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学校給食の配食問題(1)給食が等しく分けられていない! 児童間で大きなばらつき

子どもの肥満ややせを防ぐためには、子どもたちが適切な量を食べることが必要だ。その適切な量を学びとるのに最も適した機会が、学校での給食であることに異論はないだろう。ところが、その給食でのエネルギー摂取量が、おかわりや食べ残しをしない児童間であっても、大きくばらついている実態が明らかになった。配食を均等に行うことの必要性が示唆される研究結果と言える。神奈川県立保健福祉大学の鈴木志保子氏 (一般社団法人日本スポーツ栄養協会理事長)らの報告。

学校給食の配食問題(1)給食が等しく分けられていない! 児童間で大きなばらつき

学校給食の配食問題(2) しっかり一人前ずつに配食する方法とその有効性が明らかに

これまで議論されてこなかった学校給食の問題、「配食」の実情を明らかにする

エネルギー摂取量の過剰はエネルギー消費量の過少(運動不足等)と並び、子どもの肥満の主要な原因。反対にエネルギー摂取量の過少はやせの主要原因と考えられる。小学校児童は男女ともに8歳ごろから肥満または痩身傾向の子どもが増加し、9歳以降の肥満傾向児は男子約10%、女子は約8%であり、痩身傾向児は学年が上がるごとにその割合が上昇すること、また小学校5年生男女における学校給食のエネルギー摂取量は、0~2,700kcalと大きな差があることが報告されている。これらのことから、学校給食が、望ましい食事のモデルとしての役割を十分に果たしていないのではないかと推測される。

給食指導の現場では、児童が当番制で配食を担当することが多いため、その際に児童が自由に量を調整し得る。とくに、主食が米飯の場合、一人分が規定されているパンや麺と異なり、配食量に差が生じることが想定できる。米飯給食は全国平均で週3.4回(2016年)実施されていることから、米飯の配食状況が学校給食からのエネルギー摂取量に大きな影響を与えることが見込まれる。

一方、学校給食に関してこれまで、残食の頻度や体格への影響、または対策をテーマとした研究は多数行われてきているが、「配食」についてはほとんど調査・議論がなされていない。このような背景から、本論文の著者らは小学校児童の給食におけるエネルギー摂取量と主食の関連に着目し、以下の検討を行った。

肥満度が「ふつう」で、おかわりや残食のない4・5年生のデータを解析

この研究では、ある都市の小学校2校に通う4年生と5年生の児童を対象に、市の教育委員会が実施した「給食喫食実態調査」および「身長・体重測定」等の結果を、同市の依頼を受けて解析した。データ解析の対象は、肥満度が「ふつう」(-20~+20%)であり、おかわりや残食のない児童とした。サンプル数は、4年生男子75名、女子51名、5年生男子73名、女子72名、計271名。

調査対象2校において、給食1食あたりのエネルギー量は4年生が622±26kcal、5年生が741±93kcalであり、主食配食量は同順に175g、195gだった。

用語について

なお、本研究で用いられている配食関連の用語の定義は以下のとおり。

  • お増やし:喫食前に児童が自由意思によって自身の給食量を増量すること。本研究では271名中19名が該当(以下、お増やし群)
  • お減らし:喫食前に児童が自由意思によって自身の給食量を減量すること。本研究では271名中58名が該当(以下、お減らし群)
  • 配食量:お増やし、お減らしが行われた後の喫食前の給食量
  • 喫食量:児童が喫食した量

児童の自由意思による配食量の調整が行われており、主食配食量には大きな差が存在

主食の配食量に最大6倍以上のばらつき

結果について、まず主食配食量をみてみよう。

主食配食量は、4年生男子で68~362g、女子は94~207gに広く分布し、5年生も男子61~342g、女子60~378gと広い範囲に分布していた。5年生女子では6倍以上の開きがあることになる。

お増やしやお減らしの有無別に比較すると、4年生男子および5年生は男女双方において、お増やし群、増減なし群、お減らし群の順に、主食配食量が有意に多かった(すべてp<0.001)。4年生女子については、増減なし群がお減らし群に比べて有意に多かった(p=0.006)。

なお、4年生、5年生ともに、性別による身長や体重に有意な差はなかった。

エネルギー摂取量も最大4倍以上のばらつき

次に1食あたりのエネルギー摂取量は、4年生男子が347~1,154kcal、女子439~746kcal、5年生男子349~1,152kcal、女子309~1,306kcalだった。5年生女子では4倍以上の開きがある。

上記の配食量についての群間比較の結果と同様に、4年生男子および5年生は、お増やし群、増減なし群、お減らし群の順に、エネルギー摂取量が有意に高かった(すべてp<0.001)。4年生女子については、増減なし群がお減らし群に比べて有意に高かった(p=0.006)。

主食配食量とエネルギー摂取量が正相関

主食配食量が多いほどエネルギー摂取量が高いという、有意な正の相関が認められた。相関係数は、4年生男子がr=0.811、女子がr=0.545、5年生男子がr=0.886、女子がr=0.865(すべてp<0.001)。

1食あたりの推定エネルギー必要量(EER)との差が100kcal以内だったのは4割

給食のエネルギー摂取量と、推定エネルギー必要量(estimated energy requirement;EER)の1食相当分(3分の1日量)との差(ΔEER)が100kcal以内であった児童は112名であり、全体の41.3%だった。

お増やしやお減らしの有無別では、お増やし群(ΔEERは324±174.0kcal)が、増減なし群(同-17±157.5kcal)やお減らし群(同-129±151.4kcal)に比べて有意に正の方向に大きく、お減らし群は他の2群に比べて有意に負の方向に大きかった(すべてp < 0.001)。

なお、1食あたりのエネルギー摂取量が推定エネルギー必要量に300kcal以上不足している児童が8名存在した。それらの児童は、主食配食量が少ない、体格が良いなどの特徴があることが明らかになり、給食を均等に配食することや、思春期の成長スパートへの対応が必要であると考えられた。

配食についてのマニュアルが必要

以上一連の結果から、小学校給食における主食の配食量にはばらつきがあることがわかった。自由意思により行われているお増やし/お減らしは、配食量とエネルギー摂取量に影響を及ぼし、エネルギー摂取量が1食あたりのEERから逸脱する要因になると考えられる。望ましい主食量の配食には、基準量を均一に配食すること、 児童の自由意思によるお増やし、お減らしに対する適切な指導を行うことが必要である。また、望ましい主食量の配食には、成長スパートに入っている児童などについて、保護者と連携して個別的な相談・指導を行う必要もあるだろう。

著者らは、「各自治体で給食時間運営に関するマニュアルを作成し、それに基づいた給食指導に取り組む必要性が示唆される」と結論をまとめている。

文献情報

原題のタイトルは、「小学校給食における主食の配食状況とエネルギー摂取量の関係」。〔神奈川県立保健福祉大学誌 : human services 16(1), 25-35, 2019〕
原文はこちら(神奈川県立保健福祉大学機関リポジトリ)

学校給食の配食問題

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