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全卵 vs 卵白 筋肉量に及ぼす影響が強いのはどちらか? ナラティブレビュー

高タンパク食品と知られる卵は、アスリートの筋量維持・増加目的で摂取されることも少なくない。しかしコレステロールを避けるために卵黄を除き卵白だけを摂取するという方法をとる人もいる。卵の摂取方法の違いによる筋肉量に対する影響の差異を、これまでの既報文献から考察したナラティブレビュー論文が、国際スポーツ栄養学会(International Society of Sports Nutrition;ISSN)の「International journal of sport nutrition and exercise metabolism」に掲載された。その要旨を紹介する。

全卵 vs 卵白 筋肉量に及ぼす影響が強いのはどちらか? ナラティブレビュー

研究の背景

中サイズの卵、約50gは33gの卵白と17gの卵黄から成り、12.5%がタンパク質(主としてアルブミン)に相当する。卵黄には卵の総タンパク質の約40%が含まれているだけでなく、ビタミン、ミネラル、脂質など、潜在的な同化作用をもつ非タンパク質栄養素を含んでいる。よって全卵摂取は卵白のみを摂取した場合に比較し、骨格筋量の増加に寄与する可能性が想定される。

卵黄の非タンパク質栄養素

卵黄にはタンパク質以外の同化作用を有する可能性のある栄養素が複数含まれている。

リン脂質

卵黄には約6gの脂質が含まれており、そのうち30%(~1.8g)がリン脂質。リン脂質は抗炎症作用を有する可能性があり、メタボリックシンドロームの該当者を対象とする12週間の介入研究では、1日あたり3個の全卵摂取により腫瘍壊死因子-α(TNF-α)が低下したことが報告されている。過体重者を対象とする別の研究では、炎症マーカーであるC反応性蛋白(CRP)レベルが全卵摂取後に低下したという。TNF-αやCRPが高いことは筋肉量の喪失と関連していることを考慮すると、全卵を介してリン脂質を摂取することが、高齢者や骨格筋疾患のある人など一部の集団では、筋肉量の維持に保護的に働くと仮定することができる。

ω3脂肪酸

ω3脂肪酸は、筋線維の膜流動性を高めアミノ酸の取り込みを増加させ、筋タンパク質合成(muscle protein synthesis;MPS)を亢進させて、筋肉量に影響を与える可能性のある多価不飽和脂肪酸。さらにω3脂肪酸は抗炎症作用を有しており、炎症の亢進が筋肉喪失の確立された一因であることを考慮すると、ω3脂肪酸が筋肉量にプラスの効果をもたらす可能性がある。

ω3脂肪酸は、魚油として摂取されるエイコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)が主要な食品源だ。卵黄には親鶏の飼育方法により異なるが、約0.002gのEPAと0.019gのDHAが含まれており、一方、成人のEPAとDHAの平均摂取量は約0.023/日と約0.063g/日で、高齢者では約0.042g/日と約0.077g/日。この量を全卵からのみ摂取するには、DHAについては約4個、EPAについては約21個必要で現実的でない。したがって、卵黄に含まれるEPAとDHAが筋肉量の調節に重要な影響を与える可能性は低い。

コレステロール

中サイズの卵の卵黄には約225mgのコレステロールが含まれている。男性ホルモンのテストステロンはコレステロールから合成されるため、卵黄が間接的な同化作用をもたらす可能性がある。テストステロンは、筋肉量と筋力の維持に不可欠な役割を果たす同化ホルモンであり、多くの消費者向けWebサイトが、全卵のコレステロールを摂取することがテストステロンレベルを上げるために有効と記しているが、この主張に確かな科学的エビデンスはない。

今日まで、テストステロンレベルに対する全卵摂取の影響を評価した研究は1件のみであり、3つの全卵と6つの卵白で12週間介入した結果、全卵ではテストステロンを2.4ng/mL増加させ、卵白での増加は0.7ng/mLだったという。しかし、全卵摂取によって誘発されたテストステロンの増加は、筋肉量の増加を刺激するレベルではなかった。

まとめると、限られたエビデンスからは、全卵からのコレステロールの摂取がテストステロンレベルにいくらかの影響を与える可能性は示されているが、同化作用を刺激するほどではないと考えられる。

