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イングランドのプロサッカーにおけるカフェイン使用実態調査 クラブの97%が選手にカフェインを提供

インングランドのプロサッカーの上位リーグに所属するクラブを対象として、エルゴジェニックエイドとしてのカフェインの利用に関する調査が行われた。回答を得られた36のプロクラブ中1クラブを除いて35クラブは、カフェインをプレーヤーに提供しているという結果が示された。

イングランドの上位プロサッカークラブの97%が選手にカフェインを提供している

イングランドのプロクラブ対象に、サッカー選手のカフェイン利用の実態を調査

カフェイン摂取による個人競技のパフォーマンス向上効果に関しては十分なエビデンスがあり、チームスポーツに関してもパフォーマンス上のメリットをもたらす可能性を指摘する報告が増えている。例えば、カフェインを2~6mg/kg摂取すると、断続的な運動プロトコルでのスプリントとジャンプの繰り返しのパフォーマンス、反応性敏捷性、ジャンプの高さ、精度が向上するとする複数の報告があり、これらはサッカーの身体的要求に適ったものと言える。

カフェインを利用しているアスリートは少なくなく、ドーピング検査のための尿サンプルを用いた解析では、エリートアスリートの4人中3人がカフェインを利用していることが示されている。しかしサッカー選手でのカフェイン利用の実態はこれまでのところ明らかになっていない。

サッカー選手がカフェインを不適切に利用した場合、例えば9mg/kg以上の高用量を用いた場合、パフォーマンス上のメリットが増大しない一方で、吐き気、不安、不眠、落ち着きのなさなどの副作用のリスクが上昇する。よって、安全で効果的なカフェイン摂取のためのエビデンスに基づいた実用的ガイダンスが必要とされ、本研究ではその最初のステップとして、イングランドのエリートサッカークラブでのカフェイン使用の実態が調査された。

調査対象と回答率、回答したスタッフの職種

調査対象は、イングランドのプロサッカーリーグに所属する上位91チーム。2回以上にわたりインターネットを介した手段で連絡を取り、調査への回答協力を依頼した。調査対象全体の40%に相当する36のプロクラブから回答を得られた。

回答者は、クラブ所属のスポーツ科学者(sport scientist)からが13クラブ、コーチからが7クラブ、栄養士からが6クラブ、パフォーマンス責任者から6クラブなど。

1クラブを除くすべてのクラブがカフェインを選手に提供

36のクラブの97%にあたる35クラブは、パフォーマンスを向上させる手段としてカフェインをプレーヤーに提供していると回答した。その約半数(n=17)は、過去3年間以上にわたってカフェインをプレーヤーに提供していた。

カフェインを提供するとの決定は、カフェインを使用している現在または過去の関係者の意見(n=19,54%)、カフェイン使用の個人的な経験(n=16,46%)、科学文献(n=13,37%)、オンラインリソース(n=12,34%)などに基づいて行われていた。

摂取タイミングは試合前が大半で、半数弱は試合中にも摂取

カフェインを選手に提供するタイミングは、試合前が94%、試合中が48%だった。試合が行われる時間帯は、それほど考慮されていなかった。試合以外のトレーニングに際しては、37%(n=13)がトレーニング前にカフェインを提供したことがあると回答した。

試合前のカフェイン摂取のタイミングは15~90分の範囲に分布し、最も多かったのはキックオフの30~45分前だった(n=14,40%)。

投与の形態は、エネルギーショット(n=24,68%)とカフェインガム(n=20,57%)が一般的で、27のクラブ(77%)は二つの形態を併用し、さらに17のクラブ(49%)は三つ以上の形態を併用していた。

選手のカフェイン摂取量をクラブが把握しているか?

プレーヤーが規定を超えるカフェインを摂取していないかをモニタリングしていたのは8クラブ(23%)のみだった。 31のクラブ(89%)は、全プレーヤーが同じカフェイン摂取戦略に従っているわけではないと回答し、11のクラブ(31%)は利用されているカフェイン量が一貫していないと回答した。

一方、8クラブは、カフェイン摂取はプレーヤーの任意であり、強制ではないと述べていた。 3クラブ(9%)は、サプリメントに含まれているカフェイン量について、プレーヤーが教育やアドバイスを受けていると回答した。

用量は3mg/kgが最多

カフェインの利用量には一貫性がみられなかった。

23クラブ(66%)は絶対量を決めており、8クラブ(23%)はプレーヤーの体重ごとの用量を目標とし、4クラブ(11%)は用量不明と回答した。

カフェインの相対用量は2~6mg/kgの間に分布しており、3mg/kgが一般的だった。絶対用量は50~500mgに分布していた。

25のクラブ(71%)は、カフェインのみでなく他のサプリメントと同時に摂取されることが多いと述べ、以下のように13種類のサプリメントが挙げられた。エネルギージェル(n=13,52%)、炭水化物飲料(n=10,40%)、電解質飲料(n=8,32%)。

カフェインを選手に提供することのマイナス面

25のクラブ(71%)は、プレーヤーのカフェイン摂取に関連する可能性のある悪影響がみられたことを報告した。その内容は、不眠症(n=18,53%)と心拍数増加(n=8,24%)が多かった。ただし、それら副作用の頻度は、「まれに生じる」と「極めてまれに生じる」が多数だった(n=25,76%)。

カフェインによるパフォーマンス向上をどの程度に認識しているか?

カフェインは、意思決定、反応時間の短縮、身体的および精神的疲労の軽減にもメリットをもたらすとされている。回答クラブの70%以上(25クラブ以上)は、これらのパフォーマンスの側面に対して中程度以上の効果があると回答した。

また50%以上は、カフェインが筋力、持久力、睡眠に中程度以上の影響を与えると認識していた。さらに80%(n=29)は、カフェインが活力に対して中程度以上の効果があると認識し、44%(n=16)は、プレーの信頼性に対する中程度以上の効果があると認識していた。

このほか22%(n=8)は、カフェイン摂取によって精神的倦怠感と睡眠が非常に影響を受けると回答した。

チームスポーツであるサッカーでのカフェイン使用の最適化のために

著者らは本研究には、イングランドのプロリーグのみを調査対象としているため、他国や他のレベルのクラブでも同様の傾向にあるとは言えないこと、プレーヤー個人を対象に調査したものでないため、プレーヤーがクラブから提供されるものとは別に個人的に摂取していることのあるカフェインについては不明であることなどを、限界点として挙げている。

そのうえで、「本研究はプロサッカーにおける、パフォーマンスへの急性効果を期待するサプリメントとしてのカフェイン使用の実態を明らかにした最初の研究である」としている。また今後のこの領域で研究を進めるべきテーマとして、以下を提示している。

研究を進めるべき項目

  • さまざまなカフェインの形態と投薬戦略を考慮した、急性および慢性のカフェイン摂取の効果検証。
  • サッカー特有のパフォーマンスに対する低用量カフェイン(3mg/kg未満)の有効性の検証。
  • 効果の馴化を抑制するための戦略の研究。
  • 摂取タイミングのエルゴジェニック効果への影響の検証と、摂取後の睡眠および回復との相互作用の検討。
  • カフェインと、他に報告されているエルゴジェニックエイドとの相乗効果の検討。

文献情報

原題のタイトルは、「The prevalence and practices of caffeine use as an ergogenic aid in English professional soccer」。〔Biol Sport. 2021;38(4):525–534〕
原文はこちら(Termedia)

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