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性的マイノリティは心血管疾患リスクが高い 栄養状態や食糧不安の改善、知見の積み重ねが必要か

性的マイノリティ(sexual and gender minority;SGM)の人の食事・栄養と心血管疾患リスクとの関係に関するレビュー論文が、動脈硬化性疾患を扱う医学ジャーナル「Current Atherosclerosis Reports」に掲載された。論文には、性的マイノリティの人は心血管疾患のリスクか高い可能性があるが、それらの人の食事や食糧不安については知見がわずかしかないと述べられている。論文の趣旨をピックアップして紹介する。

性的マイノリティは心血管疾患リスクが高い 栄養状態の低下と食糧不安、医療従事者の知見不足が要因か

イントロダクション

SGMの成人は、心血管疾患のリスクが高いことを示すエビデンスが蓄積されつつある。これには、疎外と差別への曝露の関与が考えられる。

レズビアンとバイセクシュアルの女性は、異性愛者の女性よりも喫煙者率が高く、肥満や高血糖の有病率が高い。また、バイセクシュアルの男性は異性愛者の男性よりも肥満と2型糖尿病の有病率が2~3倍高い。最近の20件の研究のメタ解析からは、バイセクシュアルの男性は異性愛者の男性に比較し高血圧のリスクが2倍と報告された。シスジェンダー(出生時に割り当てられた性別と性同一性が一致している人)の男性と女性に比較して、トランスジェンダーの女性は心臓発作または虚血性脳卒中のリスクが2~3倍高い。

食事は心血管リスクの重要な予測因子である。また、貧しい食生活の社会的決定要因として認識されている食糧不安は、高血圧、2型糖尿病、心血管疾患のリスクと関連があり、心血管死の高さとも相関があることが知られている。レズビアンの女性やバイセクシュアルおよびトランスジェンダーの成人を含むSGMの成人の特定のグループは、貧困率が高く食糧不安のリスクを高める可能性がある。

性的マイノリティの成人の食事

SGM成人の食事に関しては、14件の報告がみられ、大半は横断研究であり、1件を除くすべてが米国で実施されていた。

SGM成人における食事の相関関係

SGM成人の食事の相関について、これまでに3件の研究結果が報告されている。そのうちの一つは670人のSGM成人のオンラインサンプルで調査を行い、回答者の70%以上が飽和脂肪酸またはナトリウムを多く含む食生活を送っていることがわかった。また、マイノリティストレッサー(嫌がらせや差別など)を多く経験していることは、男性では飽和脂肪酸やナトリウムの摂取量が多い食事スタイルであることと相関していた。

SGMの大学生の健康と栄養に対する障壁を評価した研究では、毎日果物または野菜を食べているのは50%未満であり、また55%以上が過去1週間以内に全粒穀物を食べていなかった。調理スペースへのアクセスの制限、手頃な食料品店への交通手段の欠如、生鮮食品のコストの増加などの障壁が特定された。

SGM成人における食事と心血管リスク

SGM成人の心血管リスクの予測因子としての食事スタイルを検討している研究はごく限られており、一貫性を欠いている。レズビアンとバイセクシュアルの女性を対象とした無作為化比較試験で、12週間のマインドフルネスに基づくストレス低減介入の効果が検討されているが、心血管リスクには影響がみられなかったという。

SGM成人の食糧不安

SGM成人の食糧不安の側面を調査した研究が、2019~21年に8件報告されており、すべて米国からの報告だった。6件は横断的デザイン、他の2件は縦断的解析も含む報告だった。食糧不安を抱いている該当者の割合は、研究によってかなり異なった(範囲10~80%)。

SGM成人における食糧不安の相関関係

SGM成人の食糧不安の相関に関する研究は限られているが、食糧不安のオッズ比上昇と関連する因子として、離婚や失業が浮かび上がった。反対に食糧不安のオッズ比の低下と関連する因子として、高齢、性別が男性であること、世帯収入が高いことなどが報告されていた。

SGM成人における食糧不安と心血管リスク

食糧不安は成人の心血管リスクや心血管死の増加と関連しているものの、これまでのところ、食糧不安がSGM成人の心血管リスクに影響を与えるか否かを調べた研究は報告されていない。

既存の研究の限界と今後の研究のための推奨

SGM成人における食事と食糧不安、心血管リスクとの関連を調査する研究は初期段階であるものの、過去数年間で指数関数的に増加している。ただし、現在のところ、方法論的なハードルがあり、結果の解釈は制限される。

全体として、食事と食糧不安の評価結果に一貫性がなく、研究間で意味のある比較を行うことは困難だった。SGM成人の心血管リスクの原因としての食事と食糧不安に関する研究は緒に着いたばかりとも言え、既存の主として横断研究から得られた知見の限界を考えると、今後は縦断研究が必要と言える。

限られたエビデンスではあるが、減量への従来のアプローチは、SGMの女性にとっては効果が低い可能性がある。ゲイの男性の間では、食事摂取量の変化は、健康的な食事よりも「体重を減らしたい」という欲求によって動機付けられる可能性がある。

一方、現在臨床に立つ専門家は、SGMの健康問題についてほとんど教育を受けておらず、ケアを行うために必要な知識を欠いていることが指摘される。また、SGMの成人は非SGMの成人に比較し、医療コストやその他の要因(例えば医療機関へのアクセスの問題など)の支障のために、受療行動を遅らせたり回避したりする可能性が高いことが示唆され、結果として心血管疾患のリスク因子(例えば高血圧や2型糖尿病など)のリスクが高まる可能性がある。

医療従事者はSGM個人のヘルスケアへの関与を高め、心血管リスクを減らすためのアプローチが必要とされている。

文献情報

原題のタイトルは、「Diet, Food Insecurity, and CVD Risk in Sexual and Gender Minority Adults」。〔Curr Atheroscler Rep. 2022 Feb 2;1-10〕
原文はこちら(Springer Nature)

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