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子どものタンパク質摂取推奨量は、本当はもっと多い? 現行の評価方法の限界と新提案

子どものタンパク質摂取必要量に関する、米アーカンソー医科大学の小児科医らによるレビュー論文が発表された。現行の推奨値は窒素バランスに基づいて策定されているが、この方法では摂取量を過大評価し消費量を過小評価している可能性があるという。窒素バランスに基づく推定方法以外に新たな推定方法が開発されており、著者らはそれらの技術による再検討が必要だと述べるとともに、適切な推奨値を設定することの困難さも強調している。

子どものタンパク質摂取推奨量は、本当はもっと多い? 現行の評価方法の限界と新提案

現在の子どものタンパク質摂取推奨量策定の背景

現在の米国の食事摂取基準(dietary reference intakes;DRI)では、子どものタンパク質必要量を4~13歳で0.95g/kg/日、14~18歳で0.85g/kg/日としている。この値は、タンパク質の欠乏を防ぎ、正常な体の成長と発達を確実にするために必要な量として、窒素バランスに基づき策定されたものだ。そして、米国の平均的な子どもたちの摂取量は、この値を満たしていることが報告されている。

ただし、窒素バランス技術では、窒素摂取量を過大評価し排泄を過小評価するとの報告が存在する。その結果として、必要量を過小評価している可能性が考えられる。実際、炭素窒素安定同位体測定により評価すると、子どもの成長と発達をサポートするために必要なタンパク質は、窒素バランス法での必要推定量に比較して大きい。

現在の摂取推奨量は身体活動量が考慮されていない

また、前記のDRIは身体活動を考慮していない。単純に考えて、身体的に活動的な子どもはそうでない子どもより、多くのタンパク質を必要とする。ただ、現在の摂取推奨量で身体活動を増やすことが、子どもの正常な成長を妨げるかどうかは明らかでない。より具体的には、激しい運動に参加している子どもの筋タンパク質代謝回転率に関するデータはない。しかし8~10歳の小児がレジスタンストレーニングを開始した6週間後に、タンパク質代謝回転が低下したとの報告がみられる。これは、身体活動に必要なエネルギー量を摂取していないことの結果として、タンパク質代謝回転のダウンレギュレーションが生じたことを示している可能性がある。

エビデンスの不足により生じる可能性のある、全身のタンパク質代謝回転に対する身体活動の影響について、現時点で結論を出すことはできない。今後は、身体活動量の多い子どもと少ない子どもでタンパク質の必要量を複数の評価法を用いて比較検討する研究が必要とされる。

子どものタンパク質代謝を評価する方法

成人の栄養素必要量は、欠乏を防ぐための最低限の継続的な毎日の摂取量だが、子どもの場合は正常な成長と発達をサポートするのに十分な量である必要がある。

必要なタンパク質摂取量の評価方法として、窒素バランス技術を用いる方法のほかに、指標アミノ酸酸化(indicator amino acid oxidation;IAAO)法や、安定同位体標識クレアチン(D3-creatine)を用いる方法などがある。

本論文では、それらの測定法について詳細に解説し、それぞれに一長一短があることを紹介している。例えばIAAO法は、検体が尿と呼気であるため採血等が必要な手法よりも低侵襲であること、妊婦や子どもなどの脆弱な集団にも使用できることなどの長所があるという。一方で窒素バランス技術を用いる方法とは反対に、必要量を過大評価する可能性があるとのことだ。このIAAO法で推定される6~10歳の子どものタンパク質摂取必要量は、1.55g/kg/日に近く、前述の現行DRIの推奨との乖離が大きい。

「正常な成長とは何か」という疑問

ところで米国の現在の標準成長曲線は、米疾病対策センター(centers for disease control and prevention;CDC)が年齢別の身長と体重の成長チャートに基づくものであり、この成長チャートの作成に使用されたデータは、1963~1994年の5つの全国調査のデータである。つまり、その成長曲線は米国の子どもの傾向を示したものであり、「正常な成長」を示したものだと断定することはできない。可能性として、米国の子どものタンパク質摂取量が増えれば、「正常な成長」は上方へシフトすることも考えられる。

さらに、身体活動によっても「正常な成長」が促進されるかもしれない。それらの結果、より上方にシフトした「正常な成長」を適えるために、より多くのタンパク質摂取を推奨する必要性が生じるのだろうか。著者らはそのような疑問を投げかけ、「正常な成長とは何を意味するかを定義することが非常に重要だ」と述べている。

また、この問題を考慮する際には、成長のためのエネルギー摂取による子どもの健康への悪影響も考慮する必要があるという。つまり、タンパク質の摂取量を増やすために食事量を増やすとエネルギー摂取量が増え、肥満傾向になることがあり、子どもの肥満は既に公衆衛生上の大きな問題となっているからだ。

結論:複数の手法で必要なタンパク質摂取量を検討すべき

子どもの成長と発達をサポートするために、現行のDRIは窒素バランス技術に基づく推定から、4~13歳には0.95g/kg/日、14~18歳には0.85g/kg/日のタンパク質摂取を推奨している。一方で新しい技術であるIAAOに基づく推奨栄養所要量(recommended dietary allowance;RDA)は、6~10歳で約1.55g/kg/日に近い可能性が示される。さらに、身体活動が活発な子どもに対しては、より摂取量を増やす必要があるかもしれない。

成長が正常に行われるためのタンパク質要件をより正確に策定するにあたり、複数の新しい技術を併用して検討することが、実行可能な手段の一つと言える。

文献情報

原題のタイトルは、「Dietary Protein Requirements in Children: Methods for Consideration」。〔Nutrients. 2021 May 5;13(5):1554〕
原文はこちら(MDPI)

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