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ラマダンで筋肉機能と緩衝能が低下し自覚的運動強度は上昇する 男性アスリートで検討

国際化の進展とともに国内でもラマダン(断食月)を遵守するイスラム教徒が増加しているとされる。また、ラマダンを行うアスリートも存在する。こうしたなか、ラマダンによるスポーツパフォーマンスへの影響に関する研究結果が報告された。やはり、日中の絶飲食がパフォーマンスの低下につながるという結果である。ただしラマダン終了後には回復するようだ。

ラマダンで筋肉機能と緩衝能が低下し自覚的運動強度は上昇する 男性アスリートで検討

イスラム教徒アスリートはラマダン断食の影響を克服できるのか?

ラマダン断食はイスラム教の宗教的慣習で、日の出から日の入りの間は飲食、喫煙、性的関係を控える。そのためイスラム教徒はラマダン期間中、日の出直前の早朝に食事をとり、日没後に2回目の食事をとるという生活を続ける。既報からはラマダン断食が、体重や、血糖値、血清脂質、安静時代謝率、呼吸機能、および身体活動レベルに有意な影響を与えることが示されている。また、ラマダンはイスラム教徒アスリートのトレーニング負荷を弱める可能性も示唆されている。しかし、多くのイスラム教徒アスリートは、参加している競技が激しい負荷を伴う種目であっても、ラマダン期間中、スポーツ活動を続けている。

スポーツのパフォーマンスは、エネルギーの利用可能性と緩衝能に多くを依存するが、イスラム教徒アスリートに関するこの点の正確な情報は得られていない。そこで本論文の著者らは、宗教的ラマダン断食が、等速性収縮運動中の筋肉機能と血液緩衝能に悪影響を与えるかどうかを検討した。

ラマダン中とラマダン終了後の2回、運動テストを実施

この研究参加者は12人の男性アスリートで、年齢は23.2±1.3歳で、BMIは24.2±2.2。参加基準は、非喫煙者であり、睡眠障害がなく、飲酒をせず、過去8年以上のトレーニング歴があり、現在も週8時間以上トレーニングを実施しており、下肢に障害のないこと。

研究は2019年5月に実施され、1日の絶飲食時間は約16〜17時間。ラマダン期間中(ラマダンの27日目)とラマダン終了の14日後に運動テストを実施し、その変化を検討した。テストの前日と前々日は、8時間の睡眠をとり、後述の所定の食事を摂取するよう指示された。なお、テスト日の気温と湿度は、1回目が32℃、46%、2回目が35℃、42%だった。

運動テストは等速運動として行われ、角速度60°/秒の負荷により、ピークトルク、総仕事量、平均パワーなどを計測した。また、ボルグスケールに基づく自覚的運動強度(Rating of Perceived Exertion;RPE)を評価した。

そのほか、採血検査により、pHと重炭酸塩濃度を測定し、緩衝能を評価した。

食事モニタリング

研究開始の1週間前に、参加者自身が1日の食事内容を記録して研究者へ提供した。その記録に基づく栄養士のアドバイスにより、参加者はプロトコルの実施前に食物摂取量に関して、口頭および書面で情報を受け取り、それに従い食事をした。またテストの2日前から参加者は毎日の食事記録を送信した。

参加者の1日の摂取量は、総エネルギー量が2,916±150kcal、タンパク質109±12g、炭水化物401±16g、脂質97±21gだった。

ラマダン中は、ピークトルク、重炭酸塩濃度が有意に低下

では、ラマダン中とラマダン終了から14日経過した定常状態での比較検討結果をみてみよう。

筋肉機能

ラマダン中とラマダン終了から14日後で比較すると、パフォーマンスに関連する筋肉機能に有意な差が認められた。具体的には以下のとおり。

ピークトルク
ラマダン中ラマダン後p値
伸展220.7±10.5 Nm259.8±6.3 Nmp=0.002
屈曲97.2±4.4 Nm115.7±4.7 Nmp=0.007
平均パワー
ラマダン中ラマダン後p値
伸展114.7±4.7 W134.6±4.4 Wp=0.004
屈曲45.9±4.3 W59.8±3.2 Wp=0.012
総仕事量
ラマダン中ラマダン後p値
伸展3,885.9±96.8 J4,330.9±100.8 Jp=0.019
屈曲非有意のため省略

血液緩衝能や自覚的運動強度(RPE)

また、ラマダン中とラマダン終了から14日後の比較で、重炭酸塩濃度や自覚的運動強度(RPE)にも有意差が認められた。具体的には、重炭酸塩濃度はラマダン中が28.0±1.1、ラマダン終了後が31.7±2.2(p=0.041)、RPEは同順に17.1±0.3、15.6±0.2(p=0.048)だった。

なお、pHについては有意差がなかった。

著者らは本研究を、「男性アスリートの等速性筋機能と緩衝能に対するラマダン断食の影響を調べた初の研究」としている。結論として、「ラマダン断食は男性アスリートの筋肉機能と緩衝能に悪影響を与える」とまとめている。ただし、断食終了後にはRPEが低下していたことから、「イスラム教徒アスリートやそのコーチは、ラマダン中およびラマダン後もトレーニングセッションのプログラムを継続することで、長期的には前述の変数を維持または改善できるのではないか」と考察している。

また本研究の限界点として、サンプルサイズが少ないこと、対象が男性アスリートのみであること、等速運動への急性反応のみを評価していることなどを挙げ、「他のさまざまな対象と条件で、多数のサンプルサイズでの追試が必要」と付記している。

文献情報

原題のタイトルは、「Effect of Acute Ramadan Fasting on Muscle Function and Buffering System of Male Athletes」。〔Healthcare (Basel). 2021 Apr 1;9(4):397〕
原文はこちら(MDPI)

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