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ストイックな運動習慣と食生活の共通点と相違点を探る 男性は女性よりも相関が強い

健康的な食生活と適度な身体活動が健康増進に有用であることは疑いないが、あまりにストイックに追求すると、栄養失調や体重減少、精神的苦痛、社会的・機能的障害などを来すことがある。前者は「オルトレキシア神経症」、後者は「運動依存症」として、近年、メディアに取り上げられる機会が増えている。

ストイックな運動習慣と食生活の共通点と相違点を探る 男性は女性よりも相関が強い

ただし、両者ともに現段階では精神医学的に独立した精神疾患として認識されておらず、これらの問題のある行動によって生じる有害事象の研究は十分でない。オルトレキシアや運動依存症は、それら自体が疾患なのか、摂食障害や強迫性障害などの他の精神疾患の亜型なのかという点もコンセンサスが形成されていない。

このような状況を背景に行われた本研究は、オルトレキシアと運動依存症の類似点と相違点を探る目的で行われた。

研究の対象と研究手法

ドイツの一般成人約700人のWeb調査

この研究は、ドイツの一般成人を対象に、オンラインプラットフォームを用いたアンケート形式で実施された。著者らが所属する大学のメーリングリスト、ソーシャルメディアの投稿などを通じて回答協力を呼びかけ、2018年12月~2019年4月のアクセス可能期間中に876人が回答に参加。得られた回答の中から、18歳未満や内容が不十分なケースなどを除外し、678人(77.4%)の解析対象とした。

解析対象者の平均年齢は27.7±11.1歳(範囲18~78歳)で、女性が多くを占め(75.5%)、過半数(59.4%)は学生であり、57.9%はパートナーがいると回答した。また、ベジタリアン98人、ビーガン63人、 ポーヨベジタリアン(魚や鶏肉は摂取する)16人が含まれていた。73.2%は、食物不耐性やアレルギーがないと回答した。

オルトレキシアと運動依存症の評価スケールについて

オルトレキシアの評価には「Düsseldorfer Orthorexie Skala;DOS」という指標を用いた。DOSは質問に対する4段階の回答(「自分に当てはまる」は4点、「当てはまらない」は1点)をスコア化し、スコアが高いほどオルトレキシアにみられる行動が多いことを示す。重大なリスクのカットオフ値は30点、25〜29点は中等度のリスク、24点以下をリスクなしとすることが提案されている。

運動依存症は「Exercise Addiction inventory;EAI」という指標で評価した。EAIは6項目から成り、「全く当てはまらない」の1点から「完全に当てはまる」の5点のリッカートスコアで点数化する。カットオフ値は24点、13~23点はリスクを有する状態とすることが提案されている。

オルトレキシアや運動依存症に関連する可能性のある性格特性を、精神医学領域で用いられている「ビッグファイブ理論」に基づく「Big-Five Inventory-10;BFI」という指標で、外向性、神経症傾向、開放性、勤勉性、協調性の5因子を評価した。BFIでは、「全く当てはまらない」の1点から「完全に当てはまる」の5点のリッカートスコアで点数化する。

このほか、「Hospital Anxiety and Depression Scale;HADS」で不安やうつレベルを評価(21点満点で点数が高いほど不安・うつレベルが高い)したほか、年齢、性別、最終学歴、職業、パートナーの有無、身長、体重を質問した。

オルトレキシア傾向は女性が強く、運動依存症傾向は性差なし

結果について、まず、男性と女性とを比較してみると、年齢は有意差がなく、BMIは男性のほうが有意に高かった(25.09±4.01 vs 22.58±4.16,p<0.001)。また、パートナーのいる人の割合は有意差がなかった。その他、オルトレキシアや運動依存症関連の評価スケールの結果は以下のとおり。

不安・うつレベル

HADS(0~21点)で評価した不安・うつレベルについては、うつレベルは性別による有意差がなく、不安レベルは女性のほうが有意に高かった(5.55±3.36 vs 6.65±3.61,p<0.001)。

性格特性

BFI(1~5点)で評価した性格特性は、外向性、開放性、勤勉性、協調性は性別による有意差がなく、神経症傾向は女性のほうが有意に強かった(2.58±0.90 vs 3.22±0.94,p<0.001)。

オルトレキシア

DOS(10~40点)で評価したオルトレキシアの傾向は、男性より女性のほうが有意に強かった(17.29±4.61 vs 19.11±5.48,p<0.001)。リスクなしに該当する24点以下の割合は男性のほうが有意に多かった(93.7 vs 85.6%,p=0.037)。また、ベジタリアン食など何らかの摂取制限を行っていない人の割合も男性のほうが有意に多かった(74.8 vs 49.56%,p0.001)。

運動依存症

EAI(6~30点)で評価した運動依存症の傾向は、性別による有意差がなかった(14.86±5.81 vs 14.15±5.38,p=0.197)。

オルトレキシアと運動依存症の相関は男性のほうが強い

次に、オルトレキシア傾向(DOSスコア)と運動依存症傾向(EAIスコア)の相関をみると、男性はr=0.500(p<0.001)、女性はr=0.337(p<0.001)といずれも有意な正相関が認められ、男性のほうがより強い相関関係が存在した。ただし性別で比較した結果は有意水準に至らなかった(p=0.09)。

オルトレキシアや運動依存症に関連する因子は性別による異なる

オルトレキシアや運動依存症に関連する因子を解析したところ、以下のような結果が得られた。

男性では、オルトレキシアに関連する因子として勤勉性(p=0.04)のみが抽出された。運動依存症に関連する因子としては、勤勉性と外向性が抽出された(いずれもp=0.000)。

女性では、オルトレキシアに関連する因子として、不安レベル、うつレベル、神経症傾向が抽出された(いずれもp=0.000)。運動依存症に関連する因子としては、不安レベル(p=0.04)と勤勉性(p=0.000)が抽出された。

ストイック過ぎる運動習慣や食生活への介入は、性差への配慮が必要か

これらの結果からの結論として著者らは、「オルトレキシアと運動依存症の間には正の相関関係が存在することが明らかになった。ただしその相関係数は考えていたよりも小さなものだった」と記している。また、「男性と女性とではオルトレキシアや運動依存症に関連する因子をほとんど共有していない」とし、「オルトレキシアと運動依存症が同一の起源から発展するとの仮定に疑問を生じる」と述べるとともに、「治療介入に際しては性差を考慮した個別アプローチが必要だろう」とまとめている。

文献情報

原題のタイトルは、「Alike and different: Associations between orthorexic eating behaviors and exercise addiction」。〔Int J Eat Disord. 2021 May 6〕
原文はこちら(John Wiley & Sons)

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