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スポーツにおける植物性タンパク質の可能性 動物性タンパク質との違いは? ナラティブレビュー

植物性タンパク質は、アミノ酸スコアなどの点で動物性タンパク質よりも下位に位置付けられることが少なくない。しかし近年、植物性タンパク質の重要性を見直す機運が高まっている。例えば、癌や糖尿病、心血管疾患リスクとの関連で、あるいは社会の持続可能性という点で植物性タンパク質の優位性が注目されつつある。スポーツの領域でも、再評価の動きがみられる。今回は、主にスポーツ領域での植物性タンパク質の可能性に関するナラティブレビュー論文を紹介する。

スポーツにおける植物性タンパク質の可能性 動物性タンパク質との違いは? ナラティブレビュー

文献レビューにより、植物性タンパク質の可能性を再評価

適切な量のタンパク質摂取は、筋肉量の維持や増加に重要。アスリートのパフォーマンス向上やリカバリー戦略、あるいは高齢者のサルコペニアの予防・改善などでもタンパク質摂取がポイントとなる。アスリートの場合、トレーニング効果を最大化するために、推奨摂取量(recommended dietary allowance;RDA)を満たすことが重視され、かつ、RDAを超える量の摂取もしばしば行われる。タンパク質摂取の際、必須アミノ酸を摂り入れることが重視されやすく、結果的にアミノ酸スコアの高い動物性タンパク質のほうが優先摂取されることが多い。

しかし近年、植物性タンパク質からでも、筋タンパク質合成(muscle protein synthesis;MPS)に重要なロイシンを十分摂取することは可能であることを示唆する複数の研究結果が報告され、持続可能な開発目標(sustainable development goals;SDGs)や疾患予防の観点からも植物性タンパク質が見直されている。現在、世界中で摂取されているタンパク質の約6割は植物由来であり、世界で推定40億人は植物性食品ベースの食事を送っているという実態もある。

本研究では、PubMed、Medline、Google Scholar、EBSCO-hostなどの文献データベースを使用して既報論文を検索し、ナラティブレビューが行われた。文献の選択基準は、ヒトを対象とする研究であり、植物性タンパク質に加え比較対照とするもう1つの栄養素の摂取条件が設定されていること。短期的な介入と長期的な介入の双方を検索対象とした。

検索キーワードとして、タンパク質、運動、植物、オート麦、ジャガイモ、小麦、大豆、米、エンドウ豆、動物、ホエイ、カゼイン、牛肉、筋力トレーニング、筋力、体組成、MPSを用いた。検索でヒットした論文の参考文献もスクリーニング対象に組み入れた。

植物性タンパク質のスポーツにおける急性効果と慢性効果

植物性タンパク質の急性効果

スポーツ領域でタンパク質の品質を評価する際に重視される作用の一つは、摂取後のMPSの速度調節能と言える。トレーニング後の単回摂取または最大2週間摂取するなど複数の研究から、安静時にはホエイプロテインがカゼインや大豆プロテインと比較して、摂取直後により強力な同化作用を引き起こす可能性が示されている。

一方、運動後にもホエイプロテインは大豆とカゼインプロテインよりも強くMPSを刺激するが、大豆とカゼインの比較では大豆プロテインのほうが、よりMPSの刺激が強いことが報告されている。ただし、他の複数の報告をあわせて考えると、安静時と運動後の双方のMPS刺激に関しては大豆摂取に比較し動物性タンパク質(ミルク、ホエイ、カゼイン)の優位性が認められる。

植物性タンパク質の慢性(長期的)効果

8~12週間程度の比較的長期間の介入を行った研究からは、設定されていたロイシンを含む必須アミノ酸の摂取量が研究デザインどおりに遵守された場合、植物性タンパク質は体組成(除脂肪体重)や筋力に対して動物性タンパク質と同程度に影響をもたらすことが示唆されている。ただし、長期間の介入といってもその期間は8~12週間であり、植物性食品のみの摂取で、必須アミノ酸の設定摂取量を維持できるかという課題もある。

介入期間が9カ月に及ぶ研究が1件報告されていた。ワークアウト後に大豆プロテインを摂取した群は、ホエイプロテイン摂取群に比較し除脂肪体重の増加幅が少なく、有意差がみられたとのことだ。

植物性タンパク質のリカバリーへの影響

運動後のリカバリーの視点で植物性タンパク質摂取について検討した研究は、4件存在した。そのうち1件は、男性サッカー選手の持久力トレーニング後の回復を、大豆プロテインとホエイプロテインで比較し、両者に運動誘発性筋損傷や酸化ストレスマーカーの動態に差はないと結論づけている。他の研究では、プラセボと比較しオート麦タンパク質摂取によって、筋力、膝関節可動域、垂直ジャンプの低下が抑制され、下肢浮腫の軽減も認められると報告している。

一方で、ホエイプロテインは筋損傷マーカーを抑制するが、エンドウ豆プロテインではプラセボと有意差がないという報告もある。リカバリー戦略における植物性タンパク質と動物性タンパク質の相違の有無に関しては、さらなる研究が必要とされる。

本研究では上記のほかに、高齢者の筋量・筋力への影響や、同化作用への影響を検討した研究に関しても考察も加えている。高齢者では食欲低下が関連し、植物性食品から十分な量のタンパク質を摂取することが困難になるといった課題も指摘している。

結論としては、「世界的な植物性食品摂取量の増加、健康への好ましい影響、SDGsを考慮すると、植物性タンパク質摂取への関心は今後より一層高まるだろう。スポーツ領域での植物性タンパク質に関するエビデンスも目覚ましい勢いで増加しており、その多くは、有効量を摂取した場合、MPSや筋力、体組成、リカバリーなどに関連する好ましい変化を引き起こす可能性があることを示している」とまとめられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Plant Proteins and Exercise: What Role Can Plant Proteins Have in Promoting Adaptations to Exercise?」。〔Nutrients. 2021 Jun 7;13(6):1962〕
原文はこちら(MDPI)

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