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東京栄養サミット2021アクションプラン「日本の食関係者の具体的行動計画」を発表 農林水産省

12月7~8日に開催された「東京栄養サミット2021」に関連し、農林水産省のサイトに、アクションプランと食関係者の取り組みに関するレポートが掲載された。アクションプランに賛同する日本の食関係者から発表された、健康的で持続可能な食料システムの構築に向けた行動が紹介されている。

東京栄養サミット2021アクションプラン「日本の食関係者の具体的行動計画」を発表 農林水産省

N4Gコンパクトの実施に向けた日本の食関係者の具体的行動計画

同省のサイトによると、日本の食関係者は、「東京栄養サミット2021」(Tokyo Nutrition for Growth Summit 2021;N4G)のテーマ2として掲げられた、「食:健康的で持続可能な食料システムの構築」に向けて、4つの点を重視して取り組むとしている。

4つの重点課題

  • (1)食料システムの変革
  • (2)食関連産業のイノベーションの推進
  • (3)個人の栄養に関する行動変容の促進
  • (4)途上国・新興国の栄養改善への支援

これら、N4Gコンパクトの実施に向けた、日本の食関係者の具体的行動計画は、以下のとおり(抜粋・要約)。

1.世界の栄養改善の現状

これまで国際社会は、飢餓・貧困の撲滅に向けて努力を続けてきたが、ここ数年、その人口は増加傾向にあり、今般の新型コロナ感染症は事態をさらに深刻化させている。また、飢餓・貧困状態を脱しつつある国・地域では、低栄養と過栄養が同時に存在する新たな栄養課題“栄養不良の二重負荷”が拡大している。命を育むべき食が、不適切なバランスで摂取される(とくに一部の栄養素が過剰に摂取される)ことで健康を脅かすリスクが拡大している。

これらに対処し、一人ひとりの健康と地球の健康(サステナビリティ)を両立するため、すべての国・地域、そしてステークホルダーがその立場を超えて、「誰一人取り残さない、飢餓のない持続可能な社会」の実現に向けた行動を起こさねばならない。

2.日本の経験

我々は、気候風土に合わせた農業の生産性向上と伝統の知恵に基づく山野河海(さんやかかい)の資源管理に取り組むとともに、主食である米を中心に、地元で生産される食材を調理・加工した郷土料理を発展させ、継承してきた。また、栄養改善も推進してきており、とくに第二次世界大戦後は国際社会の支援を受け栄養欠乏を克服し、その後に顕在化し始めた肥満・生活習慣病の増加などの過栄養の問題に対しては、食習慣改善運動や企業により開発された食品も活用しながら、栄養バランスに優れた食習慣の構築を目指してきた。日本は、その置かれた状況の特性を踏まえた固有の取り組みにより、現在の健康長寿社会を築いてきた。

3.日本における官民一体の栄養改善の貢献

世界の栄養課題は多様であり、国・地域ごとにそれぞれ適切な取り組みが講じられるべきではあるが、健康であり続けるためには、バランスの取れた食生活を推進することが重要。例えば、栄養の二重負荷に苦しむ国は、生活習慣病を引き起こさない栄養バランスを意識した食習慣を形成することで、国民が健康で安心して生活できる社会を築くことができる。これらの栄養課題には、日本が既に取り組んできたものも多く、日本の経験の中には各国・地域で活用できるヒントが多くあると考えられ、具体的に以下のような取り組みを紹介可能。

(1)日本政府

日本の食生活は、ライフスタイルの多様化に伴って変化した。特に経済成長に伴い、栄養バランスの偏った食事の増加や食文化の喪失が顕在化したため、日本政府は法律を制定し、食育を強力に推進している。さらに、昨今のSDGsへの対応強化等を踏まえ、食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現する「みどりの食料システム戦略」を策定した。これは、欧米とは気象条件や生産構造が異なるアジア/モンスーン地域の持続可能な食料システムのモデルとなり得る。

