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英国軍新兵のケガは栄養不足が原因? タンパク質やビタミンD、女性兵士は鉄やカルシウムが不足

スポーツアスリートでは、トレーニングで消費するエネルギー量に見合う量を摂取していないことが少なくないことが報告されているが、軍隊の兵士も同様にエネルギー所要量を満たしていないことが多いことが報告された。英国の新兵を対象に、食事摂取量の性差を調べる目的で行われた調査の結果、男性・女性ともに摂取量不足であることが明らかになった。

英国軍新兵のケガは栄養不足が原因? タンパク質やビタミンD、女性兵士は鉄やカルシウムが不足

英国陸軍の新兵養成課程のフェーズ1では、14週間のトレーニングが行われる。これには、身体的トレーニング、フィールドエクササイズ、行進、軍事訓練、武器および機器の取り扱いを含む、さまざまな軍事固有のスキルに関するトレーニングが含まれる。

新兵、とくに女性新兵は負傷が多い

フェーズ1のトレーニングでは、100人日あたり0.07件の負傷が発生し、医療のための除隊は100人日あたり0.02件発生する。新兵は毎日の高強度トレーニングの負荷とエネルギー消費にさらされており、適切な栄養供給がなければ、筋骨格傷害や気分の変調のリスクが高まる可能性がある。

男性のフェーズ1トレーニングにおける推定エネルギー消費量は4,000 kcal、走行距離は13.5±6.6km、女性は3,000 kcal、11.8±4.9kmと報告されている。女性はフェーズ1訓練中に筋骨格傷害を負うリスクが男性の2〜3倍高いことが明らかになっている。

リスクの増加は生物学的性差に起因する部分もあるが、骨格筋の修復を促進するために女性に対しては男性と比較して、エネルギー量やタンパク質摂取などの食事サポートを必要とされるケースがある。また女性は軍事訓練中に鉄やカルシウムなどの微量栄養素の積極的な摂取が必要かもしれない。

英国軍には新兵のための食事摂取基準(military dietary reference values;MDRV)が定められているが、これらが習慣的に満たされているのか否かを定量的に検証した研究は存在しない。そこで本研究では、英国陸軍新兵のエネルギー摂取状況を把握し、それがMDRVや推奨栄養所要量(recommended dietary allowance;RDA)と比較して適切かどうかを検証した(主要栄養素に関してはMDRVとの比較、MDRVが規定していな微量栄養素についてはRDAとの比較)。また、それらの性差についても検討した。

軍事訓練中に観察研究を実施

この研究は観察横断研究として行われた。観察期間は、10週間にわたる陸軍訓練施設での訓練期間中の8日間で、サンプルサイズは、先行研究から、性差を確認するには男性・女性各12名必要と判断されたが、最終的に解析対象となったのは、男性17名、女性28名だった。食事摂取量は、トレーニングセンターの食事施設において、朝食、昼食、夕食時に研究者が記録した。

男性は、年齢20.4±2.3歳、身長178.0±7.9cm、体重74.6±8.1kg、女性は21.4±3.0歳、163.7±5.0cm、65.0±6.7 kg。身長と体重の性差は有意だか、年齢とBMIの性差は有意でなかった。

摂取量は両性で不足しているが、女性では主要栄養素の不足がより多い

摂取エネルギー量

摂取エネルギー量は、男性2,846±573kcal/日、女性2,207±585kcal/日で、有意な性差があった(p<0.001)。MDRV(以下、RDAと比較している栄養素についてもMDRVと表記)は、男性4,100.0kcal/日、女性3100.0kcal/日で、充足率は男性69%、女性72%にとどまった。

体重換算では、男性38.3±7.3kcal/kg/日(MDRVは55.0kcal/kg/日)、女性34.2±10.3kcal/kg/日(同48.0kcal/kg/日)で、有意な性差はなかった(p=0.170)。

主要栄養素の摂取量

炭水化物の摂取量は、男性352±92g/日、女性243±79g/日で、有意な性差があった(p<0.001)。体重換算でも、男性4.8±1.3g/kg/日(MDRVは6.0〜8.0g/kg/日)、女性3.8±1.4g/kg/日(同6.0〜7.0g/kg/日)で、有意な性差があった(p=0.025)

タンパク質は、男性114±29g/日、女性83±18g/日で、有意な性差があった(p<0.001)。体重換算でも、男性1.5±0.3g/kg/日(同1.6〜2.0g/kg/日)、女性1.3±0.3g/kg/日(同1.4〜1.8g/kg/日)で、有意な性差があった(p=0.030)。

脂質は男性109±21g/日、女性100±27g/日、体重換算では男性1.5±0.2g/kg/日(同1.7〜2.1g/kg/日)、女性1.5±0.5g/kg/日(同1.5~1.9g/kg/日)で、いずれも有意な性差はなかった。

食物繊維は、男性23±5g/日、女性18±1g/日で、有意な性差があった(p=0.020)。体重換算では、男性0.3±0.1g/kg/日(同0.4g/kg/日)、女性0.3±0.1g/kg/日(同0.5g/kg/日)で、性差は有意でなかった。

微量栄養素の摂取量

ビタミンに関しては、男性・女性ともにビタミンDの摂取量が少なかった(MDRVは男性0.13μg/kg/日、女性MDRV0.15μg/kg/日に対し、摂取量は男性・女性ともに0.03±0.02μg/kg/日)。

またミネラルでは、女性において鉄の摂取量(0.12±0.04mg/kg/日)が男性(0.15±0.04mg/kg/日)およびMDRV(0.23mg/kg/日)より少なかった。またカルシウムの摂取量(699.0±287.0mg/日)が男性(1,078.0±418.0mg/日)より少なかった。

炭水化物とタンパク質、ビタミンD、および女性兵士には鉄とカルシウムを

以上の結果から著者らは結論を「英国陸軍のフェーズ1において、男性と女性兵士のエネルギー摂取量は、MDRVと比較すると不十分である。男性・女性の双方が炭水化物とタンパク質をより多く摂取する必要がある。タンパク質に関しては1.5g/kg/日を超える摂取量の潜在的な利点を考えると、軍隊としてはその効果を将来的に研究する必要があるだろう。また男性・女性ともにビタミンDの摂取量が低く、女性の鉄とカルシウムの摂取量が少ないことを考慮すると、微量栄養素の補給の影響も調査を要する」とまとめている。

文献情報

原題のタイトルは、「Sex differences in dietary intake in British Army recruits undergoing phase one training」。〔J Int Soc Sports Nutr. 2019 Dec 10;16(1):59〕
原文はこちら(Springer Nature)

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