若年者のエナジードリンクの消費状況 レバノンの大学生で調査
エネルギー量を素早く確保でき、パフォーマンス向上につながるとの期待から、エナジードリンクは世界中で消費が拡大している。その利用者の半数以上は35歳未満の若年成人であることが報告されている。
一般的なエナジードリンクには、ブドウ糖のほかにカフェインやタウリン、クレアチン、カルニチン、ビタミンB、および朝鮮人参やイチョウ葉などのハーブ抽出物、あるいはアルコールが含まれており、精神的な注意力を高め、身体パフォーマンスを向上する製品としてプロモーションされることが多い。これらの影響にエビデンスが存在するものもある一方で、過剰摂取による潜在的な有害性を指摘する報告もみられる。具体的には、頻脈、不眠、頭痛、頻尿、嘔気・嘔吐、神経過敏などの報告がある。
カフェイン含有エナジードリンクやアルコール含有エナジードリンクの消費が拡大しているにもかかわらず、その利用状況は十分に研究されていないことから、本論文の著者らは、大学生を対象とする量的・質的混合研究を実施した。
ベイルートの2大学の学生に対する量的研究
最初に、同国の首都であるレバノンの2大学の18歳以上の学生226名を対象に量的研究を行った。調査回答者の年齢は20.7±0.13歳、53.5%が女性、93%が学部生で、35%は健康関連の研究分野に在籍していた。
45%はこれまでに少なくとも1回はエナジードリンクを利用し、そのうち53.8%は1カ月に少なくとも1回以上飲用していた。さらに、調査回答者全体の30%はこれまでに少なくとも1回はアルコール含有エナジードリンクを飲んだ経験があった
エナジードリンクの常用者と非常用者の相違
エナジードリンクを1カ月に1回以上飲用する群を「常用群」と定義すると、226人中102名(45.1%)が該当した。常用群と非常用群を比べると、前者は男性(56.9%)、後者は女性(62.1%)が多く、また、常用群にはアルコール、コーヒー、スポーツドリンクを習慣的に摂取する者が多かった。身体活動量の多寡で二分した場合、常用群では64.6%、非常用群では41.8%が身体活動量の多いグループに該当した。
年齢や性別などの社会人口学的因子で調整後も、エナジードリンクの摂取頻度は、身体活動量(OR1.89,95%CI:1.01-3.51)、コーヒー摂取頻度(OR2.45,95%CI:1.20-5.00)、スポーツドリンク摂取頻度(OR4.88,95%CI:2.41-9.88)と有意な正相関が認められた。
グループディスカッションによる質的研究
続いてグループディスカッションによる質的研究を行った。この研究の対象者は、レバノン国籍で18~30歳であり、少なくとも1カ月に1回以上エナジードリンクを利用する者29人。
性別に傾向を解析した結果、女性の場合、エナジードリンクが非アルコール性であるときのみ「許容可能」であることが明確に示された。男性は、公共の場でアルコール含有エナジードリンクを飲む若い女性を社会的に望ましくないと捉える傾向が認められた。男性については、エナジードリンクの摂取を「男らしさ」と関連づける傾向が認められた。
これらの消費行動の違いの理由の一つとして、社会文化的背景から、女性の飲酒への寛容性が低いことが関係していると推測された。
エナジードリンクの摂取に影響を及ぼす3要素
このほか、エナジードリンクの摂取に影響を及ぼす因子として、個人レベルの要因、対人関係の要因、環境レベルの要因という3要素が浮かび上がった。
例えば個人レベルの要因としては、勉強(47%)、仕事(36%)、スポーツ(35%)、および眠気の防止(20%)のために摂取するとの意見が多くみられた。副作用については、エナジードリンクをアルコールと一緒に飲んだ場合などに頭痛を生じたとの回答が多くみられた。
対人関係の要因としては、仲間からの影響と社会的イメージ、および親の影響もあることが明らかになった。仲間と一緒に過ごすときに、その場の雰囲気で飲むことがあるという回答や、社会的イメージの確立の一つの方法としてエナジードリンクを飲むという回答もみられた。
環境レベルの要因としては、企業の広告戦略の影響、価格が手ごろであること、手軽に入手できることなどが、エナジードリンクの利用拡大につながっていることがわかった。
文献情報
原題のタイトルは、「Energy Drinks Consumption and Perceptions Among University Students in Beirut, Lebanon: A Mixed Methods Approach」。〔PLoS One. 2020 Apr 30;15(4):e0232199〕
原文はこちら(PLOS)