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スポーツ栄養の理解度を調査 NCAAディビジョンIIIに所属する学生アスリートの現状

全米大学スポーツ協会(NCAA)ディビジョンIIIに所属するアスリートを対象に、スポーツ栄養や一般的な食習慣に関する知識レベルの調査が行われ、栄養に関する知識が十分とは言えないとする結果が報告された。また、チーム競技アスリートよりも個人競技アスリートのほうが水分摂取や微量栄養素の知識が有意に高いこと、質の高い情報に接する機会が限られていることなどもわかった。

スポーツ栄養の理解度を調査 NCAAディビジョンIIIに所属する学生アスリートの現状

NCAAで最大の構成比、ディビジョンIIIの学生での調査

全米大学スポーツ協会(National Collegiate Athletic Association;NCAA)の三つのディビジョン(I~III)のうち、学生アスリートの人数が最大のディビジョンはIIIであり、構成比で約40%を占める。しかし、ディビジョンIやIIに比較してアスリートのサポート体制が貧弱で、栄養教育も十分でないことが多い。

これまでにもNCAA所属アスリートを対象とするスポーツ栄養の知識調査は行われてきているが、それらはディビジョンIやIIのアスリートを対象としたものであり、ディビジョンIIIアスリートでの調査はほとんど行われていない。この現状から本研究の研究者らは、ディビジョンIIIアスリートの栄養知識や食習慣の実態を把握する目的で、以下の調査を行った。

85項目のアンケートに300人以上が回答

2020年10~12月に米国内の5大学に所属する18歳以上のディビジョンIIIアスリート2,497名に、Webアンケート調査への回答協力連絡を送信。そのうちアンケートを開始した学生が489名(19.5%)で、アンケートを終了したのは331名(13.2%)だった。

アンケートを終了した331人は、男性149名(45.0%)、女性181名(57.7%)、1名は性別不明で、年齢は男性19.6±1.6歳、女性19.4±1.2歳、BMIは同順に25.2±3.8、23.1±2.9だった

アンケートの質問項目は85項目で、食生活とスポーツ栄養に関する知識を質問した。このうちスポーツ栄養に関しては49問の質問が設定されていて、主要・微量栄養素の摂取量、水分摂取などについて質問。その内容は米国スポーツ医学会(American College of Sports Medicine;ACSM)や栄養と食事のアカデミー(Academy of Nutrition and Dietetics;AND)、カナダ栄養士会などの共同意見書に基づいて作成されており、精度検証済み。

属性・背景別の知識スコアの比較

331人のうち42人(女性が66.7%)は、以前に管理栄養士・栄養士からカウンセリングを受けており、62人(女性が66.1%)は大学レベルの栄養コースを受講し、さらに4人(全員女性)は大学の専攻として栄養学を履修していた。そのほかに、女性57人と男性33人が、健康・運動関連分野(運動科学、トレーニング、看護、理学療法、運動学など)を専攻していた。

49項目のスポーツ栄養知識に関するスコアの合計は-38~49点の範囲であり、平均スコアは6.4±8.9点だった。カテゴリー別の平均スコアは以下のとおり。炭水化物2.5±2.7点、タンパク質-0.8±2.9点、脂質0.8±1.8点、水分補給1.2±1.9点、微量栄養素0.9±2.0点、体重管理1.7±2.5点。

性別の比較

これを性別に比較すると、総合的なスポーツ栄養知識、炭水化物、タンパク質、脂質、体重管理のカテゴリーについては有意差がなく、水分補給については女性のほうが有意に高スコアだった(1.4±1.8 vs 0.9±2.0点,p=0.016)。

栄養教育履修の有無での比較

以前に栄養コースを受講していた人とそうでない人との比較では、総合的なスポーツ栄養知識、脂質、水分補給、微量栄養素、体重管理については有意差がなかった。一方、炭水化物とタンパク質に関しては、前者のほうが有意に高スコアだった。

大学レベルの栄養コースを受講した人は、総合的なスポーツ栄養知識、炭水化物、水分補給の知識について、有意に高スコアだった。

個人競技とチーム競技での比較

個人競技アスリートとチーム競技アスリートとで比較すると、水分補給の知識は前者の方が高スコアだった(1.5±2.1 vs 1.0±1.8,p=0.037)。総合的なスポーツ栄養知識、炭水化物、タンパク質、脂質、微量栄養素、体重管理については有意差がなかった。

食生活の実態

一般的な食事について

毎日朝食を食べていると回答した学生は、男性45.6%、女性41.0%だった。男性の61.7%、女性の60.7%は1日3食であり、同順に14.8%、2.2%は1日4食以上食べていた。

男性の78.5%、女性の65.2%は頻繁に食事をスキップすることはないと回答した。食事をスキップすると回答した人のその理由は、時間の制約が最も多かった。その他、男性は女性より果物と野菜、スナックの摂取が少なく、反対にプロテインバーやシェイクの摂取が多かった

サプリメントの摂取状況

サプリメントを毎日摂取していると回答したのは、男性29.5%、女性28.9%だった。男性からの回答が最も多かったサプリメントのカテゴリーは、プロテインサプリメント(31.4%)、マルチビタミン/ミネラル(14.3%)、女性ではマルチビタミン/ミネラル(37.7%)、プロテインサプリメント(25.3%)、ワークアウト前のカフェイン(9.3%)だった。

栄養士の知識に期待しているが、接する機会が限られている

コーチ、アスレティックトレーナー、管理栄養士・栄養士、医師について、それぞれの栄養に関する知識をどう思うかを、「全く知識がない」~「非常に知識が豊富」の5段階で回答してもらったところ、以下の結果となった。

コーチに関しては、男性は5段階で中間の3番目の評価が38.9%と最多であり、女性も3番目の評価が37.8%で最多だった。アスレティックトレーナーに関しては、男性は上から2番目の評価が51.7%と最多で、女性も2番目の評価が47.5%と最多だった。管理栄養士・栄養士に関しては、男性は最上位の評価が71.1%と最多で、女性も最上位の評価が77.0%と最多だった。医師に関しては、男性は上から2番目の評価が49.7%と最多で、女性も2番目の評価が45.4%と最多だった。

次に、利用頻度の高い栄養関連情報ソースの上位3つをランク付けしてもらうという質問の結果、1位はソーシャルメディア(20.2%)で、次いでコーチ(16.8%)、アスレティックトレーナー(15.5%)、医師(12.9%)であり、その次に管理栄養士・栄養士(8.5%)が入った。

これらの結果から著者らは、「NCAAディビジョンIIIの学生アスリートは、スポーツ栄養に関する知識が不十分であるにもかかわらず、実際の食生活は一見して賢明な選択をしているように見受けられる。ただし、質の高い栄養情報を入手する機会が限られていることが明らかになった」とまとめている。

文献情報

原題のタイトルは、「Assessment of Sport Nutrition Knowledge, Dietary Practices, and Sources of Nutrition Information in NCAA Division III Collegiate Athletes」。〔Nutrients. 2021 Aug 26;13(9):2962〕
原文はこちら(MDPI)

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