団体競技を行っている男性アスリートの18.5%が摂食障害 スペインからの報告
団体競技(チームスポーツ)を行っている男性アスリートの摂食障害の有病率に関するデータが、スペインから報告された。有病率は18.5%だという。年齢が若いことと、競技レベルがプロではなくセミプロレベルであることなどが、摂食障害のリスクに関連している可能性があるという。
男性チームスポーツアスリートの摂食障害有病率は低いというのは本当か
アスリートには摂食障害(eating disorder;ED)が少なくなく、有病率は一般人口より高い可能性が指摘されている。とくに、女性アスリート、審美的スポーツ、体重階級制のある競技種目などで、より有病率が高いとされる。このような理解に基づくと、チームスポーツを行っている男性アスリートは、EDリスクの高い集団としては認識されないことになる。しかし、実際に男性チームスポーツアスリートのED有病率を検討した研究は少ない。
本研究の研究者らはこのような実態を背景として、スペインの男性チームスポーツアスリートのED有病率に関する調査を行った。
4種類の質問票で摂食障害の可能性を判定
2020年1~3月にスペイン国内のすべてのチームスポーツ競技団体と主要なクラブに電子メールで調査の目的を伝え、各団体に加盟しているアスリートへの回答協力依頼を要請した。回答者の適格条件は、18~54歳の男性でチームスポーツを行っていること。
調査項目は、一般的な質問事項(年齢、体重、身長、体脂肪率、トレーニング量、競技歴、ポジション、競技レベル)に加え、以下の4項目。
アスリートの食生活アンケート(CHAD)
スポーツ分野のEDの検出に信頼性が高く、スペイン語で利用可能な唯一のスクリーニング質問票。カットオフスコアは100で、100を超える場合はEDの可能性がある。
摂食態度テスト(EAT-40)
神経性食欲不振症の症状を検出するために使用した。カットオフスコアは21で、21を超える場合は神経性食欲不振症の可能性がある。
摂食障害調査票(EDI-2)
神経性食欲不振症と神経性過食症の認知行動特性を評価するために使用した。カットオフスコアは105で、105を超えるスコアは何らかのEDの可能性がある。
体型アンケート(BSQ)
身体イメージの懸念と認識の評価に用いた。カットオフスコアは110で、110を超えるスコアはEDの可能性がある
男性チームスポーツアスリートの摂食障害有病率は18.5%
148人が回答し、除外基準に回答するもの以外の124人の回答を解析した。124人が行っているチームスポーツは、サッカー、ラグビー、バレーボール、ハンドボール、水球、野球、ホッケーのいずれかであった。
年齢は中央値25歳(四分位範囲21~30)、BMIは同24.4(22.6~26.6)、体脂肪率13.6(10.0~19.7)%、トレーニング量8.0(5.2~10.0)時間/週で、CHADは74.5(59.2~91.0)点、EAT-40は9.0(6.2~13.0)点、EDI-2は28.0(20.0~43.0)点、BSQは52.0(42.0~71.0)点。
4種類の質問票の最低1つがカットオフ値を超える割合で有病率を判定
前記4種類の質問票のカットオフポイントが1つ以上あった場合にEDと判定。その結果、男性チームスポーツアスリートの摂食障害有病率は18.5%と計算された。
各質問票のカットオフポイントを超えた回答者の割合をみると、CHADは15.3%で最も高く、続いてEAT-40は7.2%、EDI-2は0.8%と最も少なく、BSQは4.0%だった。
年齢、競技レベル、体組成がED有病率に関連する可能性
次に、EDの有病率に独立して関連する因子を検討。その結果、体脂肪率の有意性がp=0.06であり、わずかに有意水準に至らず、独立した関連因子は抽出されなかった。ただし、体脂肪率のほかに、年齢や競技レベルに、ED群と非ED群とで分布が異なる傾向がみられた。
例えば年齢に関しては、非ED群では34歳以上が10%含まれていたが、ED群は全員が34歳以下であり、若年者の方がリスクが高い可能性が考えられた。競技レベルに関しては、非ED群はプロが13%、セミプロが65%、アマチュアが23%であるのに対して、ED群は同順に9%、83%、9%であり、ED群にはセミプロレベルのアスリートが多かった。
体脂肪率を含め体組成については、ED群でBMI25以上かつ体脂肪率25%以上の割合が多かった。
男性アスリートのED検出に適した評価ツールが必要
これらの結果から著者らは結論を「従来はEDリスクが低いと考えられ検討対象に含まれないことの多かった男性チームスポーツアスリートでも、低くないED有病率が示された」とまとめている。ただし、EDリスクに関連する有意な因子が抽出されなかった点については、サンプルサイズの不足の影響を考察し、「より大きなサンプルでの調査が求められる」と述べている。
また、本検討でED判定のために用いた4種類の質問票で、ED検出率が大きく異なっていたことから、「過小評価を回避するためには、男性アスリートのEDに特化した評価ツールを作成する必要性が示唆される」と指摘している。
文献情報
原題のタイトルは、「Prevalence of eating disorders on male team sports players」。〔BMJ Open Sport Exerc Med. 2021 Nov 15;7(4):e001161〕
原文はこちら(BMJ Publishing Group Ltd & British Association of Sport and Exercise Medicine)