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アスリートのFODMAP摂取と消化器症状との関係 非IBSでもパフォーマンスに影響か

持久系アスリートにみられる過敏性腸症候群と同様の消化器症状と、発酵性オリゴ糖、二糖、単糖、およびポリオール(FODMAP) の摂取との関連を調査した研究結果が報告された。論文の著者らは、「FODMAPの摂取が、運動中に発生する消化器症状に寄与している可能性がある」とまとめている。

アスリートのFODMAP摂取と消化器症状との関係 非IBSでもパフォーマンスに影響か

FODMAP(フォドマップ);発酵性の糖類のこと。オリゴ糖(Fermentable Oligosaccharides)、二糖類(Disaccharides)、単糖類(Monosaccharides)、ポリオール(Polyols)の頭文字をとった略称。過敏性腸症候群の治療のための食事療法のひとつ。

IBS治療のための低FODMAP食は、アスリートの消化器症状に有効か?

アスリートが経験する胃腸の痛みや腹部膨満感、下痢などの症状は、機能的消化器障害である過敏性腸症候群 (irritable bowel syndrome;IBS)の症状と類似している。アスリートの10~20%はこれらの症状を有していると言われ、例えば米国からは、マラソンやウルトラマラソン、トライアスロンのアスリートの9.8%がIBSと診断されているか、または機能性消化器障害に関する国際診断基準作成組織であるRomeIIIのIBS基準を満たしていると報告されている。またIBSとの診断はされていないアスリートにも、IBS類似症状を抱えているアスリートは少なくないと考えられる。

IBSに対しては、低FODMAP食が有効とされる。低FODMAP食では、発酵性が高い食品、発酵性オリゴ糖、二糖、単糖およびポリオールを控える。これによりIBS患者の最大70%程度に症状改善がみられることが示されている。

アスリートの消化器症状の発現には、機械的、心理的、生理的な要因が関連していると考えられ、それらの多くはアスリートである以上、修正が困難なことが多い。しかし食事摂取はアレンジが可能だ。実際に、アスリートはFODMAPを意識せずに摂取を抑制している傾向があるとの報告もみられる。しかし、アスリートのFODMAPの習慣的な摂取状況を調査した研究は少ない。本論文の著者らは、オンライン調査によりこの点を検討した。

アスリートの約3人に1人が何らかの食事スタイルを実践

調査に回答したのは、マラソン、ウルトラマラソン、トライアスロン、ハーフトライアスロンに参加している計430人の持久系アスリート。IBSに類似した消化器症状を呈する疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病、H.pylori感染症、セリアック病)と診断されているアスリートは解析から除外した。

430人の34.7%のアスリートが、少なくとも1種類の何らかの食事療法を実施していると回答し、65.3%は特定の食事療法をしていないと回答した。実施している食事療法のタイプとしては、ベジタリアン食、グルテン除去食、パレオ食(旧石器時代食)などが多くを占めた。

「トレーニングや競技のために栄養戦略はどの程度重要か」との質問に対して、66.0%が「非常に重要」、23.3%が「ある程度重要」と回答した。競技参加前日の食事内容については、65.5%が高FODMAP(ピザ、パスタ、パン、ポテト、アボカド、ヨーグルトなど)であり、87.2%は高FODMAPの可能性の高い食事内容と考えられた。また、競技当日の朝食では同順に62.3%、85.1%という割合だった。

消化器症状のあるアスリートは実際にFODMAP摂取量が多い

430人中73人が、FODMAPの摂取量をより詳細に把握可能なアンケートにも回答した。回答者の特性は、女性が57.5%、18~29歳が23.3%、30代31.5%、40代24.7%で、人種/民族はコーカソイドが90.4%であり、IBSと診断されているアスリートが17.8%含まれていた。

参加種目(複数選択)はマラソン80.8%、ウルトラマラソン31.5%、ハーフトライアスロン54.8%、トライアスロン34.2%。競技レベルは、ビギナーやアマチュアレベルが49.3%、競技会参加レベルが47.9%、エリートまたはプロが2.7%。BMIは78.1%が18.5~24.9の範囲にあり、19.2%が25.0以上、2.7%が18.5未満だった。

平均26g/日のFODMAPを摂取

1日あたりのFODMAPの摂取量は平均26.1±15.9g/日だった。より詳しくは以下のとおり。

オリゴ糖は平均4.4±2.3g/日、中央値3.8g/日、ラクトース(二糖)は平均13.5±13.8g/日、中央値11.4g/日、フルクトース(単糖)は平均5.0±6.6g/日、中央値2.9g/日、ポリオールは平均3.3±2.4g/日、中央値2.5g/日で、FODMAP合計で平均26.1±15.9/日、中央値は23.0g/日。

消化器症状の有無で2群に分けて、FODMAP摂取量を比較

次に、消化器症状の有無で2群に分け、各群のFODMAP摂取量の中央値を比較するという検討を行った。休息日、トレーニング期間、試合当日の便秘と、トレーニング中の下痢または便意について評価したところ、それらの症状のいずれについても、症状がある群のほうがない群よりも、すべてのFODMAPの摂取量が有意に多いという結果が得られた。

著者らはこの研究の成果として、「FODMAP摂取と消化器症状の関連が示されたが、より重要な発見は、持久系アスリートのFODMAP摂取レベルが、習慣的に、あるいはトレーニングや試合参加の前に全般的に高いことが明らかになった点である」と述べ、「この研究結果は、毎日の食事、試合前の栄養、およびスポーツ栄養食品を用いる際に、パフォーマンスと消化器症状軽減を両立させる戦略として、低FODMAP食を考慮に入れることが有用である可能性を示している」とまとめている。

文献情報

原題のタイトルは、「High Fermentable Oligosaccharides, Disaccharides, Monosaccharides, and Polyols (FODMAP) Consumption Among Endurance Athletes and Relationship to Gastrointestinal Symptoms」。〔Front Nutr. 2021 Apr 20;8:637160〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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