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栄養士による口腔衛生への栄養介入、現状把握のためのスコーピングレビュー

口腔衛生のための栄養士による介入の現状把握を目的として行われたスコーピングレビューの結果が報告された。口腔衛生の専門家と栄養士との協力体制などの研究報告を検索したが、それらに関する研究はほとんど得られなかったという。

栄養士による口腔衛生への栄養介入、現状把握のためのスコーピングレビュー

口腔衛生への栄養面からの介入という視点

口腔衛生ケアはその専門家である歯科医師や歯科衛生士の担当領域ではあるが、口腔衛生そのものは栄養とのつながりも深い。一例を挙げれば、炭水化物、とくにショ糖の摂取と齲蝕(虫歯)の関連は広く知られている。一方、野菜の摂取や、摂食間隔を十分に確保するといったことは齲蝕に対して保護的に働くと考えられているし、酸性食品や飲料は歯の浸食との関連が報告されている。このため、栄養管理と口腔衛生との関連を検討した研究もこれまでに複数報告されているが、それらの研究報告を対象としたレビューは少なく、とくに栄養士の関与は検討されていない。

今回紹介する研究はこのような背景から、栄養ケアの実践が口腔の健康に与える影響を調査することを目的として行われた。

文献検索の手法

2020年5月にMEDLINE、CINAHL、およびEmbaseというデータベースを使用して文献検索を実施。その後、COVID-19パンデミックのためにレビューに時間を要したため、2021年5月に再度文献検索を実施した。

採用基準は、2000年以降に査読付きジャーナルに英語で発表され、高所得国でヒトを対象に行われた研究。検索キーワードは、オーラルヘルス、歯周病、歯科助手、歯科スタッフ、歯科医、公衆衛生歯科、食事、食品、栄養、炭水化物、糖アルコール、飲酒行動、摂食行動、医療従事者の態度、健康知識などを用いた。除外基準は、レター、総説、学生(栄養学生、歯科学生、歯科衛生士学生など)によって報告された栄養ケアに関する事例報告など。

2名の研究者が独立してスクリーニングを行い、最終的に70件の論文が適格と判断された。

抽出された報告の特徴

70件の研究が実施された国は、米国23件、英国17件、北欧12件、オーストラリア7件という4カ国・地域が多く、それら以外に、日本3件、ドイツ、サウジアラビアが各2件で、その他、カナダ、香港、ニュージーランド、台湾から各1件が報告されていた。2010年以前の報告が32件であり、2011年以降の報告は38件だった。

大半の研究は、口腔衛生の専門家に焦点を当てたもので、栄養の専門家に関する情報を扱っていた研究は6件のみだった。

食事・栄養のアセスメントと介入における、口腔衛生の専門家と栄養の専門家の違い

本論文では、口腔衛生の専門家または栄養の専門家による、食事・栄養を含む口腔衛生のアセスメントおよび介入について検討を加えている。

食事・栄養を含む口腔衛生のアセスメント

歯科医や歯科衛生士などの口腔衛生の専門家によるアセスメント

19件の研究が、口腔衛生の専門家による食事・栄養のアセスメントについて検討していた。全体として、これらの記事の大半は歯科医師を対象とした横断調査研究だった。13件の研究は、食事アセスメントの実践、例えば食事分析、食事歴の把握、食習慣の評価、食事行動についての質問を調査していた。

複数の職種で食事アセスメントの実践を比較した研究は1件のみだった。その研究では、歯科衛生士は歯科医と比較して、子どもと成人の双方の患者、およびすべての患者の食習慣をアセスメントすることが多いことが示された。また、歯科医と歯科衛生士は、成人よりも子どもの食生活の評価を行う頻度が高いことがわかった。

患者に食事日誌をつけてもらい、その日誌の分析に要する時間の中央値は10分であるとする研究もみられた。このほか、一般歯科医が子どもに食事日誌の記載を指示し治療に利用した研究が存在していたが、それらの大半はそのアセスメントにより結果がより良好となることを示すものではなかったと報告していた。

