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ビタミンDが不足していると最大酸素摂取量(VO2max)が低い エリート男子屋内競技アスリートでの検討

アイスホッケーとハンドボールという屋内競技のエリート男性アスリートを対象とする横断研究から、ビタミンD不足がVO2max(Maximum oxygen uptake、最大酸素摂取量、最大有酸素性パワー)の低さとの有意な関連が報告された。さらにこの対象では、ビタミンDレベルが、VO2maxの唯一の独立した関連因子だったという。著者らは、「アスリートの適切な身体能力を維持するために、ビタミンDレベルを30ng/mL以上に維持する必要がある」と述べている。ドイツからの報告。

ビタミンDが不足しているとVO2maxが低い エリート男子屋内競技アスリートでの検討

北緯50度での夏季に白人男性アスリートで検討

ビタミンDが筋骨格系の健康に与える影響のエビデンスは十分に確立されている。また近年ではビタミンDの身体的パフォーマンスへの影響も報告されているが、まだエビデンスは十分とは言えない。著者らは、ビタミンDレベルが低いことが予測される屋内アスリートを対象として、最大有酸素パワーと25-ヒドロキシビタミンD(25-OHビタミンD)レベルとの関連を横断的に検討した。

この研究は、北緯約50度に位置するドイツのギーセンで7月に行われた。北緯50度線は現在の日本の領土を通過しておらず、戦前にサハリン(樺太)をソ連領と分けていた国境線が北緯50度線にあたる。

対象は、男性プロハンドボール選手88人と、男性プロアイスホッケー選手24人、計112人。年齢は18~38歳で平均26.1±5.2歳、BMI25.8±1.8、トレーニング歴9.9±5.2年、トレーニング時間16.9±3.5時間/週。すべて白人で怪我をしておらず、習慣的な日焼けやビタミンサプリメントを服用していないアスリート。低ビタミンの兆候を示したアスリートは含まれていなかった。

運動パフォーマンステストは、競技シーズン終了から6週間後に実施され、テスト施行36時間前にはトレーニングを終了、3時間前に摂食を終了した条件で行った。また2日前からアルコールの摂取を禁止し、前日からは運動を禁止。この条件でサイクリングエルゴメーターを用いてVO2maxを計測した。

そのほか、日光曝露レベルを、曝露時間と衣服による皮膚の被覆レベルから評価した

夏季にもかかわらず3割がビタミンD不足

25-OHビタミンDは8.4~70.7ng/mLの範囲に分布し、平均は36.4±12.4ng/mLだった。既報をもとに30.0ng/mLをビタミンDの基準値とすると、34人のアスリート(30.4%)は25-OHビタミンDが不足しており、その群の平均は21.9±5.9ng/mLだった。ビタミンDレベルが基準値以上の78人(69.6%)の平均は41.6±8.6ng/mLだった。

ビタミンD不足群と非不足群とで、パフォーマンスレベルに有意差

ビタミンD不足群と非不足群とを比較すると、年齢、BMI、日光曝露量、トレーニング歴/時間、心拍数、収縮期血圧、ヘモグロビン、ヘマトクリット、フェリチンなどに有意差はなかった。一方、副甲状腺ホルモンは、ビタミンD不足群が40.5±16.0ng/mL、非不足群が32.0±18.2ng/mLであり、不足群のほうが有意に高値だった(p=0.02)。ただしカルシウムレベルは有意差がなかった。そのほかに、拡張期血圧がビタミンD不足群は80.2±7.2mmHg、非不足群は74.7±6.9mmHgであり、不足群のほうが高いという有意差があった(p=0.004)。

VO2maxで評価したパフォーマンスレベルは、ビタミンD不足群が3.5±0.8W/kg、非不足群が3.9±0.9W/kgであり、前者のほうが低く群間に有意差が認められた(p=0.03)。

ビタミンD値で4群に分けての検討

本研究では続いて、ビタミンDレベルをさらに細かく、以下の4群に分けたうえで比較検討している。25-OHビタミンDが20ng/mL未満の10人、20~30ng/mLの24人、30~50ng/mLの61人、50ng/mL以上の17人。

その結果、前記の2群に分けた検討と同様に、年齢、BMI、日光曝露量、トレーニング歴/時間、心拍数、収縮期血圧、ヘモグロビン、ヘマトクリット、フェリチン、およびカルシウムなどに、有意な群間差はなかった。副甲状腺ホルモンについては、25-OHビタミンD50ng/mL以上の群は他の3群に比較し有意に低値だった。拡張期血圧は25-OHビタミンD30~50ng/mLの群と50ng/mL以上の群が、他の2群に比較し有意に低値であり、50ng/mL以上の群は20~30ng/mLの群との比較でも有意に低値だった。

VO2maxは、25-OHビタミンD20ng/mL未満の群から順に、3.18±0.64W/kg、3.59±0.71W/kg、3.85±0.46W/kg、4.24±0.36W/kgであり、30~50ng/mLの群と50ng/mL以上の群は他の2群に比較し有意に高値であり、50ng/mL以上の群は20~30ng/mLの群との比較でも有意に高値だった。

このほか、前記の2群に分けての検討では有意差が認められていなかった、ワークロードでの最大パワーも有意差が認められた。具体的には、同順に295±48W、340±74W、351±58W、406±30Wであり、群間の関係はVO2maxと同様に、30~50ng/mLの群と50ng/mL以上の群は他の2群に比較し有意に高値であり、50ng/mL以上の群は20~30ng/mLの群との比較でも有意に高値だった。

ビタミンDレベルは、VO2maxを予測する唯一の独立した関連因子

最後に、25-OHビタミンD、年齢、身長、体重を変数として、VO2maxと関連する因子を重回帰分析で検討したところ、25-OHビタミンDレベルのみが有意な独立した予測因子として抽出された(β=0.227,p=0.017)。検討因子に副甲状腺ホルモン、トレーニング歴/時間を追加しても、この結果は変わらなかった。

線形単回帰分析から、25-OHビタミンDレベルとVO2maxとの間に有意な相関が認められた(r2=0.052,p=0.016)。

屋内競技アスリートはビタミンDのモニタリングが必要

著者らは本研究に、屋外競技アスリートや非アスリート集団などの対照群を設けていないこと、ビタミンDレベルに影響を与え得る食事摂取量を評価していないこと、日焼け止めの使用を考慮していないことなどを限界点として挙げている。一方で、ほぼ同じ年齢で経験が豊かなドラックナイーブのエリートアスリートで検討していることは強みと言えるとしている。

また、ビタミンDレベルがピークとなる夏季であるにもかかわらず、屋内エリートアスリートの3割はビタミンD不足に該当したことや、ビタミンDレベルがVO2maxの唯一の予測因子として抽出されたという研究成果を強調。「この研究結果は、ビタミンD不足を回避するために、プロの屋内アスリートの25-OHビタミンDレベルをシーズンを通してモニタリングすることの必要性を支持している。また今後、骨格系の健康維持のための推奨値である30ng/mLという25-OHビタミンDの基準値が、プロのアスリートの身体的パフォーマンスの最適化にも合致しているか否かを確認する研究が求められる」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Influence of 25-Hydroxy-Vitamin D Insufficiency on Maximal Aerobic Power in Elite Indoor Athletes: A Cross-Sectional Study」。〔Sports Med Open. 2021 Oct 14;7(1):74〕
原文はこちら(Springer Nature)

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