(2)食品企業

日本では、明治時代以降、栄養改善運動に呼応して、日本の食の伝統である発酵技術を生かしながらも適度に欧米食を取り入れ、調理や保存法を工夫し、「うま味」を活用した「おいしい健康な食事」へ改良してきた。これは、食品産業が海外の技術を取り入れながらイノベーションを起こすことによって実現され、手ごろな価格で、広く国民に提供されてきたもの。

(3)官民連携での海外における活動

このような日本の経験を踏まえて、栄養改善事業推進プラットフォーム(Nutrition Japan Public Private Platform;NJPPP)をはじめとする官民連携の枠組みでは、途上国・新興国の栄養改善支援に取り組んでいる。これまで、東南アジアをはじめ各国政府と連携しながら、学校給食や工場労働者のための職場給食改善プロジェクトを進めてきた。

4.行動のポイント

このような我が国の経験を踏まえ、日本のステークホルダーは、東京栄養サミットの成果文書(コンパクト)、とくにテーマ2「食:健康的で持続可能な食料システムの構築」の実施に向けて、次の点を重視して行動し、その進捗状況を次回の栄養サミットの際に共有する。

食料システムの変革

食料システムの変革には、万能の解決策はない。各国・地域がその置かれた自然やその他の条件のもとで、科学技術を活用し、生産性の向上と持続可能性の両立を図る。

食関連産業のイノベーションの推進

食関連産業は、デジタル化等のイノベーションの推進により、持続可能性と地域の食習慣に配慮しながら、品質・満足度を高め、国民の栄養改善に貢献する製品・サービスを提供する。

個人の栄養に関する行動変容の促進

各人が栄養バランスの取れた食生活を実現できるよう、全てのステークホルダーは、栄養改善に役立つ研究の実施、情報の提供、食育活動の推進等を通じ、個人の栄養に関する行動変容を促す。

途上国・新興国の栄養改善への支援

途上国・新興国の栄養改善に対しては、飢餓の撲滅、妊産婦・乳幼児の栄養改善、現地の食文化を活かした健康な食生活実現に向け、栄養改善事業推進プラットフォームをはじめとするグローバルなパートナーシップで支援する。

62の団体・企業からの行動計画

農水省のサイトには、上記のアクションプランに加えて、そのアクションプランに賛同する日本の食関係者から発表された、健康的で持続可能な食料システムの構築に向けた行動計画が報告された。

例えば、アカデミアからは、弘前大学COIが「非感染性疾患による早世の減少を目指し、健康リテラシーを高める『QOL健診プログラム』の普及によって栄養改善に貢献する。日本で最も寿命が短い青森県で実施してきたコホート研究に基づき、健康チェックによって健康課題の可視化と動機づけを行い、その場で栄養等の健康リテラシー教育を実施、その後、実生活の中で食生活などの改善を支援するプログラムを確立。2030年までに国内外の100万人に提供し、世界の健康格差の解消に役立てる」としている。

慶應義塾大学SFC研究所健康情報コンソーシアムも、「2030年までに、産学官民連携によるICTを活用したESD(Education for Sustainable Development)食育啓発活動を通じて栄養状態の可視化と教育啓発プログラムを開発し、若年女性と子どもの栄養改善に取り組む」という。

企業関連では、味の素株式会社が「2030年までに生活者との接点を現在の7億人から増やすとともに、妥協なき栄養のアプローチの取組みを進め、おいしさに加え栄養の観点で顧客価値を高めた製品・情報を提供することで、10億人の健康寿命の延伸に貢献する」としている。

不二製油グループ本社株式会社は、「植物性の油脂とタンパクの合わせ技で、おいしい健康的な植物性食品の選択肢を広げ、持続可能な食料システムの構築に貢献する」という。

株式会社ユーグレナは、「グラミンユーグレナの緑豆プロジェクトを通じて、2022年にはバングラデシュ小規模農家7,000人への雇用創出と収入増を実現し、ロヒンギャ難民への食料500万食分を供給する」とのことだ。

これらも含め、行動計画が掲示されている企業や教育機関・研究機関等は、計62団体に及ぶ。
※詳しくは下記の関連情報をご参照ください。

関連情報(農林水産省)

N4Gコンパクトの実施に向けた日本の食関係者の具体的行動計画
東京栄養サミット2021

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