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運動後の筋グリコーゲン回復には、炭水化物に蛋白質を「上乗せ」することが重要

運動後の食物摂取による筋グリコーゲン回復は、炭水化物単独摂取と、炭水化物と蛋白質をともに摂取した場合とで異なるか否かを、これまでの論文のメタ解析によって検討した結果が報告された。結論は、炭水化物の一部を蛋白質に置き換えた場合は回復効果に有意差はなく、炭水化物に蛋白質を上乗せして摂取した場合に有意な差が認められるというものだ。詳細は、米国スポーツ医学会の「Medicine and Science in Sports and Exercise」に掲載されている。

運動後の筋グリコーゲン回復には、炭水化物に蛋白質を「上乗せ」することが重要

研究の背景と目的

運動後に炭水化物と蛋白質を摂取すると、炭水化物の単独摂取よりも筋肉のグリコーゲン回復が増強するという研究結果がある。そのメカニズムとして、ロイシンなどのアミノ酸が膵β細胞からのインスリン分泌促進効果をもたらし、インスリンレベルがより上昇することで、筋グルコース取込みが増加するというものだ。しかし、蛋白質の同時摂取の効果を否定する研究結果もあり一貫しておらず、現時点でコンセンサスを得るに至っていない。

本論文の著者らは、これらの相違が、摂取する炭水化物の一部を蛋白質に置き換え、等エネルギー量で比較した研究と、炭水化物に蛋白質を追加して、異なるエネルギー量で比較した研究が、混在しているために生じているとの仮説を立て、これまでの研究報告を網羅的に検索し、メタ解析による検討を行った。

抽出された論文は20件

文献検索には、PubmedおよびCochrane Libraryを用いた。1回目の検索を2019年7月12日に行い、2020年3月24日に新規論文の有無を確認する2回目の検索を実施した。検索対象に発行期間の制限は設けず、また検索は英語で行ったが言語による制限は発生しなかった。

ヒットした767件の論文から適格基準を満たすものを2名の研究者が抽出し、20件を解析対象とした。適格基準は、健康な被験者を対象とした研究であり、運動後の筋グリコーゲン合成に関する無作為化試験または非無作為化試験とし、被験者の性別、および日常的にトレーニングを行っているか否かは問わなかった。

20件の研究の被験者数の合計は176人(男性158人、女性18人)で、平均年齢は19~33歳、平均VO2maxは49~67mL/kg/分に分布していた。

全体解析では有意な差は認められない

まず、すべての研究を対象とした解析結果をみると、効果量は0.13(最小-0.04、最大0.29)であり、有意な影響が認められなかった。

続いて、両群を等エネルギー量で比較した研究と、非等エネルギー量(蛋白質を上乗せ)で比較した研究で分け、サブグループ解析を行った。すると、等エネルギー量で比較した10件の研究では効果量-0.05(最小-0.23、最大0.13)で、やはり有意な影響は認められなかった。その一方で、非等エネルギー量で比較した13件の研究では効果量0.26(0.04、0.49)であり、運動後に炭水化物に加えて蛋白質を摂取した場合に、筋グリコーゲン合成への有意な影響が確認された。

摂取エネルギー量の差がグリコーゲン合成に影響する独立因子

回帰分析の結果から、グリコーゲン合成の分散(17%)を説明する有意な独立変数として、摂取エネルギー量の相違(等エネルギー量か非等エネルギー量の違い)が特定された(p=0.03)。その他、炭水化物量の高低(0.8g/kg/時以上または未満)や、相対炭水化物量、相対蛋白質量は、有意な因子として抽出されなかった。

結論として、運動後に炭水化物単独よりも蛋白質を加え、合計の摂取エネルギー量が増加した場合には、筋肉のグリコーゲン合成が増大することが示された。著者らは、この知見とともに、摂取エネルギー量が等しい場合は、炭水化物だけでなく、炭水化物と蛋白質の合計でそのエネルギー量を満たした場合もグリコーゲン合成は同等であることが示された点も、本研究から得られた重要な知見だと述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Coingestion of Carbohydrate and Protein on Muscle Glycogen Synthesis after Exercise」。〔Med Sci Sports Exerc. 2020 Aug 21〕
原文はこちら(American College of Sports Medicine)

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