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β-アラニン+L-アルギニン+ブラッククミンで、イラン軍士官候補生のパフォーマンスが改善

イラン軍の士官候補生が参加した二重盲検無作為化比較試験の結果、β-アラニン、L-アルギニン、およびブラッククミン(ブラックシード、ニゲラサティバ)から成る栄養バーの2週間の摂取によって、嫌気性パフォーマンスに有意差が生じ、高感度CRPやTNF-αの動態にも相違が生じたという研究結果が報告された。

β-アラニン+L-アルギニン+ブラッククミンで、イラン軍士官候補生のパフォーマンスが改善

世界の軍人の55%以上がサプリメントを使用している

軍人には高い精神的・肉体的パフォーマンスが要求される。その要求を満たすうえで、栄養状態が少なくない役割を果たすことから近年、軍関係者の間でサプリメントへの関心が高まっている。世界の軍人の55%以上がサプリメントを使用しているとする報告もある。軍人がサプリメントを使用する場合、その目的は栄養不足を補うためではなく、パフォーマンスを向上させるためである。

今回の研究で使われた3種類のサプリメントのうち、L-アルギニンは一酸化窒素の産生を高めて血管拡張を促し、筋肉への血流を増加させるとされ、アスリートの間でも人気のサプリメント。またβ-アラニンは骨格筋のカルノシン前駆体として作用し、やはりアスリートに人気。これらはアスリートのパフォーマンスを高め得るとの複数の研究結果が報告されている。

研究で使われたもう1種類のサプリメントであるブラッククミンはブラックシード、ニゲラサティバとも呼ばれ、海外ではそのオイルがサプリメントとして使われている。チモキノンやジチモキノンなどの活性化合物を含み、転写因子Nrf1を調節することで抗酸化能を高めるとされる。激しい軍事訓練は活性酸素種の増加につながることから、その抑制が期待される。

54名の士官候補生対象の無作為化二重盲検比較試験

この研究の参加者は、イラン軍の士官候補生の中からボランティアとして募集された。96名が応募し、20代の男性でありBMIが基準値内であることを適格規準、喫煙者、筋骨格系疾患・障害、糖尿病等の代謝性疾患、アレルギーの既往、抗酸化サプリメント・抗炎症薬の使用を除外基準として、54名が採用された。この54名を各27名に無作為に分類し以下の2群に割り付けたうえで、1日あたり300分の軍事訓練を行う2週間のプログラムを行った。

1群には、L-アルギニン、β-アラニン、ブラッククミンオイル各340mgを含む100gの栄養バーを1日3回、1回につき2つずつ配食した。別の1群には、それらを含まない100gの栄養バーを同量配食した。

栄養バーは525Kcalで、炭水化物45%、タンパク質13%、脂質42%であり、両方とも形、色、匂い、味、重量、およびパッケージからは区別がつかないように処理されていた。

無酸素/有酸素パフォーマンスと炎症マーカーを評価

運動パフォーマンスは、嫌気性(無酸素)パフォーマンスとして、10秒の休憩間隔で35mを6回走行するスプリントテストでパワーと疲労指数(fatigue index;FI)を測定。また、有酸素パフォーマンスとして12分間クーパーテストでVO2maxを測定した。

生化学検査では、炎症マーカーとして腫瘍壊死因子-α(TNF-α)と高感度CRPを測定した。

ベースライン時において、これらの値に群間の有意差は認められなかった。

嫌気性パフォーマンスと炎症マーカーの動態に有意な群間差

サプリメント含有栄養バーが配食された「介入群」は、23.41±2.02歳、BMI23.55±1.01、サプリメント非含有の栄養バーが配食された「プラセボ群」は、23.69±1.90歳、BMI24.03±0.93で、いずれも有意差がなかった。

2週間の軍事訓練プログラム中に研究とは関連のない理由で3名(介入群2名、プラセボ群1名)が脱落した。両群ともに有害事象は報告されなかった。

嫌気性パフォーマンス指標の多くは介入群で上昇しプラセボ群は低下

ベースライン時から軍事訓練終了後の2週間で、スプリントテストでのパワーと疲労指数(FI)は、以下のように変化していた。ベースライン時にはすべて群間差が非有意であったものが、一部は有意となっていた。

最大パワー

介入群+44.06±3.98W(p=0.010)、プラセボ群-13.73±3.82W(p=0.221)で、介入群のみ有意に増加。介入後の群間差は非有意。

平均パワー

介入群+12.93±1.53W(p=0.043)、プラセボ群-19.99±1.48W(p=0.001)で、介入群は有意に増加、プラセボ群は有意に低下。介入後の群間差が有意(p=0.038)。

最小パワー

介入群+16.16±1.89W(p=0.006)、プラセボ群-28.93±1.81W(p=0.001)で、介入群は有意に増加、プラセボ群は有意に低下。介入後の群間差は、わずかに非有意(p=0.059)。

疲労指数(FI)

介入群-1.63±0.113W/秒(p=0.026)、プラセボ群0.34±0.108W/秒(p=0.522)で、介入群のみ有意に低下。介入後の群間差は、わずかに非有意(p=0.062)。

VO2maxは両群で有意に改善

一方、有酸素パフォーマンスとしてクーパーテストで測定したVO2maxは、2週間の軍事訓練によって、介入群+3.56±0.111mL/kg/分(p=0.001)、プラセボ群2.78±0.107mL/kg/分(p=0.001)と、両群ともに有意に上昇し、介入後の値に有意差はなかった。

炎症マーカーはプラセボ群で上昇し、介入群は上昇が抑制される

炎症マーカーは以下のように、プラセボ群では上昇し、介入群ではその上昇が抑制されていた。

TNF-α

介入群+0.557±0.106pg/mL(p=0.44)、プラセボ群+2.432±0.102pg/mL(p=0.001)で、介入群は有意な変化がなく、プラセボ群は有意に上昇。介入後の群間差が有意(p=0.023)。

高感度CRP

介入群+0.12±0.043mg/mL(p=0.373)、プラセボ群+0.62±0.041mg/mL(p=0.034)で、介入群は有意な変化がなく、プラセボ群は有意に上昇。介入後の群間差は非有意。

3種類のサプリメントの効果は相加的か相乗的か?

以上から、β-アラニン、L-アルギニン、ブラッククミンの組み合わせの補給が、健康で活動的な被験者の無酸素パフォーマンスおよび運動誘発性炎症に有益な効果をもたらす可能性が示唆された。著者らは、ふだんトレーニングを行ってない対象でも同様の結果が得られるのかを明らかにする検討の必要性を挙げている。また、β-アラニン、L-アルギニン、ブラッククミンの効果が相加的なものか、または相乗的なものなのかの確認、および、より長期間介入した場合の影響の検証も必要と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「The effect of food ration bar enriched with β-alanine, L-arginine, and Nigella sativa on performance and inflammation following intense military training: A double-blind randomized clinical trial」。〔Food Sci Nutr . 2021 May 6;9(7):3512-3520〕
原文はこちら(John Wiley & Sons)

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