黄色のキウイフルーツがアスリートの抗酸化能を高める可能性 女子栄養大
キウイフルーツがアスリートの高強度トレーニングに伴う酸化ストレスを抑制するのに役立つ可能性が報告された。女子栄養大学栄養学部栄養生理学の上西一弘氏らの研究によるもので、「Sports」に論文が掲載された。なお、この研究では、黄色(サンゴールド)のキウイフルーツが用いられており、この‘色の違い’が重要なポイントのようだ。
抗酸化ビタミンが豊富なキウイで、アスリートの酸化ストレスを緩和し得るか?
適度な運動が健康に良いことは確かだが、極めて高強度の運動では酸化ストレスの負荷が亢進し、健康やアスリートのパフォーマンスに対してマイナスに作用する可能性がある。この酸化ストレスの影響を抑えるために、体内の抗酸化能を高める戦略が必要とされる。その戦略の一つとして、抗酸化ビタミンであるビタミンCやEの摂取が推奨されている。
果物は一般的にビタミンCやEが豊富であり、とくにキウイフルーツはそれらのビタミンがより豊富な果物として知られている。そのキウイフルーツにも、色が緑のタイプと黄色のタイプがあり、後者は前者に比べてビタミンCは約2倍、ビタミンEは1.5~2倍程度多く、より高い抗酸化能が期待される。今回の研究は、この黄色のキウイフルーツ(サンゴールド)を用いて行われた。
2つの検討でキウイの抗酸化能を評価
この研究は、検討1と検討2の2段階からなる。検討1では対象を2群に分け、黄色キウイフルーツを摂取する群としない群での抗酸化能を比較。検討2では、酸化ストレスが亢進しているアスリートのみを対象とし、黄色キウイフルーツ摂取による酸化ストレスレベルの変化を検討した。
いずれの検討においても、抗酸化活性は生物学的抗酸化力である「BAP(biological antioxidant potential)」を評価。BAPの値が高いほど、抗酸化活性が高いことを意味する。一方、酸化ストレスは「d-ROM(diacron-reactive oxygen metabolites)」で評価。d-ROMの値が高いほど、酸化ストレスが亢進していることを意味する。
また、BAPとd-ROMの比である「BAP/d-ROM」を算出し、総合的な酸化-還元状態を評価した。
検討1:キウイ摂取の有無で酸化ストレス関連マーカーに差が生じるか?
検討1の対象は、大学で陸上競技(中~長距離)を行っている男性アスリート30名(20.5±0.8歳)。15名ずつの2群に分け、1群には黄色キウイフルーツを1カ月間にわたり、1日2個摂取してもらった。黄色キウイ2個は、エネルギー量96kcalで、ビタミンCが261mg、ビタミンEは2.3mg含まれている。
他の1群は通常の食事を続けてもらった。両群ともに学生寮で生活し、朝食と夕食は管理栄養士が管理した食事を摂取していたため、キウイフルーツ摂取以外の栄養状態は類似したものと考えられた。
キウイ摂取群でd-ROMが低下し、BAP/d-ROMは上昇
ベースライン時の平均BMIは19.4±0.9、体脂肪率10.9±2.7%、除脂肪体重51.7±4.1kgだった。これらの体組成パラメーターは、BAP、d-ROM、およびBAP/d-ROMのいずれとも、有意な関連は認められなかった。
黄色キウイ摂取群ではd-ROMが、ベースライン時に270±35U.CARRであったものが1カ月後には247±25U.CARRと有意に低下していた(p<0.01)。一方、非摂取群では同順に249(225~286)U.CARR、244(225~292)U.CARRであり、有意な変化はなかった。BAPに関しては両群ともに有意な変化はなかった。
BAP/d-ROMは、黄色キウイ摂取群がベースライン時7.1(6.9~8.2)、1カ月後8.7(7.3~9.8)と有意に上昇し(p<0.05)、非摂取群は同順に8.1±1.2、8.5±1.4であり、有意な変化がなかった。この結果から、黄色キウイ摂取によって酸化亢進状態が緩和された可能性が示唆された。
検討2:酸化ストレスが高いアスリートで、キウイ摂取に効果が認められるか?
検討2の対象は、長距離男性アスリート20名。年齢20.4±1.0歳で、BMI19.7±0.8、体脂肪率10.7±2.5%、除脂肪体重51.8±3.8kg。BAP/d-ROMの平均が7.3±0.7であり、酸化が亢進した状態にあるアスリートを多く含む集団だった。
全員に黄色キウイを1日2個摂取してもらい、2カ月間にわたり酸化ストレス関連マーカー、および筋損傷のマーカーであるCKとLDHの推移を評価した。
BAP/d-ROMは2カ月間にわたり上昇し、CKとLDHはいったん上昇後に低下
BAPはベースライン時が2,127(2,087~2,216)μmol/L、1カ月後に2,207(2,069~2,241)μmol/L、2カ月後2,246(2,179~2,338)μmol/Lであり、2カ月後はベースライン時より有意に高値であり(p<0.01)、抗酸化活性の上昇が認められた。d-ROMは同順に293(275~310)U.CARR、268(248~283)U.CARR、280(262~291)U.CARRとなり、1カ月後はベースライン時より有意に低値だった(p<0.01)。
BAP/d-ROMは、7.5(6.9~7.8)、8.0(7.5~8.7)、8.2(7.4~8.8)と経時的に上昇。1カ月後の値と2カ月後の値はベースライン時に比較してともに有意に高く(いずれもp<0.01)、抗酸化作用が継続して発揮されていることが示された。
一方、筋損傷のマーカーであるCKは、ベースライン時277(201~467)U/Lだったものが、1カ月後に757(465~1,044)U/Lと有意に上昇していた(p<0.001)。ただし、2カ月後には468(307~620)U/Lと、ベースライン時と有意差がないレベルに低下した。LDHの変動もCKと同様であり、ベースライン時220(197~259)U/Lから1カ月後に241(224~295)U/Lへといったん有意に上昇(p<0.01)。2カ月後に238(207~263)U/Lと、ベースライン時と有意差がないレベルに低下した。
酸化ストレスに関与する他の因子も考慮した関連の解明が今後の研究テーマ
以上一連の結果から著者らは、「酸化ストレスが亢進している男性長距離ランナーが、1日に2個の黄色キウイフルーツを摂取すると抗酸化能が改善される」と結論付けている。一方、本研究の限界点として、酸化ストレス関連マーカーに影響を与え得る運動量や睡眠時間、および栄養摂取状況が評価されていないことなどを挙げ、「再現性の確認のための追試が必要」と述べている。
文献情報
原題のタイトルは、「The Intake of Kiwifruits Improve the Potential Antioxidant Capacity in Male Middle- and Long-Distance Runners Routinely Exposed to Oxidative Stress in Japan」。〔Sports (Basel). 2021 Mar 3;9(3):37〕
原文はこちら(MDPI)