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習慣的な運動が東日本大震災後の高齢者の低栄養リスクを抑制した――福島での縦断研究

東日本大震災後の高齢者の低栄養リスクに、習慣的な運動の不足が独立して関連しているとするデータが報告された。ただし、日常生活の延長としての身体活動量は、交絡因子で調整すると関連が有意でなくなり、積極的に運動することの重要性が浮き彫りになった。福島県立医科大学保健科学部理学療法学科の岡崎可奈子氏らの研究によるもので、「International Journal of Environmental Research and Public Health」に論文が掲載された。

習慣的な運動が東日本大震災後の高齢者の低栄養リスクを抑制した――福島での縦断研究

東日本大震災と原発事故による高齢者の栄養状態への影響を調査

東日本大震災とそれに続く福島第一原発の事故とによって、福島県浜通りの住民の多くが長期間の避難を余儀なくされた。被災や避難生活による身体的・精神的ストレスは種々の疾患リスクに及ぼしていると考えられており、高齢者では低栄養状態やフレイルの増加が予想されている。岡崎氏らは、震災前から震災後にかけての健診結果を縦断的に解析することで、被災後の高齢者の低栄養に関連する因子を検討した。

調査対象は、福島第一原子力発電所の近くに震災前から居住していた60歳以上の一般住民で、震災前から震災後にわたり健診結果を追跡可能な人。震災前の健診でBMI25.0以上または低栄養20.0以下の人は除外し、1万3,378人を最終的な解析対象とした。ベースライン時点の年齢は68.4±6.2歳、男性47.5%だった。

なお、本研究では、BMIが20.0以下の場合に低栄養と定義しており、アルブミン等の臨床検査値に基づく診断は行っていない。

7年で8人に1人以上が低栄養状態に

平均6.9±2.2年の追跡で、1,712人(12.8%)が新たに低栄養状態となっていた。

低栄養状態になった群(以下、低栄養移行群と省略)とそうでない群(対照群)とで、ベースライン時のデータを比較すると、前者は高齢(68.8±6.3 vs 68.3±6.2歳,p=0.003)で、男性の割合が低かった(36.9 vs 49.0%,p<0.001)。また、避難指示区域以外の居住者の割合が高かった(避難生活を強いられた人のほうが低栄養移行者が少なかった。28.6 vs 35.1%,p<0.001)。

生活習慣との関連では、低栄養移行群のほうが現喫煙者(p=0.02)や習慣的飲酒者(p<0.001)が少ないという有意差がみられた。また、就寝前に食事をすることのある割合も、低栄養移行群のほうが有意に少なかった(18.6 vs 23.3%,p<0.001)。

運動や身体活動習慣についても、低栄養移行群と対照群の間に有意差がみられた。具体的には、低栄養移行群には運動習慣のない(1回30分、週2回以上の運動を行っていない)人が多く(67.0 vs 64.2%,p=0.03)、また身体活動時間が短い(1日に1時間に満たない)人が多かった(63.5 vs 60.6%,p=0.01)。

ベースライン時BMIは、低栄養移行群が21.3±1.0、対照群は22.9±1.3であり、前者が低値だった(p<0.001)。歩行速度や睡眠不足を自覚している人の割合は有意差がなかった。

運動習慣がないことなどが低栄養の独立したリスク因子

次に、多変量ロジスティック回帰分析にて、低栄養への移行に独立して関連する因子を検討した。解析に際しては、低栄養リスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、避難の有無、飲酒・喫煙習慣、消化器手術の既往、生活習慣病、自覚症状、および、モデル1では運動習慣、モデル2では身体活動)を調整した。

その結果、年齢や性別(女性)などとともに、震災前に運動習慣がなかったこと(HR1.14〈95%CI;1.03~1.27〉)、身体活動時間が短かったこと(HR1.12〈1.01~1.25〉)が、低栄養への移行に関連していることが明らかになった。ただし、調整因子にベースライン時のBMIを追加すると、身体活動との関連は有意性が消失した(HR1.08〈0.98~1.20〉)。一方、運動習慣がないことはBMIで調整後も引き続き低栄養への移行リスクと有意に関連していた(HR1.11〈1.00~1.24〉)。

また、就寝前の食事も低栄養移行の抑制因子として抽出された(就寝前の食事が週3回未満の場合のHRがBMIで調整後1.18~1.19でp<0.01)。この点について著者らは、「就寝前の摂食は、若年者にとっては不健康な食習慣であっても、低栄養リスクのある高齢者ではリスク抑制に役立つ可能性がある」と述べている。

そのほか、避難先で生活していることは、低栄養リスクの抑制因子として抽出された(避難していない場合のHRがBMIで調整後1.38~1.39でp<0.001)。ただし、これには、「移動困難者などの低栄養リスクのより高い人たちが健診を受けておらず、本研究の対象に含まれていなかったことの影響が考えられる」とのことだ。

震災前のBMIが低値であるほど、運動習慣がないことの影響が大きい

以上の結果から、震災前に日常生活の延長としての身体活動を超える、積極的な運動を行っていたことが、低栄養への移行リスクを抑制したと考えられた。

震災前の運動習慣の有無で解析対象全体を二分し、年齢や性別、BMI、避難の有無、飲酒・喫煙習慣の有無、就寝前の食事の有無で層別化して低栄養移行リスクを検討したところ、有意な交互作用はBMIでのみ認められた(交互作用p<0.001)。これは、運動習慣のない高齢者は、性別や年齢、飲酒・喫煙習慣などにかかわりなく、低栄養のリスクが高い可能性を示唆している。

なお、BMIが22.7(全体の平均)未満の場合は全体解析と同様に、運動習慣がないことで低栄養リスクが有意に上昇するが(HR1.15〈1.03~1.29〉)、BMIが22.7以上の場合はリスクへの有意な影響が認められなかった(HR0.98〈0.73~1.32〉)。つまり、震災前のBMIが低値であった高齢者は、運動習慣がないことによる低栄養への移行リスクがより大きく現れていた。

論文の結論としては、「東日本大震災と福島第一原発の事故の被災前に、習慣的に運動をしていたことが、他の生活習慣や年齢、性別などとは独立して、被災後の低栄養リスクを抑制したことが示された」とまとめられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Lifestyle Factors Associated with Undernutrition in Older People after the Great East Japan Earthquake: A Prospective Study in the Fukushima Health Management Survey」。〔Int J Environ Res Public Health. 2022 Mar 14;19(6):3399. 〕
原文はこちら(MDPI)

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