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男性アスリートの摂食障害 米国スポーツ整形外科医学会のレビュー論文から

摂食障害は比較的若年の女性に多いとされ、アスリートの摂食障害も女性特有との固定観念がみられる。しかし実際には男性アスリートの摂食障害もまれではなく、女性とは異なる留意点も少なくない。米国スポーツ整形外科医学会「Sports Health」に掲載された「Eating Disorders in Male Athletes(男性アスリートの摂食障害)」というレビュー論文から、いくつかのポイントを抜粋して紹介する。

男性アスリートの摂食障害 米国スポーツ整形外科医学会のレビュー論文から

男性の摂食障害に関する最近の報告

この論文は、1990~2019年に報告された論文を対象に、PubMed、EBSCOhostなどの文献データベースを用いて、男性、アスリート、拒食症、過食症などの検索キーワードで文献検索を実施し、ヒットした論文をレビューした内容。

摂食障害(Eating Disorders;ED)は歴史的に女性に多いと理解されていたが、最近の報告では、EDの最大25%を男性が占める可能性があることが示唆されている。男子大学生の間では、むちゃ食い(7.9%)や過度な強迫的な運動(4.4%)、嘔吐の誘発(2.7%)、下剤や利尿薬の乱用(1.6%)などが報告されている。

男性アスリートは、一般男性集団よりもED発症リスクが高い。男性優位のスポーツでは、ストイックで自己犠牲的であるべきとの認識がスポーツ文化の暗黙知の一部とされている可能性がある。このため、ED関連行動が問題のあるものと認識されないばかりか、推奨されることさえあり得る。

アスリートは通常、パフォーマンスを最適化するために、厳格なダイエットと激しい運動療法に固執する。そして低エネルギー可用性(low energy availability;LEA)、骨ミネラル密度(bone mineral density;BMD)の低下、テストステロンの低下、傷害リスクの増加、運動パフォーマンスの低下などの影響を及ぼす可能性がある。さらに、ときにアスリートは、パフォーマンス向上のために、不適応行動の悪循環を引き起こす可能性もある。

スクリーニングと評価の推奨

臨床医は、女性アスリートのEDリスクへの関心は高い。ただし男性アスリートの場合、例えば女性でみられるトライアド(LEA、月経障害、骨量低下)のような自他覚症状がなく、過少報告および過小評価されやすい。

よってEDを正確にスクリーニングかつモニタリングすることが、男性アスリートに接する専門家にとって不可欠となる。スポーツヘルスの専門家は、EDリスクのある男性アスリートを特定し、指導・治療へとつなげていく立場にある。

危険因子

男性アスリートのEDリスクを高める、いくつかの要因が知られている。一例として肥満の既往がある男性はED行動のリスクが高い。また、負の身体イメージ、自尊心の低さ、マイナス評価への恐れ、うつなどはEDの傾向を増加させる。競技種目の専門化の過程、およびエリートレベルでの競争は、これらのリスクを悪化させる可能性があり、また、相互に影響しあいEDへの脆弱性を増大させることがある。

孤立した食事、強迫観念、過度に厳格な摂食行動はすべて、EDの指標となる。さらに振る舞いや気分の変化はレッドサインの可能性があり、体型や体重の変化などを慎重にモニタリングする必要がある。集中力の低下や運動に関連する怪我もEDのサインと考えられる。

医学的マーカー

脈拍数の低下、説明のつかない体重やBMIの変動、低血圧(とくに起立性低血圧)は、栄養失調のマーカーである。また、複数の電解質が低値である場合、EDの存在を示唆している。これらの変化は、骨粗鬆症、インスリン分泌障害や代謝異常、易疲労性などを招くほか、ときに不整脈(致死性となることもある)につながる。

男性アスリートのトライアドは、LEA、性腺機能低下、および骨量低下で構成される。ただし、これらのうち性腺機能低下は、女性アスリートほど顕著ではないことが多い。

スクリーニングツールと方法

スクリーニングとしてSCOFFが広く用いられている。5項目中2項目以上の肯定的な回答は、さらなる詳細な評価の必要性を示している。SCOFFは女性のEDより男性のEDのスクリーニングでの感度が高いとの報告もみられる。

すべてのアスリートにEDのスクリーニングを行うことが推奨されるが、男性では女性よりも臨床面接での自己報告が判定に有用であることが多く、ストレートな質問が正確な診断につながる可能性がある。

治療上の推奨

アスリートのEDが診断された場合、速やかな治療につなげることが重要だ。治療介入への反応は女性アスリートのそれと同様であることが示唆されている。

現状での障壁として、治療アクセスの困難さが挙げられる。これまでの男性アスリートのEDの過少報告がケアの遅延の一因であり、スポーツヘルスの専門家は、多くの男性アスリートがEDに対して抱く羞恥等に配慮しそれを緩和する役割が求められる。このことは、男性アスリートが薬物使用に至ったり、うつなどの健康障害につながることを防ぐことにもなる。

EDを治療しスポーツに復帰するアスリートは、厳重なモニタリングのもとで徐々に復帰していくべきである。軽い身体活動から完全なスポーツ参加まで段階的に進めていき、途中でED関連行動が現れた場合、元のステップに戻るようにする。

文献情報

原題のタイトルは、「Eating Disorders in Male Athletes」。〔Sports Health. Jul/Aug 2020;12(4):327-333〕
原文はこちら(American Orthopaedic Society for Sports Medicine)

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