スポーツ栄養WEB 栄養で元気になる!

SNDJ志保子塾2023 ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー
一般社団法人日本スポーツ栄養協会 SNDJ公式情報サイト
ニュース・トピックス

食品パッケージへのグリセミックインデックス(GI)の表示 世界各国の現状

糖尿病患者の血糖コントロールだけでなく、持久系アスリートの競技後半のパフォーマンスの維持にも、グリセミックインデックス(GI)の低い糖質の利用が広がってきている。しかし、消費者がGIを判断する際、現状では各自の知識や経験に頼るしかない。この現状に対して、食品のパッケージの情報にGIを追記すべきだと主張する論文が発表された。食品パッケージのGI記載に関する世界各国の規則もまとめられている。

食品パッケージへのグリセミックインデックス(GI)の表示 世界各国の現状

グリセミックインデックス(GI)とは

GIについて学ぼう(大塚製薬)

GIやGLのパッケージへの表記に関する規則のある国はごく少数

国際連合食糧農業機関(The Food and Agriculture Organization of the United Nations;FAO)の勧告に沿い、食品消費者が情報に基づいた選択を行えるように、多くの国々が食品包装パッケージに栄養情報を記載している。炭水化物はそのパッケージに記載する必須の成分として位置づけられており、消費者の食品選択に役立てられている。

一方、食品摂取後の血糖値の上昇しやすさの指標であり、ブドウ糖を100とする「グリセミックインデックス(glycemic index;GI)」や、あるいはGIと炭水化物量の積を100で除した値であり、食品の糖負荷量を表す「グリセミックロード(glycemic load;GL)」に関しては、糖尿病患者の血糖管理における栄養指導に広く利用されるようになりつつあるが、食品包装パッケージに表記する際の規則を定めている国はまだ少ない。本論文の著者らは、将来に向けてGIの表記を推進していくにあたり、世界各国の現状把握を試みた。

PubMedなどを利用した文献検索、各国の食品・飲料規制当局のWebサイト、国際機関のサイトを調査するとともに、各国の政府機関や専門家に連絡をとり、GIの食品パッケージへの表記の現状をリサーチした。論文では地域・国ごとに現状が詳細にまとめられている。以下はその抜粋。

国や地域ごとの食品梱包パッケージへのGIの記載の現状

オーストラリアとニュージーランド

オーストラリア・ニュージーランド食品局(Australia New Zealand Food Authority;ANZFA)は、食品基準コードでGIについても定義づけを行っている。現在、低GIであることが確認され(ISO 26642:2010に準拠)、その他、エネルギー量や炭水化物および飽和脂肪酸の基準を満たしている場合には、ANZFA認定のGIシンボルマークを表示することが可能。なお、ANZFAでは、GI55以下を「低GI」、56~69を「中GI」、70以上を「高GI」と分類している。

2002年にGIシンボルマークが制定され、5つの食品/飲料のパッケージが表示を開始、2021年には300を超える食品/飲料に増加した。一般市民を対象とする調査で、2002年にGIの概念を認知していたのは28%だったが、2005年には86%に増加していた。最近の調査では、消費者の半数がGIシンボルマークが食品購入の決定に役立つと考えていると報告されている。

アフリカ

アフリカでは唯一、南アフリカがGIに関するパッケージ表示に規則を制定している。食品の炭水化物含有量が総エネルギー量の40%以上の食品に限り、パッケージ表示が可能。

同国の保健省はグリセミックインデックス財団(Glycemic Index Foundation of South Africa;GIFSA)に対してGIパッケージ表記の承認機関としての権限を付与し、現在、GIFSAの認証する食品には、GIを4種類(very low、low、medium、high)で表したマークの表示が義務付けられている。この制度は2000年にスタートし、現在180種の食品に採用されている。

アジア

中国

中国栄養学会や国家衛生委員会の主導により、GIのパッケージ表示に向けて作業が進行中。7.5g以上の炭水化物を含むか、炭水化物が80%以上の食品が対象となり、低GIであることを示すには、GIが55未満である必要がある。

シンガポール

2014年に健康促進委員会により食品パッケージへのGI表記を推奨する発表がなされた。低GI食品にはそれを示すシンボルマークの表記が許可されている。当初、このマークの使用は全粒穀物製品のみに限られていたが、現在はすべてのカテゴリーの食品に拡大されている。

日本や韓国、その他

日本や韓国、カンボジア、マレーシア、フィリピン、台湾、タイ、ベトナムは、GIのパッケージ表記に関する定めはない。

北米

カナダ

カナダの肥満や糖尿病、心疾患関連医学会がGIの利用を推進しているが、2013年に同国保健省は、GI測定精度の信頼性、摂取後の身体への影響のエビデンスの不足、国の栄養ガイドラインとの不一致などを理由に、食品パッケージへのGIの表記に反対する立場を表明した。その後、議論が徐々に進展しているが、GI表記に関する規定はまだ策定されていない。

米国

米国糖尿病学会がGIの活用を推奨しているが、これまでのところ、食品医薬品局(Food and Drug Administration;FDA)はGIの表示に関する定めを制定していない。一方、オーストラリアなどで採用されている低GIシンボルマークのある食品の流通は規制されておらず、低GIロゴの使用に関する訴訟も発生していない。

欧州

2010年にEU政府と欧州食品安全機関(European Food Safety Authority;EFSA)は、炭水化物に関する食品基準値を発表した際、GIに関してはエビデンスの不足を理由に具体的な推奨はしなかった。現在、一部の欧州諸国で国内の食事摂取基準(Dietary Reference Values)にGIまたはGIの採用が考慮されている。

文献情報

原題のタイトルは、「Dietary Glycaemic Index Labelling: A Global Perspective」。〔Nutrients. 2021 Sep 17;13(9):3244〕
原文はこちら(MDPI)

この記事のURLとタイトルをコピーする
志保子塾2024前期「ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー」

関連記事

スポーツ栄養Web編集部
facebook
Twitter
LINE
ニュース・トピックス
SNDJクラブ会員登録
SNDJクラブ会員登録

スポーツ栄養の情報を得たい方、関心のある方はどなたでも無料でご登録いただけます。下記よりご登録ください!

SNDJメンバー登録
SNDJメンバー登録

公認スポーツ栄養士・管理栄養士・栄養士向けのスキルアップセミナーや交流会の開催、専門情報の共有、お仕事相談などを行います。下記よりご登録ください!

元気”いなり”プロジェクト
元気”いなり”プロジェクト
おすすめ記事
スポーツ栄養・栄養サポート関連書籍のデータベース
セミナー・イベント情報
このページのトップへ