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摂り過ぎはダメ! 30種類以上のサプリメントを1年間摂取していた高齢女性の症例

サプリメントは一般的に安全ではあるが、適切に摂取されることが前提で、この前提が守られないと安全性の懸念が高まる。30種類以上のサプリメントを1日4回摂取し続けて、急性腎障害を発症し緊急透析を要した高齢女性の症例が、米国から報告された。著者らは、「本報告はサプリメントの複合毒性を明らかにする初の医学的報告の一つ」と述べている。

摂り過ぎはダメ! 30種類以上のサプリメントを1年間摂取していた高齢女性の症例

30種類以上のサプリを1日4回、1年以上摂取

この女性は、高血圧と甲状腺機能低下の既往のある、健康食品店を経営している71歳の女性。子どもから得られた情報によると、彼女は30以上の栄養補助食品(dietary supplements;DS)を1日4回摂取し、それを1年以上続けていた。

摂取していたサプリの種類の一部を挙げると、

  • ビタミンA(1日に摂取していた量2万5,000IU)、
  • コレカルシフェロール(ビタミンD3.同1万U)
  • ビタミンK2(100μg)
  • ω3魚油(6,000mg)
  • セレン(200μg)
  • クロム(200μg)
  • 酸化マグネシウム(1,000mg)
  • ルテイン(20mg)
  • ヒアルロン酸(200mg)
  • L-カルニチン(1,000mg)
  • ルチン(1,350mg)
  • ラズベリーケトン(2,000mg)
  • L-チロシン(500mg)
  • イチョウ葉エキス(80mg)
  • 緑茶葉エキス(1,450mg)
  • セントジョンズワート(1,600mg)
  • グルコサミン&コンドロイチンカプセル(3カプセル)
  • フェヌグリーク種子抽出物(2,440mg)
  • オオアザミ種子エキス(300mg)
  • ウコン根エキス(1,600mg)

など。

急性腎障害、電解質異常、心房細動で入院

1年以上摂取を続けた結果、急性腎障害、電解質異常、心房細動により入院に至った。

入院時、クレアチニンは6.2mg/dLであり、6週間前に記録されていた0.8mg/dLから著明に上昇しており、尿素窒素は130mg/dLであり、急性腎障害(acute kidney injury;AKI)を呈していた。そのほかに、白血球上昇、重炭酸塩低下、電解質異常と、リンやカリウム、マグネシウムの異常高値を認めた。高血圧治療のために処方されていた、利尿薬(ヒドロクロロチアジド)、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(バルサルタン)、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(リシノプリル)は、AKI発症に影響を与えていた可能性も考えられた。

入院から数時間後に尿量が減少し、無尿となった。また、電解質異常に対し投与されていた重曹の点滴に反応せず、pH7.16とアシドーシスを呈したことから、緊急透析が開始された。その後の入院中の治療により、心房細動や電解質異常、および尿路感染症や精神状態の変化は解消された。

患者はサプリメント摂取を中止することに同意したうえで退院した。退院までに腎機能も改善はしたが、引き続き透析を要した。腎機能に対して亜急性期治療が継続され、約1カ月でクレアチニンは3mg/dL台に低下し、透析中止可能となった。

サプリ同士の相互作用は不明点が少なくない

米国では、60歳以上の成人の69.7%がサプリメントを利用し、約29%が毎日4種類以上のサプリを摂取しているという。また、サプリ利用者の多くは、疾患治療目的での処方薬も服用しており、腎機能に影響を及ぼす薬剤も少なくない。腎排泄型の薬剤およびサプリは、腎機能低下時に血中濃度が上昇し、それによってさらなる腎機能低下が急速に進行することが起こり得る。しかし最近の研究によると、サプリを利用している外来患者のうち、医師とサプリ摂取について話し合い文書として記録される割合は約5%にすぎないという。

サプリは一般に「自然な」ものとして販売されており、一般の人々からは「安全である」と認識されがちだ。しかし、セントジョンズワートなどの利用者が少なくないサプリのなかにも、腎機能低以下を来し得るものが多く存在する。処方薬の副作用や相互作用の発現頻度が明確であるのに対し、サプリは製品の品質や設定用量が異なるため、個々のサプリの有害事象リスクが評価されることは少なく、とくにサプリの相互作用についてはほとんど検討されていない。

著者らは結論として、「サプリメントの利用を注意深く監視し、多くの人がサプリ利用に期待している健康の維持・改善という目的が、有害なものに変わらないようにしなければならない」とまとめている。

文献情報

原題のタイトルは、「Dietary supplements: When too much of a good thing becomes harmful」。〔Clin Case Rep. 2021 Sep 15;9(9):10.1002/ccr3.3614〕
原文はこちら(John Wiley & Sons)

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