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日本人女性ではビタミンの摂取量が身体的QOLと正相関し、一部は精神的QOLとも相関

日本人を対象とする研究から、女性ではビタミン摂取量が多いほど身体的QOLが高いという有意な関連が認められた。一方、男性ではそのような関連は認められないという。金沢大学医薬保健研究域医学系環境生態医学・公衆衛生学の成川暢彦氏らの研究結果であり、「Nutrients」に論文掲載された。

日本人女性ではビタミンの摂取量が身体的QOLと正相関し、一部は精神的QOLとも相関

志賀町研究のデータを横断的に解析

成川氏らの研究は、石川県志賀町で行われている生活習慣病に関する住民対象研究「志賀町研究」のデータを用いた横断研究として実施された。

志賀町研究は、同町の人口の約半数が居住するモデル地区の住民を対象としている。モデル地区の住民は5,013人で、そのうち4,724人が研究参加に同意。今回の研究では、「SF-36」というQOL評価のためのアンケートに回答した40~99歳の3,202人を解析対象とした。平均年齢は、男性が63.3歳、女性は64.5歳だった。

SF-36は、過去4週間の8つの健康指標(身体機能、体の痛み、活力、社会的機能など)をアンケートの回答を基に判定するもので、国際的に頻用されており、疾患の有無にかかわらず評価可能であることが検証されている。100点満点で評価し、点数が高いほどQOLが高いと判定される。本研究では、それら8つの指標を「身体的スコア」、「精神的スコア」、「役割/社会的スコア」という3つの要約スコアに統合。男性、女性ごとに各スコアの高値群と低値群に二分し、ビタミン摂取量との関連を検討した。

ビタミン摂取量は、食事アンケートの回答から把握。14種類のビタミン摂取量を推計し、レチノールについては活性当量も評価した。なお、摂取エネルギー量が600kcal/日未満または4,000kcal/日以上の場合は解析対象から除外し、またサプリメントからの栄養素摂取は評価しなかった。

女性では、すべてのビタミンの摂取量が身体的QOLと正相関する

解析に際して、QOLに影響を与え得る因子(年齢、BMI、喫煙・飲酒・身体活動習慣、糖尿病・高血圧・脂質異常症の治療など)で調整後に、男性と女性とを比較すると、身体的スコア(45.97±12.41 vs 42.92±14.78,p=0.000)と役割/社会的スコア(49.8±12.27 vs 48.27±13.14,p=0.001)は男性のほうが有意に高く、精神的スコア(51.3±9.72 vs 51.77±9.91,NS)は有意差がなかった。

SF-36スコア高値群/低値群のビタミン摂取量を性別に比較した結果

身体的スコア

男性を身体的スコアの高値群と低値群に二分した場合、評価した14種類のビタミン摂取量は、すべて有意差がみられなかった。一方、女性では、スコア高値群のほうが、レチノール、レチノール活性当量、ビタミンK、B2、ナイアシン、B6、B12、葉酸、パントテン酸、ビタミンCの摂取量が有意に多く、β-カロテン、ビタミンD、α-トコフェロールは有意差がなかった。

精神的スコア

男性を精神的スコアの高値群と低値群に二分した場合、ビタミンB2のみ、スコア高値群の摂取量が有意に多く、他の13種類のビタミン摂取量は有意差がなかった。女性では、ナイアシンとビタミンB6について、スコア高値群のほうが摂取量が有意に多かった。

役割/社会的スコア

役割/社会的スコアについては、男性、女性ともに、スコアの高値で二分しても、摂取量に有意差のあるビタミンはなかった。

SF-36スコアを目的変数、ビタミン摂取量を説明変数とする重回帰分析の結果

続いて、前記の解析でSF-36スコアの高低により、何らかのビタミン摂取量に有意差がみられた身体的スコアと精神的スコアについて、それらを目的変数、ビタミン摂取量を説明変数とする重回帰分析を行った。

身体的スコア

男性は身体的スコアとビタミン摂取量との間に有意な関連は認められなかった。反対に女性では14種類すべてのビタミンについて、摂取量が多いほど身体的スコアが高いという有意な相関が認められた。相関係数が高いビタミンは、葉酸(β=0.127)、ビタミンC(β=0.120)、ビタミンB2(β=0.119)、ビタミンK(β=0.108)、パントテン酸(β=0.108)などだった(すべてp=0.000)。

精神的スコア

男性は精神的スコアについても、ビタミン摂取量との間に有意な関連は認められなかった。女性では、ビタミンC(β=0.087,p=0.001)、ビタミンB6(β=0.085,p=0.002)、葉酸(β=0.081,p=0.003)の摂取量が多いほど精神的スコアが高いという有意な正相関が存在した。

ビタミン不足は女性のQOLを低下させる可能性がある

著者らは本研究を、「大規模データに基づきビタミン摂取量とQOLの関連を性別に検討した初の研究」と位置付けている。一方、研究の限界点として、ビタミン摂取量の評価が自記式食事記録に基づく推計値のため精度が高くないこと、横断研究であるため無因果関係には言及できないことを挙げている。それら解釈上の制限はあるものの、結論を「ビタミン不足により女性のQOLが低下する可能性がある」とまとめている。

文献情報

原題のタイトルは、「Relationship between Vitamin Intake and Health-Related Quality of Life in a Japanese Population: A Cross-Sectional Analysis of the Shika Study」。〔Nutrients. 2021 Mar 22;13(3):1023〕
原文はこちら(MDPI)

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