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陸上長距離アスリートの摂食障害リスクを高める因子は何か? スペインからの報告

陸上長距離ランナーの多くがランニング依存症と摂食障害のリスクを抱えていること、およびそれらの関連に影響を及ぼしている因子が報告された。小児期の体重もそれらの因子の一つとして挙げられるとのことだ。スペインの強化指定選手を対象とする研究の結果。

アスリートのリカバリーや睡眠の実態を、複数の評価スケールで検討

ランニング依存症と摂食障害の併存の実態は?

スポーツに参加することは、多くの精神疾患に対して保護的に働く可能性が示されている。その一方で、ハイレベルの競技生活を送るアスリートでは時に、トレーニングを極限まで行っていないことや競技成績が目標に到達しないことによる罪悪感を抱き、強迫的な行動をとることがある。既報研究からは、アスリート全体では0.5~3.5%にスポーツによる負の側面と言える運動依存性が認められ、エリートアスリートに限った場合、その割合は最大50%以上に上るとの報告もある。

中でも、長距離アスリートはそのリスクが高いことが知られており、ランニング依存症(negative running addiction;NRA)を呈することがある。NRAは、過度なトレーニングが健康上の問題になる段階と、それに加えて摂食障害を伴う段階とに大別される。NRAに伴う摂食障害として、強迫性の飲食(compulsive eater)や神経性食欲不振症(anorexia nervosa)、神経性過食症(bulimia nervosa)が挙げられる。本研究では、これら3つの摂食障害のタイプと長距離アスリートの行動との関連が検討された。

多くのアスリートに、摂食障害のリスク因子を認める

この研究の参加者は、スペインの地中海岸に位置するアルメニアのスポーツ協会が、アマチュアからプロへの昇格をサポートしプロとして活動している218名を対象に実施され、167名がWebアンケートに回答した。回答者の主な特徴は、年齢24±2.12歳、男性58%、BMI21.3±3.27、ランニング歴2.7±1.17年、トレーニング時間9.2±2.4時間/週で、菜食主義者が3.6%含まれていた。

評価項目は、「スポーツ依存症尺度40(Sports Addiction Scale 40;SAS-40)」、「エール食物依存症尺度2.0(Yale Food Addiction Scale 2.0;YFAS 2.0)」、「摂食態度調査票(Eating Attitude Test;EAT-40)」、および米国精神医学会の「精神障害の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)」に基づく判定を行った。

ほぼすべてのアスリートが何らかのリスク因子に該当

DSM-5の11項目のうち1つ以上が該当し、強迫性の飲食に関する何らかのリスクを認めたアスリートは97.1%に上り、そのうち65.9%は11項目の行動(特定の食品を食べ始めると思った以上に食べてしまうことに気付く/腹痛、吐き気、膨満感などの食べ過ぎに伴う体調不良を起こす/食べる量を減らせなかったのではないかと気になる/空腹でないのに食事をすることがある、など)のうち、9項目以上が該当した。

神経性食欲不振症の何らかのリスク因子を認めるアスリートは97%に上り、そのうち11.4%は11項目の行動(食後に嘔吐したくなる/体重増加がとても気になる/空腹でも食べないようにしている/エネルギー消費のために運動をする、など)のうち、9項目以上が該当した。

さらに、神経性過食症については100%が何らかのリスク因子を有し、16.2%は11項目の行動(体重がとても気になる/下剤を服用している/エネルギー消費のために運動をする/食べ物が人生を支配しているように感じる、など)のうち、9項目以上が該当した。

摂食障害と関連のある因子の解析

摂食障害に関連のある社会人口統計学的・身体的因子として、強迫性の飲食は、BMI(r=-0.218)、および、小児期の肥満(r=-0.145)と、有意な負の相関が認められた(いずれもp<0.05)。年齢や性別、月経周期が安定しているか否かは、強迫性の飲食との有意な関連がなかった。

神経性食欲不振症については、BMI(r=-0.058,p<0.05)、月経周期が安定していること(r=0.288,p<0.01)との有意な負の相関が認められ、小児期の肥満とは有意な正の相関(r=0.186,p<0.05)が認められた。年齢や性別は、神経性食欲不振症との有意な関連がなかった。

神経性過食症については、BMIと有意な正の相関(r=0.047,p<0.05)が認められた。年齢や性別、月経周期が安定しているか否か、小児期の肥満は、神経性過食症との有意な関連がなかった。

スポーツを専門とする栄養士のかかわりが重要

これらの結果を基に本論文の著者らは、以下の4つのポイントを提言している。

第一に、運動と栄養に関するアスリートの信念と認識の歪みに対応するため、競技レベルにあるランナーのトレーニングに、心理教育的要素を組み込む必要があるとしている。次に、過度のトレーニングは怪我を引き起こしたりパフォーマンスを低下させたりする可能性があるため、休息も組み込んだ計画的なトレーニングを維持することの重要性が改めて確認されたと述べている。

続いて、スポーツを専門とする栄養教育を実施し、その教育にスポーツ専門の栄養士を含める必要性を強調。そして最後に、摂食障害の危険性を見いだすため効果的なツールをコーチに提供する必要があるとしている。

文献情報

原題のタイトルは、「Relationship between Negative Running Addiction and Eating Disorder Patterns in Runners」。〔Nutrients. 2021 Dec 1;13(12):4344〕
原文はこちら(MDPI)

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