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運動は免疫を強化する時と弱める時がある その違いは感染から運動までの経過時間か 京都大学

2021年07月07日

マラソンなどの長時間の激しい運動が、血中の免疫細胞動態を変化させ、抗ウイルス免疫の「増強」にも「減弱」にも作用し得ることが、動物モデルを使った実験で明らかにされた。京大の研究グループによる成果で、「Journal of Allergy and Clinical Immunology」に論文が掲載されるとともに、同大学のサイトにニュースリリースが掲載された。運動の負荷の違いのみでなく、運動のタイミングも免疫能にとって重要なポイントのようだ。

運動は免疫を強化する時と弱める時がある その違いは感染から運動までの経過時間か

研究結果の要旨:運動ストレスによるステロイド分泌からの連鎖

これまで、長時間の激しい運動後に風邪をひきやすくなるなど、運動が抗ウイルス免疫を低下させる可能性が指摘されていたが、明確な結論やメカニズムは不明だった。本研究では、マウスのヘルペスウイルス感染症モデルを用いて、運動が抗ウイルス免疫に及ぼす影響が、ウイルスに曝露されてから運動までのタイミングに依存して変動することを明らかにした。

研究では、運動中にステロイドホルモンであるグルココルチコイド※1が産生され、血液中のpDC※2という免疫細胞が一過性に骨髄に移動して、血液中のpDC数は一過性に減少し、その後、逆に一過性に増加することがわかった。これら血中pDC数の一過性の低下と増加に応じて、抗ウイルス免疫は一過性に低下し、増強した。

※1 グルココルチコイド:副腎皮質から産生されるホルモンの一つ。抗炎症作用や免疫抑制作用、抗アレルギー作用などを持つ。
※2 pDC:形質細胞様樹状細胞(plasmacytoid dendritic cell)の略。樹状細胞のサブセットの一つでウイルス感染時にウイルスへの攻撃の役割を果たすインターフェロンを多量に産生する細胞集団のこと。

本研究の概要図

運動は免疫を強化する時と弱める時がある その違いは感染から運動までの経過時間か

運動ストレスによりグルココルチコイドが産生され、血液中のpDCが骨髄に移動し、血液中の細胞数が減少する。これにより感染部位に浸潤する細胞数が減少し、抗ウイルス免疫が減弱し感染が悪化する。一方で、運動6~12時間後に血液中のpDC細胞数は上昇し感染部位に浸潤する細胞数が増加し、抗ウイルス免疫が増強し感染が改善する
(出典:京都大学)

研究の背景:運動は免疫を強めるのか弱めるのか?

マラソンなどの長時間の激しい運動後にランナーが風邪をひきやすくなるといったことから、激しい運動は抗ウイルス免疫を低下させる可能性が多く報告されてきた一方で、運動をしている人のほうが逆に風邪をひきにくいというデータもあり、長時間の激しい運動が抗ウイルス免疫に良い影響を及ぼすのか、悪い影響を及ぼすのかについては長年議論されてきた。

また、激しい運動をすると血液中の白血球数が一過性に変動することも知られていたが、その変動が抗ウイルス免疫にどのように関連するのかは不明だった。

これを背景として、研究グループでは、激しい運動が抗ウイルス免疫に対して良いのか悪いのかについて検討し、さらにそのメカニズムを解明することを試みた。

研究手法と成果:感染から運動までの時間により、免疫への正反対の影響

マウスにヘルペスウイルスを腟感染させ、その後、激しい運動をさせることが、ウイルス感染症状にどのように作用するかについて、さまざまな条件で検討した。

その結果、ウイルスを感染させてから8時間後に長時間の激しい運動をさせたマウスでは抗ウイルス免疫が増強してヘルペスウイルス感染症状は軽減した。一方、ウイルス感染させてから17時間後に長時間の激しい運動をさせたマウスでは、逆に抗ウイルス免疫が低下して、ヘルペスウイルス感染症状が増悪することがわかった。

運動による血液中の免疫細胞の変動を調べると、運動中にpCDという抗ウイルス免疫に働く免疫細胞が血液中から骨髄へ移動し、血液中のpDC数が一過性に減少した。その結果、感染局所に浸潤するpDC数が低下し、十分なウイルス防御能が発揮できず、感染症が悪化することがわかった。

一方で、運動終了から6~12時間後には、血液中のpDC数は一過性に上昇し、感染局所へのpDC浸潤数も増加して、ウイルス防御能が増強され、感染症が改善することがわかった。また、これらのpDCの血液中での挙動は運動中に産生されるグルココルチコイドが原因であることも明らかになった。

この研究成果により、マラソンなどの長時間の激しい運動が抗ウイルス免疫に及ぼす影響とそのメカニズムの一部が解明された。

波及効果、今後の予定:ヒトでも同様の現象が起こっているか?

著者らは、「運動が健康に与える影響を理解するうえで、本研究結果は重要な意義をもつと考えられる」と述べている。

また、運動が抗ウイルス免疫に与える影響は、ウイルス曝露からのタイミングによって正にも負にも作用し得ることが示されたことから、「運動により抗ウイルス免疫を効果的に増強させる治療・予防戦略に応用できる可能性がある」とし、「ヘルペスウイルス以外のウイルス感染症での検討や、ヒトでも同様の現象が起きているのかを確認する必要がある」と今後の研究の方向性を記している。

関連情報

運動は抗ウイルス免疫を正負に変動させることを発見 -ウイルスに打ち勝つ効果的な運動タイミング-(京都大学)

文献情報

原題のタイトルは、「Prolonged high-intensity exercise induces fluctuating immune responses to herpes simplex virus infection via glucocorticoids」。〔J Allergy Clin Immunol. 2021 May 7;S0091-6749(21)00724-7〕
原文はこちら(PubMed)

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