世界アンチドーピング機構(WADA)が2019年の規則違反報告書と2020年のテスト件数を公開
世界アンチドーピング機構(World Anti-Doping Agency;WADA)はこのほど、2019年のアンチドーピング規則違反報告書と、2020年に実施したテスト件数を公開した。2019年に確認された規則違反は1,914件であり、2018年の1,923件とほぼ同数。同レポートの刊行は7回目。一方、2020年に分析したサンプル数は前年の2019年比で46%減と大きく低下したことが報告された。ただし現在は既に、2019年の実績以上のレベルに回復しているという。
2019年のアンチドーピング規則違反は2千件弱で、前年とほぼ同数
2019年に確認されたアンチドーピング規則違反は1,914件で、117カ国、89種類の競技アスリートが関与していた。このうち、1,537件はアンチドーピング検査の結果が陽性であることから違反が見いだされ、377件はその他のエビデンスに基づいて判定された。
違反件数は2018年とほぼ同数だった。
収集されたサンプルの1%が「有害」
2019年の1年間で合計27万8,047件のサンプルが収集され、2,701件(1%)が有害(Adverse Analytical Findings;AAFs)と報告された。このうち、1,535件(57%)は制裁措置の対象とされた。297件(11%)は、正当な医学的理由が認められた。274件(10%)は、医学的理由以外の正当な理由が認められた。49件(2%)は、アスリートが免責の対象となり「制裁なし」と判定された。546件(20%)は保留中。
制裁対象の77%が男性アスリート
制裁措置の対象となった1,535件の有害報告のうち、1,183人(77%)は男性アスリート、352人(23%)は女性アスリートだった。これらのアスリートの競技は83種であり、国籍は115カ国だった。
制裁措置件数の多い競技と国籍の上位10位は以下のとおり。
順位 | 競技 | 件数 | 上位10種目に 占める割合(%) |
---|---|---|---|
1 | ボディービル | 272 | 22 |
2 | 体操 | 227 | 18 |
3 | 自転車 | 179 | 14 |
4 | ウエイトリフティング | 160 | 13 |
5 | パワーリフティング | 119 | 9 |
6 | フットボール | 82 | 7 |
7 | ラグビー | 72 | 6 |
8 | レスリング | 55 | 4 |
9 | 水泳 | 50 | 4 |
10 | ボクシング | 38 | 3 |
順位 | 国 | 件数 | 上位10カ国に 占める割合(%) |
---|---|---|---|
1 | ロシア | 167 | 19 |
2 | イタリア | 157 | 18 |
3 | インド | 152 | 17 |
4 | ブラジル | 78 | 9 |
5 | イラン | 70 | 8 |
6 | フランス | 62 | 7 |
7 | アメリカ | 62 | 7 |
8 | カザフスタン | 49 | 6 |
9 | ポーランド | 47 | 5 |
10 | ウクライナ | 46 | 5 |
2020年のサンプル数は前年から半減も、現状ではパンデミック前と同等以上に回復
2020年に分析したサンプル数は、2019年の27万8,047件から46%減少し、14万9,758件にとどまった。これは、新型コロナウイルス感染症パンデミックの影響によるもので、とくに2020年3~6月にかけて収集されたサンプル数が大幅に減少していた。ただしその後、収集サンプル数は増加に転じ、2021年以降は完全に回復。2019年のレベルを超えているとのことだ。
収集されたサンプルに有害所見(AAF)を認めた割合は、2019年の0.97%から2020年は0.67%へと低下した。
なお、1件のサンプルが必ずしも1名のアスリートを意味するものではなく、同一アスリートから複数回、サンプルが採取されるケースもある。
関連情報
世界アンチドーピング機構(WADA):2019年アンチドーピング規則違反報告書
世界アンチドーピング機構(WADA):2020年テスト件数報告
WADAが2018年のアンチドーピング規則違反レポートを公表 前年比6.5%増の1,923件