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高炭水化物(高GI、高GL)の食事は、睡眠効率を低下させる可能性あり

炭水化物の摂り方と睡眠との関連に関するシステマティックレビューとメタ解析の結果が報告された。グリセミックロード(glycemic load;GL)が高い食事は深い睡眠(徐波睡眠)を減らしてレム睡眠を増やすことがわかった。一方、グリセミックインデックス(glycemic index;GI)が高い食事は、有意でないながら、寝付くまでの時間(入眠潜時)をやや短縮するが、睡眠効率はやや低下する可能性を示す結果が得られた。

高炭水化物(高GI、高GL)の食事は、睡眠効率を低下させる可能性あり

炭水化物の量と質と摂取タイミング、睡眠の時間と質との関連を検討

炭水化物は睡眠関連ホルモンの調節にかかわる

必要な睡眠時間は人によって異なるが、量(時間)が適切で質の高い睡眠はQOLにとって重要なだけでなく、日中の機能障害や多くの健康障害を防ぐためにも重要と考えられている。睡眠の時間および質に影響を及ぼす因子の一つとして、栄養が古くから研究されてきている。とくに炭水化物に関する研究の歴史は長く、現在、炭水化物はエネルギー源として機能するだけでなく、脳機能および睡眠関連ホルモンの調節にかかわり、睡眠にとって重要な栄養素と捉えられている。

しかしそれにもかかわらず、炭水化物摂取と睡眠時間・質との関連のシステマティックレビューはまだ実施されていない。本論文の著者らは、炭水化物摂取の量と質(GLとGI)および摂取タイミングと、睡眠の時間と質に関するさまざまなパラメーターとの関連を、システマティックレビューとメタ解析によって検討した。

システマティックレビューの手法

文献検索には、PubMed、SCOPUS、Cochrane Libraryという三つの文献データベースを用い、2020年10月10日までに公開された英語論文を検索対象とした。検索キーワードとして、炭水化物、グリセミックロード、グリセミックインデックス、睡眠時間、睡眠の質、睡眠効率、睡眠習慣などを設定。適格基準は、炭水化物摂取による介入が行われている研究で、睡眠の時間や質が睡眠ポリグラフ検査や脳波検査、アクチグラフなどで客観的に評価されており、研究対象が18歳以上の疾患のない成人であること。除外基準は、研究対象に疾患既往者が含まれている研究、栄養介入以外の介入(例えば薬剤や光照射など)を組み合わせて実施されその影響を除外できない研究、睡眠関連パラメーターの評価が客観的でない研究。

最初の検索で2,316件がヒットし、重複の削除とタイトル・要約によるスクリーニングを経て残った99件を、2名の独立した研究者が全文スクリーニングし、最終的に11件の研究報告がメタ解析の対象として抽出された。

GI値、GL値の分類と、関連を検討した睡眠関連パラメーター

GIは、55以下を低GI、56~69を中GI、70以上を高GIと分類した。〔GI×単位あたり炭水化物含有量÷100〕でGLを計算し、10以下を低GL、11~19を中GL、20以上を高GLと分類した。

睡眠関連では、総睡眠時間(total sleep time;TST)、睡眠効率(sleep efficiency;SE.総就床時間に占める総睡眠時間の割合)、入眠潜時(sleep onset latency;SOL.就床から入眠〈睡眠ステージ2〉までの時間)、中途覚醒時間(wake time after sleep onset;WASO)、レム睡眠潜時(REM onset latency;ROL.入眠から最初のレム睡眠開始までの時間)、レム睡眠(rapid eye movement;REM)と、ノンレム睡眠のステージ1、2、3+4の時間および総睡眠時間に占めるそれらの割合を評価した。

なお、ノンレム睡眠のステージは、1、2、3、4の順により深い睡眠とされ、ステージ3以上は徐波睡眠(深睡眠)と呼ばれる。本検討ではステージ3と4の時間を合計して解析した。

GLの高低とGIの高低で、睡眠関連指標に有意/非有意な影響

抽出された11件の研究は、1975~2019年に報告されていた。米国、英国、オーストラリアからの報告が各3件で、その他はブラジルとキプロスから報告されていた。研究デザインは8件がクロスオーバー法で、3件は前後比較試験だった。研究の質は、6件は高品質、5件は中等度と評価された。

研究参加者数は合計179名で男性59名、女性6名、不明114名。年齢は8~45歳の範囲であり、BMIはすべての研究で標準的な範囲にあった。

GL値が低いほど、深い眠りが多く、浅い眠りが少ない

メタ解析の結果、GL値が低いほどノンレム睡眠のステージ3の時間が長くなり、レム睡眠は短くなるという有意な関連がみつかった。つまり、炭水化物の量が多い食事によって深い眠りが増え、浅い眠りは減ると考えられる。

より詳しくは、GL値が低い食事はステージ3の時間に対して効果量(ES)=0.37(95%CI;0.18~0.56)、総睡眠時間に占めるステージ3の割合に対してはES=0.51(95%CI;0.33~0.67)であり、いずれも異質性(I2)=0%、p<0.001だった。レム睡眠の時間に対しては、ES=-0.38(95%CI;-0.05~-8.05)、総睡眠時間に占めるレム睡眠の割合に対してはES=-0.46(95%CI;-0.83~-0.01)であり、いずれもI2=0%、p<0.001だった。

その他の睡眠関連パラメーターは、GL値と有意な関連が認められなかった。

GI値が高いほど、短時間で眠れるが、睡眠の質は低下する可能性

一方GI値と睡眠関連パラメーターとの関連については、睡眠効率と入眠潜時とのわずかな関連性が示された。

具体的には、GI値が高い食事は睡眠効率を低下させる、つまり睡眠の質を悪化させる可能性がある一方、入眠潜時は短縮する、つまり短時間で眠りに入れる可能性がある。ただし、これらに関しては報告間の異質性が高く、外れ値と判断される研究を除いた結果、メタ解析に十分なデータを得られなかった。

睡眠と栄養の関連を明確に示した研究

このほか、炭水化物を摂取するタイミングと睡眠との関連も検討されたが、それについても、メタ解析に十分なデータを得ることができなかった。

これらのデータから著者らは、「炭水化物の摂取量が少ないとノンレム睡眠のステージ3が増加し、炭水化物の摂取量が多いとREM睡眠が増加するという関連が観察された。炭水化物の質は、睡眠に有意な影響を示さなかった。この結果は、睡眠に対する栄養、とくに炭水化物の影響の重要性を明らかにしたものと言える」と結論している。

文献情報

原題のタイトルは、「A Systematic Review, Meta-Analysis and Meta-Regression on the Effects of Carbohydrates on Sleep」。〔Nutrients. 2021 Apr 14;13(4):1283〕
原文はこちら(MDPI)

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