アスリートの栄養摂取状況を把握する新指標「ADI」をスポーツ栄養士が評価 オーストラリアの調査
アスリートの食事の評価に特化して開発された指標「Athlete Diet Index;ADI」の有用性を検討した結果が報告された。ADIを用いるとアスリートの摂食状況を迅速に把握でき、評価にあたったスポーツ栄養士の評価も高かった。
アスリートの食事評価に特化しオンラインで評価可能なADI
スポーツ栄養士がクライアントであるアスリートに個別化した栄養アドバイス、指導を行うにあたり、まずは栄養不良のリスクがあるアスリートの特定が不可欠。しかし、個々のアスリートの栄養摂取状況の把握には、アスリート本人による記録や思い出し、綿密なインタビューなどが必要で、限られた時間で多数のアスリートの摂取状況を正確に評価することは困難。さらに、現在、アスリートの食事摂取量の目安は、一般人口対象の推奨値を基準とし個別に加減し判断しており、激しいトレーニングを行うアスリートに特化した統一基準はない。一方でテクノロジーの発達は、栄養アセスメントに要する時間を短縮する可能性を秘めている。
このような背景から最近、アスリートの栄養摂取状況の評価をオンラインで可能とした新たな指標「Athlete Diet Index;ADI」が開発された。本報告は、そのADIの実用性を検証した結果。ADIを用いてアスリートの栄養摂取状況を把握するとともに、その工程が実践的であるか否かをスポーツ栄養士に判断してもらった。
Athlete Diet Index; ADIについて
Development of an Athlete Diet Index for Rapid Dietary Assessment of Athletes〔Int J Sport Nutr Exerc Metab. 2019 Oct 17;1-8〕アスリート168名、スポーツ栄養士16名が参加
対象アスリートは、オーストラリアの州レベル以上の大会に参加している16歳以上のエリートアスリートを適格条件として募集された168名。このうち3名はADIの回答を終了しなかったため、解析対象は165名。年齢は20.0±5.0歳、BMI23.1±2.4で、パフォーマンスレベルは国際大会レベル以上が62.4%。競技種目は団体競技(バスケットボール、クリケット、ホッケーなど)が68.5%、個人競技(サイクリング、乗馬、ゴルフ、ボート、テニス、陸上など)31.5%。
一方、スポーツ栄養士は16名が研究に参加。うち、すべての調査項目に回答したのは12名だった。
ADIによるアスリートの食事の質の評価
20分で評価可能
アスリートは、平均20.7±7.4分(中央値19.3分)でADIの回答を終了した。ADIは125点満点で66~89点は推奨事項を満たしていると判定されるが、アスリートの平均は91.4±12.2点で、過半数(56%)にあたる93名は90点以上であり、推奨レベル以上だった。42%にあたる70名は推奨レベルを満たしていた。
65点以下と推奨レベルに到達していなかったのは1%、2名だった。この2名は、コアの食品(野菜、穀物、乳製品、赤身肉など)の摂取量が少なく、鉄分やカルシウムも不足していた。
なお、ADIスコアは、年齢(p=0.22)や体重(p=0.24)、BMI(p=0.86)との間に、有意な関連はなかった。
団体競技と個人競技、トレーニング時間の長短、性別での比較
団体競技と個人競技との比較では、団体競技アスリートのほうがADIスコアが有意に高かった(92.7 vs 88.5,p<0.05)。
ADIスコアは合計スコアのほかに、サブスコアとして、コアの食品(前述のように穀物など)、特定の栄養素(鉄やカルシウムなどアスリートで必要性が高い栄養素)、および食行動という三つの指標がある。このうちの食行動のスコアは、トレーニング時間12時間/週の以上か未満かで二分した場合、トレーニング時間が短い群のほうがスコアが有意に高かった。
そのほかに、性別にみた場合、男性アスリートでは、オフシーズンのほうがシーズン中よりもスコアが有意に高いこと、団体競技の男性アスリートは個人競技男性アスリートよりも食行動のサブスコアが有意に高かった。
女性アスリートでは、食行動のサブスコアはトレーニング時間が少ない人、基本的な調理スキルを持っている人が有意に高かった。また、穀物、乳製品、肉類の摂取量が男性に比べて有意に少なかった。
スポーツ栄養士のADIに対する評価
この研究に参加した16名のスポーツ栄養士のうち12名が、アスリートの栄養摂取状況の把握にADIを使用することに対する評価の調査に回答した。この調査では、設定されている質問に対する同意の程度を5段階のリッカートスコア(強い同意、やや同意、どちらでもない、やや不同意、強い不同意)で回答する手法がとられた。その結果から、ADIの実用性が高いことが認められた。
主な質問とその回答は以下のとおり。「アスリートの栄養管理をサポートするために役立つ情報を得られた」強い同意75%、やや同意25%。「栄養サポートの重要な領域のスクリーニングと特定に役立った」強い同意83%、やや同意17%。「食事の質が悪いアスリートを特定するのに役立った」強い同意58%、やや同意42%。「自動スコアリングとフィードバックレポートは役に立った」強い同意100%。
以上から著者らは結論として、「最近開発されたADIが、アスリートの食事摂取量と食行動を迅速に評価するための利便性の高い方法であることが示された。ADIを用いた調査の結果、アスリートの栄養摂取状況は平均的に、オーストラリアの一般成人と少なくとも同等か、良好と思われる。ADIの有用性は、スポーツ栄養士の評価調査によって確認された」とまとめている。
文献情報
原題のタイトルは、「Diet Quality of Elite Australian Athletes Evaluated Using the Athlete Diet Index」。〔Nutrients. 2020 Dec 31;13(1):E126〕
原文はこちら(MDPI)