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ボディビルダーの便を調べてみてわかったこと pHが比較対照群より有意に高い

ボディビルダーと一般の健康男性の便を比較した研究結果が報告された。評価した4種類の腸内細菌の量に有意差はないものの、pHはボディビルダーのほうが有意に高かったという。便のpHの高さは、動物性タンパク質を分解する“悪玉菌”が多い状態を表している可能性も考えられるが、実際はどうなのだろうか?

ボディビルダーの便を調べてみてわかったこと pHが比較対照群より有意に高い

ボディービルターと体育大学の学生の便を比較

腸内細菌の種類や量は食事や身体活動などの生活習慣によって変わると考えられている。近年、腸内細菌叢の組成の変化が、さまざまな疾患リスクと関連することが明らかになり、消化器や代謝関連のみでなく、癌や自己免疫疾患、精神疾患など、多くの領域でトピックとして取り上げられている。

一方、ボディビルダーは、筋量の増大と維持のために多量のタンパク質を摂取していることが多い。そのような食習慣は、腸内細菌叢に何らかに影響を及ぼす可能性があると考えられるが、十分には検討されていない。本研究は、この点を明らかにしようとするもの。

4週類の腸内細菌をリアルタイムPCRで定量

研究の対象は、22~28歳の26人の若い健康な男性。このうち11人はアマチュアのボディビルダーであり、平均週に5回、最低7.5時間以上、トレーニングを行っており、経験は5±3年。コンテスト参加準備中の筋肉増強段階で本研究に参加した。

他の15人は体育大学の学生で構成される比較対照群。低~中レベルの身体活動を継続しており、バランスの取れた食事をしている。

研究参加の適格条件は、18歳以上で、健康状態が良好であり、過去4週間以内に怪我や疾患罹患がないこと、腸内細菌叢などに影響を及ぼし得る薬剤(抗菌薬、プロトンポンプ阻害薬、プロ/プレバイオティクス、アンドロゲン同化ステロイドなど)を服用していないことで、また過去4週間以内に気候や食習慣の異なる地域へ渡航歴がある者は除外した。

参加者は、平日2日、休日1日、計3日間の食事内容をインタビュー形式で調査された。腸内細菌については、Faecalibacterium prausnitzii、Akkermansia muciniphila、Bifidobacterium spp、Bacteroidesの細菌数をリアルタイムPCRで定量した。

体重・体組成と摂取栄養素の比較

ボディビルダー群は体重と除脂肪体重が高値だが、体脂肪率に有意差なし

ボディビルダー群と対照群を比較すると、年齢はボディビルダー群が27±6歳、対照群が29±8歳で有意差はなく、身長も同順に182.0±6.3cm、181.7±4.4cmで同等だが、体重は96.4±8.9kg、83.4±13.2kgでボディビルダー群の方が有意に大きかった(p=0.0023)。また、除脂肪体重も80.6±8.9kg、69.7±6.4kgとボディビルダー群の方が有意に大きかった(p=0.0035)。ただし、体脂肪率は14.0±4.5%、15.3±7.7%で有意差がなかった。

ボディビルダー群の14.0%という体脂肪率は、ボディビルダーとしては大きな値。これは、研究を行った時期がコンテスト期間中ではなく、増量期間にあたるため。一方、対照群の15.3%という体脂肪率は、体育大学の男子学生であるため一般男性よりも低値と言え、群間に有意差がなかった。

体重あたりタンパク質摂取量は有意差なく、両群ともに食物繊維は推奨量以上摂取

次に、栄養素摂取状況をみると、エネルギー量は、ボディビルダー群3,516±1,433kcal、対照群が2,882±1,422kcalであり、有意差はなかった。

摂取エネルギー量に占める炭水化物とタンパク質の割合は、ボディビルダー群では炭水化物38.8%、タンパク質33.6%、対照群は同順に44.7%、22.0%。絶対量で比較すると、炭水化物摂取量は群間に有意差がなかった。

タンパク質に関しては、絶対量ではボディビルダー群のほうが有意に多いが(p=0.0493)、体重換算後は2.1±1.5g/kg、1.7±1.0g/kgとなり、有意差は消失した。

なお、食物繊維に関しては、ボディビルダー群29.4±11.8g、対照群33.8±24.9gと、両群ともに摂取推奨量を上回っていた。

腸内細菌叢の組成に差はないが、便のpHは高い

では、便サンプルの分析結果だが、リアルタイムPCRで定量された4種類の腸内細菌量に関しては、群間に有意差が認められなかった。一方、pHに関しては、ボディビルダー群6.9±0.7、対照群6.2±0.7であり、ボディビルダー群のほうが有意に高かった(p=0.0322)。

以上の結果をまとめると、ボディビルダーの腸内細菌叢の量は、評価した4種類については対照群と有意差がなかった。この点について著者らは、両群ともに食物繊維が十分摂取されており、食物繊維の摂取量が十分な場合、ボディビルダーの腸内細菌叢の組成は一般対象者と変わらないとする既報研究があり、それと一致する結果だとしている。

ただし、本研究が増量期間に行われたため、食事摂取状況が対照群と大きく変わらなかったことの影響も存在する可能性を指摘している。実際にタンパク質の摂取量は体重換算した場合に有意差がなく、これは研究前の想定とは異なる結果だったとのことだ。また、既報によると、男性ボディビルダーの体脂肪率はコンテスト期間中は約6%、オフシーズンでも12.1±2.5%とされており、本研究で示された14.0±4.5%という数値はその値よりも大きかった。

このようにタンパク質摂取量がそれほど異ならず、腸内細菌叢の組成に有意差がないにもかかわらず、便のpHはボディビルダー群のほうが高く、アルカリ性に傾いていた。この点については、動物性タンパク質の摂取量が多いことにより、アルカリ性代謝物の生成が亢進していることの表れではないかとの考察を加えている。

文献情報

原題のタイトルは、「A Comparative Study of Selected Gut Bacteria Abundance and Fecal pH in Bodybuilders Eating High-Protein Diet and More Sedentary Controls」。〔Nutrients. 2021 Nov 16;13(11):4093〕
原文はこちら(MDPI)

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