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L-アルギニン、L-グルタミン等の複合補給がマウスの筋力を向上し疲労を抑制

L-アルギニン、L-グルタミン、ビタミンC、ビタミンE、葉酸、緑茶抽出物の補給が、生体内の一酸化窒素を増やし、運動疲労を軽減したり一部筋力の増強につながる可能性が、マウスの実験から示された。ヒトが使用する量と体表面積換算で同程度の摂取量で、有益性が認められたという。

L-アルギニン、L-グルタミン等の複合補給がマウスの筋力を向上し疲労を抑制

複合的作用がエルゴジェニック効果を生む

一酸化窒素(NO)は血管弛緩作用を有し、NOの生体利用性の低下は動脈硬化や高血圧などの心血管障害に関与している。運動はNO生体利用性を向上することが示されており、またL-アルギニン補給がNO虚血再灌流障害を抑制することも示されている。ただしL-アルギニン単独でエルゴジェニックサプリメントとして使用することによる運動パフォーマンスの向上は限定的で、パフォーマンスの向上にはさまざまな成分の相乗効果でもたらされると考えられている。

L-グルタミンは蛋白質の構成要素であり、筋肉と血漿に豊富な遊離アミノ酸であり、窒素輸送の担体でもある。グルタミンのサプリメントは、緩衝力を高め、高強度の運動パフォーマンスを改善するとの報告もみられる。L-アルギニンとL-グルタミンはいずれも必須アミノ酸ではないが、そのことはアスリートのトレーニング適応を最大化するために重要ではないという意味ではない。

現在、アスリートがトレーニング前に摂取する液体スポーツ飲料の成分として、L-アルギニンとL-グルタミンに加え、ビタミンC、ビタミンE、葉酸、緑茶エキスが多く用いられている。しかしこれらの同時摂取による相乗効果は、十分には検討されていない。

3種類の用量でLVFGを与えマウスを4週間飼育

この研究は、マウスを用いて前記栄養素の複合サプリメント「LVFG(L-arginine, L-glutamine, vitamin C, vitamin E, folic acid, green tea extract)」の効果を検討したもの。8週齢のマウス32匹を8匹ずつの4群に分け、1群は対象群とし、他の3群にはLVFGを異なる用量で4週間摂取させた。

LVFGの摂取量は、ヒトの場合、通常3,000mg/日であり、これを米国食品医薬品局のガイドに従い体表面積換算で等価量を615mg/kgと計算。これを1単位として1群には615mg/日(1単位群)、別の1群には倍量の1,230mg/日(2単位群)、残りの1群には5倍量の3,075mg/日(5単位群)、それぞれ摂取させた。

研究開始時点および4週間経過後において、体重、筋肉重量に有意差はなかった。また、飼育期間中の摂食量や飲水量にも有意差はなかった。

褐色細胞組織量、前肢グリップ力、NO濃度、グリコーゲン量などに有意差

形態学的データへの影響

形態学的には、前記のように、体重や筋肉重量に群間の有意差はなかった。しかし、褐色脂肪組織の重量は、対照群に比べ、LVFGの2単位群は1.13倍、5単位群は1.15倍で、有意に大きかった。また生体重量に対する褐色脂肪組織重量の比も、これら両群は対照群より有意に高かった。

運動パフォーマンスに対する影響

介入後の前肢グリップ強度は、LVFGの3条件のすべてが対照群より有意に強く、2単位群と5単位群は1単位群との比較においても有意に優れており、用量依存的に前肢グリップ強度が増強することが示された(傾向性p<0.0001)。通常、グリップ力の上昇を得るには、トレーニングプログラムが必要とされるが本検討では、LVFG摂取によりトレーニング介入なしでもグリップ力を向上するという結果が示された。

介入後の遊泳時間も、LVFGの3条件のすべてが対照群より有意に長かった。対照群と比較すると、1単位群2.78倍、2単位群2.89倍、5単位群2.25倍だった(傾向性p=0.0403)。