ビタミンD

卵黄にはビタミンDが含まれており、ビタミンDレベルは筋肉量と正相関することが知られている。メタ解析の結果、ビタミンDの摂取(300~4,000IU/日)が筋力にわずかなプラスの効果をもたらすことが示された。ただし解析対象となった研究の参加者は主に、ビタミンDレベル低値または高齢者である。また、筋肉量には効果が示されていない。

さらに、メタ解析で評価されたビタミンD量を卵から摂取するには、1日に約8〜100個の全卵を摂取する必要があり、現実的でない。

筋タンパク質合成(MPS)に対する全卵 vs 卵白

上記のように、卵黄には潜在的な同化特性を持つ非タンパク質栄養素が含まれている。健康な若い男性の筋力トレーニング後の筋タンパク質合成(MPS)に対する、全卵(タンパク質18gと脂質17g)と卵白(タンパク質18gと脂質0g)摂取の効果を比較した研究では、全卵が卵白より急性MPSをより大きく刺激したと報告されている。ただし、この差が生じたメカニズムの一つとして、エネルギー含有量の差も考慮する必要がある。

レジスタンストレーニングに伴うMPS反応を最大化するには、1食あたり0.25~0.30g/kgのタンパク質が一般的に推奨されている。これまでの限られた研究報告は、推奨される至適用量以下のタンパク質を摂取している場合に、卵黄摂取によりMPSがさらに増加する可能性があることを示唆しており、卵以外の食品からのタンパク質摂取量が至適用量(1食あたり約0.30g/kg)だった場合に、認められた差が維持されるかどうかは不明。よって今後の研究では、MPSに対する全卵と卵白の効果を高用量のタンパク質摂取下で比較する必要がある。

筋肉肥大に対する全卵 vs 卵白

前述のように、全卵摂取は若い男性において、卵白摂取よりも高いMPS率を示すようだ。ただし、急性MPSは筋肥大と相関していないとの報告があり、全卵と卵白の摂取が筋肉量に及ぼす長期的な影響を直接的に評価する必要がある。

3つの全卵と6つの卵白の効果を比較したランダム化比較試験からは、筋肉量の群間差は有意水準に達しなかったと報告されている。ただし、全卵摂取は卵白摂取に比較し、総除脂肪体重の絶対量の増加幅において、有意水準に近いレベルの群間差が生じていたという(p=0.06)。しかしながら、この研究では除脂肪体重が誤差の生じやすい生体インピーダンスによって評価されているため、この結果の解釈には慎重さが求められる。

限られた現在のエビデンスから、卵黄の摂取は筋肉量の増加を促進しない可能性が高いことを示しているが、除脂肪量に対する潜在的なメリットについては、さらなる研究が必要とされる。

その他、卵黄に含まれる栄養素が、筋力トレーニングによって誘発される筋力向上を強化する可能性を示す研究報告もみられる。

研究対象やタンパク質摂取量により結果が異なるのではないか

本ナラティブレビューでは、上記のほかに、「全卵の摂取は安全か(健康に悪影響がないか)?」といった視点や、「現在のエビデンスの限界と将来の研究への提案」といった切り口でも、文献的考察を加えている。

結論としては、「このトピックに関する研究が少ないことを考えると、卵黄(または全卵)の摂取量がMPSまたは筋肉量に有益な効果をもたらすかどうかについて、強固な推論を導き出すことはできない。限られたエビデンスは、卵黄の摂取が筋原線維タンパク質合成を亢進させることを示唆しているが、その効果は少なくとも若い男性では、筋肉量の改善につながるとは思われない。とはいえ、この結論は非常に限られた研究結果に基づいており、若い男性だけでなく、女性、高齢者、および筋肉消耗性疾患患者など、他の集団の筋肉量に対する卵黄(または全卵)摂取の影響の理解を深めるために、より多くの研究が必要」とまとめられている。

文献情報

原題のタイトルは、「The Effect of Whole Egg Intake on Muscle Mass: Are the Yolk and Its Nutrients Important?」。〔Int J Sport Nutr Exerc Metab. 2021 Sep 9;1-8〕
原文はこちら(Human Kinetics)

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