栄養士などの栄養の専門家による介入のアセスメント

口腔衛生の視点から栄養士などが関与してアセスメントを行っていた研究が3件存在した。すべて横断研究であり、患者の自己申告により情報を捕捉していた。

40歳以上の回答者は18~39歳に比較して、このアセスメントを行っている割合が高かった(53対28%)。栄養専門職者の33%が要介護者の歯の健康について頻繁に質問しているとの調査結果がある一方で、虫歯の評価のために子どもの歯の状態を確認していると回答した栄養専門職者はいなかった。栄養士のインターンシップ研修中に小児歯科ローテーションを完了した栄養士でも、28%は成人の口腔衛生情報を把握せず、24%は小児の口腔衛生に関する情報を収集していないと報告されていた。

介入の習慣

口腔衛生の専門家による介入の習慣

口腔衛生の専門家による栄養介入の実践法として、食事・栄養カウンセリングやアドバイスの実態を検討した研究が複数報告されていた。多くは歯科医師対象の研究だったが、歯科衛生士などのスタッフを対象とする研究もみられた。

これらの研究のほとんどは、口腔衛生の専門家による栄養介入を行う際に、さまざまな異なるタイプの手段を用いている実態を明らかにしている。ただし、具体的な内容を詳細に調査したものは少ない。ある研究では、歯科衛生の専門家が食事のタイミングや甘い食べ物・飲み物の摂取頻度、サプリメントの利用、歯の侵食の原因となる食品、とくに炭酸清涼飲料、フルーツジュース、酸性飲料、柑橘系の果物の摂取などを把握していることを報告し、回答者の56%は避けるべき食品を患者に示している一方で、奨励する食品を示しているのは32%であるとしていた。

口腔衛生の専門家が栄養介入を行う際の障壁を調査した研究が5件存在した。最も多く挙げられた障壁は、行為に対するコストの償還であり、その他にスキルのトレーニング、知識または技術の欠如などが挙げられていた。

栄養の専門家による介入の習慣

栄養士や栄養の専門家による口腔衛生の介入状況を調査した研究が4件存在した。ある研究では、回答者の37%がほとんど毎回、患者と口腔の健康問題について話し合っており、21%が毎回ではないにしろ患者と話し合っていることを報告している。口腔衛生のトレーニングを受けていることは、これらを実行することの有意な関連因子だった。

他の研究では、栄養士の67%が子どもの歯磨きの重要性について保護者に頻繁にアドバイスしているとし、また、栄養専門職者の100%が甘い飲み物やスナックが虫歯にどのように関与しているかを患者に伝えているとの報告も存在した。

一方、栄養士のインターンシップ研修中に小児歯科ローテーションを完了した栄養士を対象とする研究では、回答者の20%が常に食事療法のカウンセリングの際に口腔の健康に関する情報を提供していないと回答したという。同様に、健康的な食品を推奨する際には40%、加糖飲料の話題の際には34%が口腔衛生に言及していなかった。

栄養の専門家が口腔衛生介入を行う際の障壁を調査した研究は、1件のみ存在した。最も多く挙げられた障壁は、行為に対するコストの償還であり、その他に、食事と口腔の健康に対する患者の無関心、歯科医が患者を栄養士に紹介しないこと、栄養士が介入に自信をもっていないことなどが挙げられた。

栄養士と口腔衛生専門家のコラボレーションが求められる

これらの検討のうえで著者らは以下の結論をまとめている。

多くの手法で行われた研究が、口腔衛生の専門家による口腔衛生に関連する栄養ケアの実践情報を収集していた。その一方で栄養士に焦点を当てたものはほとんど見られず、さらに提供されるケアの具体的な詳細について入手できるデータは限られていた。また、栄養士と口腔衛生専門家の間でのコラボレーションについての情報を収集した研究はほとんどなかった。結果として本スコーピングレビューは、この領域の研究をどのように進めていくかという方向性を指し示すものとなった。

文献情報

原題のタイトルは、「Nutrition Care Practices of Dietitians and Oral Health Professionals for Oral Health Conditions: A Scoping Review」。〔Nutrients. 2021 Oct 13;13(10):3588〕
原文はこちら(MDPI)

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