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サッカーの審判にイエローカード? スポーツ栄養士のサポートが審判にも必要

サッカーの審判は等級が上位になるにつれてより多くの身体活動量が必要とされるが、その一方で年齢は高くなる。国際大会の審判は一般に30~45歳までキャリアを通じて、1試合に10~13kmを平均6.5km/時で走り、試合中の心拍数は最大値の約85%である160~165bpmとなる。最大酸素摂取量の80%近い負荷がかかり、消費エネルギー量は1,100~1,350kcalに達し、アスリートと見なすべき身体活動量を要する。実際、審判にもアスリートと同じ栄養戦略が推奨される場合があるが、審判がどのような食生活をしているのかはあまり報告されていない。

サッカーの審判にイエローカード? スポーツ栄養士のサポートが審判にも必要

本論文の著者らは2017年3月にイタリアで開催されたFIFAセミナーに参加した60名の国際サッカー審判員を対象とする体組成および食事摂取状況の調査を行った。対象となった審判は、週に5回トレーニングを行い、週に1回、公式試合で審判を務めていた。

国際審判の平均年齢は39歳、BMI23。炭水化物が少なく、脂質が多い

審判の平均年齢は39.2±4.2歳で、体組成に関しては、BMIが23.3±1.5、FMI(Fat Mass Index.脂肪量指数)は4.9±1.3だった。

摂取栄養素の構成比(および体重あたり摂取量)は、炭水化物が43.6±5.4%(3.1±0.8g/kg)、蛋白質が16.4±2.2%(1.1±0.3g/kg)、脂質が40.0±4.5%(1.3±0.3g/kg)だった。これに対し、米国スポーツ医学会のガイドラインの推奨値は、炭水化物55.0~70%(5.0~7.0g/kg)、蛋白質15.0~20%(1.2~2.0g/kg)、脂質30%未満(1.0g/kg)である。これにより、サッカーの国際審判の栄養摂取状況はガイドラインの推奨と比較して、炭水化物の摂取が少なく、反対に脂質の摂取が過多であることがわかった。

また、国際審判はアルコールを体重あたり0.1±0.1g/kg摂取しており、三大栄養素の摂取栄養素比率の合計(100%)以外の2.5±3.2%に相当する量の飲酒をしていた。ガイドラインはアルコールの摂取を推奨しておらず、過度の飲酒は身体能力、意思決定能力などへの影響が懸念される。

微量栄養素の不足も認められる

続いて微量栄養素の摂取量をみると、評価した8種類のミネラルのうち5種類とビタミンB9、B12が推奨量を満たしていなかった。具体的には、カルシウムが審判の摂取量661.8±189.2mg/日、ガイドライン推奨量900mg/日、以下同様に、カリウム2,2929.3±794.3mg/日、3,000mg/日、亜鉛10.2±2.5mg/日、11mg/日、マグネシウム295.6±82.6mg/日、420mg/日、ヨウ素21.2μg/日、100μg/日で、ビタミンB9は381.0±119.6μg/日、400μg/日、ビタミンB12は0.3±0.2μg/日、1.0μg/日。

審判の食生活はガイドラインの推奨を満たしていない

これらの結果から著書らは、「サッカーの国際審判の食生活は、アスリート対象のガイドラインに準じていないようだ」と述べている。また、推奨量より炭水化物摂取量が少なく脂質摂取量が多いことに関して、「炭水化物は中枢神経系の主要な基質であり、運動のエネルギー源である。サッカー審判には、長時間、持続かつ高強度の運動が求められ、炭水化物の高い可用性を保つことで、その能力が強化され、炭水化物の枯渇はスキルと集中力の低下につながる」と述べている。

加えて微量栄養素の一部が推奨量を満たしていなかったことに関して、「マグネシウムの欠乏は運動能力の低下、カルシウムの不足は骨ミネラル密度の低下につながる。また亜鉛は炭水化物、脂質、蛋白質、その他、微量栄養素の代謝に関与し、その不足はパフォーマンスを低下させる可能性があり、ビタミンの不足もパフォーマンスに負の作用が懸念される」と考察を加えている。

そして、この現状に対する実際的な対策として、「サッカーの審判に対してもスポーツ栄養の専門家を配置する必要がある」と提案している。

文献情報

原題のタイトルは、「Eating Habits and Body Composition of International Elite Soccer Referees」。〔J Hum Kinet. 2020 Jan 31;71:145-153〕
原文はこちら(Sciendo)

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