値を計算に用いた場合も、無視できない乖離が認められた。より詳しくは以下のとおり。

実測体重を計算に用いた場合の必要タンパク質量の乖離

実測体重を計算に用いて算出した必要タンパク質量と、FFMを用いて算出した必要タンパク質量との乖離が±10%未満の場合を「乖離なし」、前者が後者より10%以上低値の場合を「過少評価」、前者が後者より10%以上高値の場合を「過大評価」と定義。

健康な住民での検討

全体解析では、乖離なしが8%、過少評価が0%、過大評価が92%。

BMIカテゴリー別では、BMI30~40未満では乖離なしが1%、過少評価0%、過大評価100%、BMI40以上では乖離なしと過少評価はともに0%で、過大評価が100%。BMIが高値であるほど、必要タンパク質量を高く見積もりやすいことがわかった。

さらに性別にみた場合、女性ではBMI25~30未満であっても乖離なしと過少評価はともに0%で、過大評価が100%であり、BMI30~40未満および40以上も同じ結果だった。

患者での検討

全体解析では、乖離なしが41%、過少評価が2%、過大評価が57%。

BMIカテゴリー別では、BMI30~40未満では乖離なしが3%、過少評価0%、過大評価97%、BMI40以上では乖離なしと過少評価はともに0%で、過大評価が100%。

患者対象の検討では健康住民対象の検討よりも、全体解析では乖離なしの割合が多いものの、BMIが高値であるほど必要タンパク質量を高く見積もりやすいことは同様だった。

さらに性別にみた場合、女性ではBMI25~30未満であっても乖離なしは2%であり、過少評価は0%、過大評価が98%、BMI30~40未満および40以上ではともに、乖離なしと過少評価が0%で過大評価が100%となった。

標準体重に近づける調整のうえで計算した場合の必要タンパク質量の乖離

標準体重に近づける調整を行った値を計算に用いて算出した必要タンパク質量と、FFMを用いて算出した必要タンパク質量との乖離が±10%未満の場合を「乖離なし」、前者が後者より10%以上低値の場合を「過少評価」、前者が後者より10%以上高値の場合を「過大評価」と定義。

健康な住民での検討

全体解析では、乖離なしが24%、過少評価が0%、過大評価が76%。

BMIカテゴリー別では、BMI18.5未満では乖離なしが26%、過少評価が0%、過大評価が74%であり、BMI40以上では乖離なしが41%、過少評価が0%、過大評価59%だった。

実測体重からの計算値に比べると乖離なしの割合が増え、BMI高値になるに伴い過大評価が増えるという影響は抑制されていた。

患者での検討

全体解析では、乖離なしが40%、過少評価が2%、過大評価が58%。

BMIカテゴリー別では、BMI18.5未満では乖離なしが20%、過少評価が0%、過大評価が80%であり、BMI40以上では乖離なしが74%、過少評価が26%、過大評価0%だった。

患者対象の検討でも、実測体重からの計算値に比べると乖離なしの割合が増え、BMI高値になるに伴い過大評価が増えるという影響は抑制されていた。ただし、BMI高値になるに伴い過少評価が増える傾向にあった。

FFMに基づく計算が適切か?

以上の結果を基に著者らは、解析対象のデータベースの違い(健康な住民か、患者か)によって、同じ方法で必要タンパク質量を計算しても結果に大きな違いが生じることを、明らかになった重要な点として挙げている。また、全体として3つの手法での計算結果には許容できない乖離があり、FFMに基づく計算値は実測体重や調整後の体重に基づく計算値よりも低い傾向があって、とくに患者の場合、FFM1kgあたり1.5gという計算でもとめた値は、「おそらく低すぎる」と述べている。

結論としては、「タンパク質の必要量を決定するのにどの方法が最適かはまだわかっていない。理論的には性別等による体組成の違いも反映されるFFMに基づく計算方法がより正確であるように思われるため、高齢者や過体重/肥満者などの体組成が標準的でないことが予想される対象のタンパク質要件の決定には、FFMを頻繁に測定することを推奨する。ただし、タンパク質要件決定のための信頼性の高い方法の確立のため、さまざまな集団でより多くの調査を行う必要がある」とまとめられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Calculation of protein requirements; a comparison of calculations based on bodyweight and fat free mass」。〔Clin Nutr ESPEN. 2022 Apr;48:378-385〕
原文はこちら(Elsevier)

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