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スポーツジム利用者の肝機能・腎機能をサプリメント利用の有無で比較すると… ブラジルの研究

スポーツジム利用者の肝機能や腎機能を、サプリメントの利用の有無で比較した横断研究の結果がブラジルから報告された。評価されたマーカーのうち、肝機能を表すALT、AST、ALPのうちのAST、および、腎機能を表すクレアチニンと尿素のうち尿素は、サプリ摂取群で上昇する傾向が認められたという。著者らは、この結果はサプリが肝臓や腎臓にダメージを与えることを意味するものではないが、健康へのリスクを回避するため、サプリは専門家の判断のもとで適切に使用すべきだと述べている。

スポーツジム利用者の肝機能・腎機能をサプリメント利用の有無で比較すると… ブラジルの研究

スポーツジム数世界第2位の国、ブラジルでの検討

ブラジルはスポーツジム利用の人気が高く、スポーツジム数は世界第2位、スポーツジムユーザーは900万人以上に上る。スポーツジム人気の高まりはサプリメントの利用者の増加にもつながり、とくに医薬品と異なり処方箋や薬剤師の指導が不要なことから、適切でない摂取がなされることも少なくないと考えられている。それにより、体内からの排泄経路にあたる肝臓または腎臓に過剰な負担が生じることも想定されることから、その実態を明らかにすることを目的にこの横断研究が行われた。

アナボリックステロイド利用者は除外して解析

研究対象は同国内31カ所のスポーツジムに通う18歳以上のスポーツジムユーザー。妊婦や肝疾患、腎疾患患者、肝機能や腎機能に影響を及ぼし得る薬剤の服用者、および、アナボリックステロイド(蛋白同化ステロイド)の利用者を除外した594名(男性266名、女性328名)。このうち、血液検査にも同意したのは242名(男性114名、女性128名)だった。

対象者には、年齢、性別、教育歴、ふだんの運動習慣、サプリメント摂取状況などに関するアンケートに回答してもらった。また、血液検査に同意した対象者に関しては10~12時間絶食後に採血し、肝機能のマーカーとして、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アルカリホスファターゼ(ALP)、γ-グルタミルトランスフェラーゼ(γ-GT)を、腎機能のマーカーとして、クレアチニン、尿素を測定した。

肝/腎機能マーカーの一部に有意差

結果について、まず、アンケートの回答から把握された、サプリメントの利用状況をみてみる。

ほほ半数は自己判断に近い方法でサプリを利用。男性はとくに多い

アンケートに回答した594人は平均年齢37±14歳で、BMI25.33±4.13、体脂肪率29.11±9.30%。

全体の36.0%がサプリメントを利用していた。性別の比較では、男性は利用者率42.5%、女性は31.1%で男性で高く(p=0.02)、男性では5種類以上のサプリ利用者が8.3%を占めていた。

サプリ利用者のうち、栄養士の指示等を受けていたのは27.7%、医師の処方等を受けていたのは11.7%、コーチの指導等を受けていたのは10.8%であり、32.4%は自己判断で利用していた。また、その他の17.4%は、インターネットや友人の情報、サプリメント店の販売員または薬剤師の勧めをもとに利用していた。性別にみると、男性は自己判断での利用が42.5%であり、女性の21.0%の2倍以上を占めていた。

利用しているサプリの種類としては、ホエイプロテインが利用者率24.4%と約4人に1人が利用していた。その他、ビタミン/ミネラルが12.1%、分岐鎖アミノ酸(BCAA)12.1%、クレアチン3.9%、マルトデキストリン3.0%と続いた。

サプリ利用目的は、筋量増加が24.4%、筋疲労リカバリー13.1%、健康のため9.1%、パフォーマンスのため8.4%だった。

サプリユーザーはASTや尿素レベル高値に該当する頻度が高い

次に、血液検査の結果をみてみる。

各検査値の基準値を超過していた人の割合は、評価したマーカーのうち、AST以外はサプリメント利用の有無で有意差がなかった。ただしASTについては、サプリ非利用者で基準値を超えていた人の割合が6.9%なのに対して、サプリ利用者でのその割合は17.3%であり、後者が有意に高かった(p=0.012)。

次に、各検査値の高値を目的変数、サプリの利用を説明変数とし、年齢と性別で調整した回帰分析を実施。その結果、サプリの利用はAST高値(OR2.57〈95%CI;1.09~6.07〉)や尿素レベル高値(OR1.89〈95%CI;1.01~1.19〉)と有意な関連が認められた。調整因子に教育歴を追加すると、ASTに関しては有意性が消失したが、尿素レベルは依然、有意性が維持されオッズ比は3を超えた(OR3.04〈95%CI;1.20~7.66〉)。

因果関係は不明ながらモニタリングは必要か

上記の結果をもとに著者らは、「サプリメントを利用しているスポーツジムユーザーは、ASTと尿素にわずかな変化を示す確率が高いことが示された。これらの結果は、サプリ摂取が腎臓や肝臓にダメージを与えるという因果関係を示してはいないが、この集団の疾患予防と健康増進にかかわる医療従事者へ注意喚起を促すものである可能性がある。健康維持のために適宜、肝/腎機能マーカーのモニタリングが必要かもしれない」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Liver and kidney function markers among gym users: the role of dietary supplement usage」。〔Br J Nutr. 2021 Sep 13;1-20〕
原文はこちら(Cambridge University Press)

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