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消防士の大半が栄養不足の可能性 軍隊の摂取基準と比較し大幅に少ない

2020年12月01日

多くの国で栄養政策の一環として「食事摂取基準(Dietary Reference Intakes;DRI)」が定められており、一般的な国民の健康増進の目安として活用されている。ただし、アスリートなど一部の集団へのDRIの適用には限界がある。それらの集団は、高いパフォーマンスを発揮するために、DRIとは異なる栄養摂取が必要となる。

消防士の大半が栄養不足の可能性 軍隊の摂取基準と比較し大幅に少ない

特別な集団として、アスリート以外には軍人や兵士、消防士が該当する。消防士の任務は危険性が高く、重い保護具を着用した状態で負荷の高い肉体的運動が求められ、精神的ストレスも大きい。しかし、軍隊に関しては特殊な条件を考慮して定められた「軍隊における食事摂取基準(Military Dietary Reference Intakes;MDRI)」が存在するのに対し、消防士に関してはそのような規準が存在しない。消防士の栄養所要量をDRIを基に判断することは適切でないことから、本論文の著者らは、試験的にMDRIと消防士の栄養摂取量を比較し、過不足を検討した。

MDRIの特徴と消防士への適用の可能性

MDRIは、軍人や兵士が一般の人に比較し、任務上の身体活動のためにより多くの栄養素を必要とすることから開発された。また軍事作戦中の特殊な環境要因(高温または低温など)の影響も考慮し、栄養素の摂取推奨量を高く設定している。このようなMDRIは、消防士の栄養摂取量を評価する基準としても、適していると考えられる。MDRIは一般の人を対象に定められているDRIと比較し、主要栄養素のほか、葉酸、ビタミンC、カルシウム、鉄、マグネシウム、リン、およびセレンの推奨量が高いなどの違いがある。

なお、MDRIは身体活動量の多い17〜50歳の軍人や兵隊に適用される。現役消防士の一部は50歳を超えているが、大多数はMDRIの対象年齢に該当する。

現役消防士150名の3日間の食事記録を分析

この研究は、米国の消防士を対象とする「地域消防士ウェルネスイニシアチブ(Regional Firefighter Wellness Initiative)」の登録時データを用いた横断研究として実施された。南カリフォルニアにある13カ所の消防署の現役消防士に対し、3日間にわたり、すべての飲食物を計量カップや秤を用いるなどして、できるだけ正確に記録してもらった。

研究対象からは、労災認定中の傷病や臨床上の禁忌を有する者、妊娠中の女性などを除外した。結果的に対象となった150名すべてが男性であり、年齢は37.35±8.44歳(最高齢は59歳)、BMI28.25±3.65、体脂肪率21.54±5.98%、安静時心拍数は64.66±11.1bpmだった。

MDRIに比較して摂取エネルギー量と炭水化物が少なく、脂質は多い

3日間の記録を分析した結果、消防士の栄養摂取量はMDRIと大きな差があることがわかった。

まず、摂取エネルギー量は、MDRIが3,400kcal/日であるのに対し、消防士は2,292±630.4kcal/日であり、有意に少なかった。

栄養素別では、炭水化物はMDRIが510g/日(エネルギー比50~55%)に対し、209.5±79.2g/日(37±10%)と有意に少なかった。一方、脂質はMDRIが113g/日未満(25~30%)に対し、101.5±39.6g/日(39.4±8.6%)であり、エネルギー比率が有意に高かった。蛋白質はMDRIが102g/日(10~35%)に対し、123.4±45.3g/日(21.9±6.2%)で、基準内だった。

MDRI基準に対して、炭水化物の摂取量が不足している消防士の割合は90%。脂質が超過している消防士の割合は86%だった。

微量栄養素もMDRIに満たないものが多いという結果

主要栄養素以外でも、リノール酸、α-リノレン酸、食物繊維、ビタミンD・E、葉酸、カルシウム、マグネシウム、カリウム、亜鉛はMDRI基準を下回っていた。とくに、ビタミンD、マグネシウム、カリウムは、MDRI基準に満たない消防士の割合が高く、それぞれ、95.3%、94.0%、98.7%に達した。

その一方、ビタミンA・B6・B12、リボフラビン、ナイアシン、ビタミン、鉄、リン、セレン、ナトリウムは、MDRI基準を超過していた。ナトリウムに関しては、対象の約8割が、MRDA基準より多く摂取していた。

消防士向け食事摂取基準の開発を

この研究から、現役消防士の大多数が、健康増進やパフォーマンス改善、疲労からの回復を促進するうえで必要とされるいくつかの重要な栄養素について、MDRI基準を満たしていないことがわかった。著者らは、「栄養管理者が消防士向けの独自の栄養プログラムを立てる際に、この研究結果を援用できる。消防士の特殊な職業上の任務を考慮すると、軍隊と同様に消防士のためにカスタマイズされた摂取基準を開発する必要がある」とまとめている。

文献情報

原題のタイトルは、「Evaluating Nutrient Intake of Career Firefighters Compared to Military Dietary Reference Intakes」。〔Nutrients. 2020 Jun 23;12(6):1876〕
原文はこちら(MDPI)

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