NOレベルに対する影響

介入後の血清一酸化窒素(NO)レベルは、対照群5.93±0.24μmol/L、LVFG1単位群7.23±0.20μmol/L、2単位群7.21±0.49μmol/L、5単位群6.60±0.51μmol/Lであり、1単位群と2単位群は対照群に比し有意に高値だった。

急性運動負荷後の生化学レベルへの影響

4週間の介入の最後の餌を摂取させた1時間後に、15分間の遊泳負荷を与え、その後の生化学マーカーを検討した。

乳酸値は、対照群6.5±0.3mmol/L、LVFG1単位群5.5±0.3mmol/L、2単位群5.2±0.2mmol/L、5単位群5.7±0.3mmol/Lであり、LVFGの3条件のすべてが対照群より有意に低かった。これは、LVFGが運動中の血中乳酸のクリアランスまたは利用を促進させる可能性を示唆している。

アミノ酸分解のマーカーの一つであるアンモニアのレベルは、対照群に比し、LVFG1単位群-33.40%、2単位群-39.71%、5単位群-41.15%であり、LVFGの3条件のすべてが対照群より有意に低く、用量依存性が認められた(傾向性p<0.0001)。これは、LVFGが運動中のアンモニア蓄積を緩和する可能性を示唆している。

持久系パフォーマンスの維持の重要な指標である血糖値は、対照群に比し、LVFG1単位群1.14倍、2単位群1.17倍、5単位群1.23倍であり、LVFGの3条件のすべてが有意に高値であり、2単位群と5単位群は1単位群との比較においても有意に高値であって、用量依存的に上昇することが示された(傾向性p<0.0001)。

筋損傷のマーカーの一つであるクレアチンキナーゼ(CK)のレベルは、対照群に比し、LVFG1単位群-44.21%、2単位群-46.45%、5単位群-48.50%であり、LVFGの3条件のすべてが対照群より有意に低く、用量依存性が認められた(傾向性p<0.0001)。これは、LVFGが運動による筋損傷を抑制する可能性を示唆している。

グリコーゲンレベルへの影響

肝臓のグリコーゲン含有量は、対照群12.41±1.54mg/g、LVFG1単位群14.63±1.41mg/g、2単位群22.46±1.99mg/g、5単位群16.21±1.61mg/gであり、LVFG1摂取量との用量依存性がみられ(傾向性p=0.0129)、2単位群は対照群より有意に高かった。

また、筋肉のグリコーゲン含有量は、対照群に比し、LVFG1単位群1.81倍、2単位群2.66倍、5単位群4.79倍であり、LVFGの3条件のすべてが有意に高値だった。また5単位群は1単位群や2単位群との比較においても有意に高値であって、用量依存的に上昇することが示された(傾向性p<0.0001)。

持久系アスリートは競技中にグリコーゲン貯蔵を大幅に減少させる。グリコーゲン貯蔵を増やすことで疲労までの時間が長くなり、パフォーマンスが向上する可能性がある。本研究から、グリコーゲン貯蔵量を最適化するLVFGの摂取量は1,230mg/kgであることが示唆され、それによりエネルギー利用が促進されると考えられる。

その他の生化学マーカーへの影響

AST、ALT、クレアチニン、アルブミン、および血糖値(非運動負荷時)は、有意な群間差はなかった。

BUNは対照群に比し、LVFG2単位群と5単位群で有意に高かった。総蛋白は、LVFGの3条件のすべてが有意に高値だった。脂質プロファイルでは、総コレステロールはLVFG1単位群が他群に比し有意に低く、中性脂肪はLVFG5単位群が他群に比し有意に低かった。

これらの結果のまとめとして著者らは、「1,230mg/kgのLVFGは、一酸化窒素レベルを増加させ、グリコーゲン貯蔵を増加させる。よって運動パフォーマンスを改善するための潜在的なエルゴジェニックエイドである可能性が示唆される」と結論している。

文献情報

原題のタイトルは、「Supplementation of L-Arginine, L-Glutamine, Vitamin C, Vitamin E, Folic Acid, and Green Tea Extract Enhances Serum Nitric Oxide Content and Antifatigue Activity in Mice」。〔Evid Based Complement Alternat Med. 2020 Apr 11;2020:8312647〕
原文はこちら(Hindawi)

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