スペインのバスケ選手のスポーツ栄養に関する意識調査、U-18、非プロ、プロの結果は?
バスケットボール選手のスポーツ栄養に関する意識調査の結果を、U-18、非プロ、プロ別というカテゴリー、および性別に比較し検討した論文が報告された。論文の著者は、「すべてのカテゴリーで栄養に関する知識が不十分だと結論づけられる」と述べている。
幅広い層のバスケ選手を対象とする研究
バスケットボールの人気の高まりとともに、世界中のあらゆる年齢層のプレーヤーが、あらゆるレベルでバスケに参加するようになった。近年のルール変更により、バスケはよりスピーディーでダイナミックなスポーツへ変化してきており、プレーヤーの身体的、心理的、生理学的要求が高まっている。また、プロバスケットボールの場合はゲーム数が増加傾向にあり、年間で最大34週間にわたり、70試合に参加する可能性がある。これは週に最大3回試合が行われ、回復にあてられる時間は72時間未満となる。
これらを背景として、バスケ選手のスポーツ栄養の理解の重要性を増している。これまでに、バスケ選手を対象にスポーツ栄養の知識を調査した研究結果が複数報告されているが、それらは男性プレーヤーを対象としたものが多く、また、競技レベルが一定の層に限られた調査が主体であって、女性も含め、多くの競技レベルで比較可能なデータは限られている。この状況を背景として、本論文の著者らは、スペインのさまざまな年齢層、競技レベルのバスケ選手を対象とする、スポーツ栄養の知識と実践状況を調査した。
U-18からプロレベルまで104人が回答
2021年1~4月に同国のバスケチームのコーチやマネージャー、または選手同士を通じてオンラインアンケートへの協力依頼がメール送信された。回答は匿名とし、機密性を保証した。
解析対象者数は104人(男性49人、女性55人)で、内訳は以下のとおり。U-18が69人(男性32人、女性37人)、Nonプロが14人(男性6人、女性8人)、プロが21人(男性11人、女性10人)。
アンケートの内容は、スポーツ栄養に関する知識を評価するパートと、スポーツ栄養の実践に関するパートの二つに大別され、前者は23項目、後者は36項目の質問で構成されていた。なお、本調査の対象に含まれていないプロチーム(男性チームと女性チームそれぞれ1チーム)を対象とするパイロット調査により、アンケートの実用性を検証した後、本調査が実施された。
バスケ選手のスポーツ栄養の知識は不十分
スポーツ栄養の知識に関する調査結果
スポーツ栄養に関する知識は、水分補給、体重管理、回復、栄養素、サプリメントの5領域ごとに、0~10点の任意単位(arbitrary unit;au)にスコア化して比較。結果は以下のとおりで、全体的に平均得点が満点の半分未満が多く、選手カテゴリー別ではNonプロ、プロ、U-18の順で高い傾向がみられた。
5つの領域の中で栄養素に関する知識の平均得点が最も高く、サプリメントに関する知識が最も低かった。回復と栄養素に関しては、選手カテゴリー間の有意差が認められた。
全体の平均 | 男性 | 女性 | U-18 | Nonプロ | プロ | |
---|---|---|---|---|---|---|
水分補給 | 4.96au | 5.06au | 4.87au | 4.72au | 5.79au | 5.18au |
体重管理 | 4.83au | 4.74au | 4.91au | 4.77au | 5.14au | 4.79au |
回 復 | 4.43au | 4.55au | 4.33au | 4.19au* | 5.52au* | 4.50au |
栄養素 | 5.25au | 5.23au | 5.27au | 5.15au** | 5.95au** | 5.12au** |
サプリメント | 2.73au | 2.71au | 2.74au | 2.57au | 2.53au | 3.38au |
スポーツ栄養の実践に関する調査結果
スポーツ栄養の実践状況は、トーニングの前と後、試合の前と後の食事に注意しているか否かを、「はい」「いいえ」で答えてもらい評価した。また、トレーニング内容にあわせて食事内容を実際に調整しているか否かも質問した。
全体的に、トレーニングや試合の前後の食事に気をつけていると回答した割合は低くはなかったが、実際にトレーニング量にあわせて食事を調整している割合は高くなかった。詳細は以下のとおり。
全体の平均 | 男性 | 女性 | U-18 | Nonプロ | プロ |
---|---|---|---|---|---|
71.15% | 79.59% | 63.63% | 66.66% | 78.57% | 80.92% |
全体の平均 | 男性 | 女性 | U-18 | Nonプロ | プロ |
---|---|---|---|---|---|
62.50% | 73.46% | 52.72% | 57.97% | 71.42% | 71.42% |
全体の平均 | 男性 | 女性 | U-18 | Nonプロ | プロ |
---|---|---|---|---|---|
18.18% | 20.45% | 16.36% | 10.45% | 28.57% | 38.89% |
全体の平均 | 男性 | 女性 | U-18 | Nonプロ | プロ |
---|---|---|---|---|---|
54.81% | 61.22% | 49.09% | 53.62% | 64.29% | 52.38% |
全体の平均 | 男性 | 女性 | U-18 | Nonプロ | プロ |
---|---|---|---|---|---|
20.19% | 26.53% | 14.55% | 18.84% | 21.43% | 23.81% |
専門家のサポートの欠如や時間配分の困難が障壁
スポーツ栄養の知識のスコアと、スポーツ栄養の実践状況との間に、相関係数は小さいながらも有意な正の相関が認められた(r=0.207,p=0.035)。
また、アスリート本人やコーチからの聞き取り調査によって、スポーツ栄養の実践の障壁として、専門家のサポートを得られないこと、時間管理が困難であること、および知識の欠如が浮かび上がった。
これらの結果をもとに著者らは、「U-18から非プロ、プロレベルの成人バスケ選手のスポーツ栄養の知識と実践は不十分であると結論づけられ、パフォーマンスと健康を損なう可能性がある」とまとめるとともに、「プロの栄養士は、バスケットボールの栄養要求と個々の選手の状況に基づいた栄養面の調整によって、バスケ選手を助けることができる」と述べている。また、「モバイルアプリケーションの利用や、シーズンオフの短期間の介入でも、栄養の知識を増やすことができる可能性がある」などの具体的な提案も付記されている。
文献情報
原題のタイトルは、「A Glimpse of the Sports Nutrition Awareness in Spanish Basketball Players」。〔Nutrients. 2021 Dec 22;14(1):27〕
原文はこちら(MDPI)