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NCAA(全米大学体育協会)陸上1部によるビタミンD不足の評価・予防、および治療に関する実態調査

ビタミンDは主に日光やその他の紫外線光源にさらされた際の皮膚合成によって得られる以外に、食品・栄養補助食品として摂取される。アスリートに、ビタミンD不足、またはビタミンD欠乏症がみられることも少なくない。全米大学体育協会(National Collegiate Athletic Association;NCAA)のディビジョンI(1部)のアスリートの20~85%がビタミンD不足に該当するとの報告もある。

NCAA陸上1部プログラムの7割がビタミンD検査を実施し、4割がサプリを購入

ビタミンD欠乏症では、筋肉痛や脱力感などを来すことがあり、アスリートのパフォーマンスや健康、幸福感に影響することも示唆されている。実際、ストレス性骨折や軟部組織損傷の発生率はビタミンD低値のアスリートで高い。ただし、それらの対策としてビタミンD補給の効果については限られたデータしかなく、矛盾した結果もみられる。

ビタミンDの基準値は?

現在のところ、一般住民、またはアスリートのビタミンD不足の予防、診断、治療に関して得られているコンセンサスはわずかだ。その状況を表す 1つの例は、まさにビタミンD不足の定義そのものである。

米国内分泌学会は、血清25-ヒドロキシビタミンD [25(OH)D]20ng/ mL未満をビタミン欠乏症、25(OH)D20〜30ng/mLをビタミンD不足と定義している。一方で全米医学アカデミー(かつての米国医学研究所)は、米国成人の97.5%が除外されることを根拠に、12~20ng/mLをビタミンD不足としている。アスリートに最適な25(OH)Dの推奨値は40〜100ng/mLの幅がある。

高い有病率と潜在的な健康やスポーツパフォーマンスへの影響から、ビタミンD2不足はスポーツ栄養におけるトピックスの1つである。一般集団で観察されるビタミンD不足の頻度と同程度にアスリートの間にもビタミンD不足が存在するのか否かについてデータは少なく、さらにビタミンD不足に対しどのような対策が行われているのかについてもよく知られていない。

本研究では、NCAAディビジョンIで実施されているビタミンD不足の評価・予防、および治療に関する実態を調査する目的で行われたもので、結果は全米アスレチックトレーナーズ協会発行「Journal of athletic training」誌に掲載された。

NCAA1部347プログラムのヘッドトレーナーの72%が回答

NCAAディビジョンIに所属する347の競技プログラムのヘッドアスレティックトレーナーに、電子メールにてオンライン調査への協力を依頼した。ヘッドアスレティックトレーナーという肩書の担当がいない場合は、スポーツ医学のディレクターなど、代替と考えられる他の肩書のディレクターに協力依頼を行った。

アンケートの内容は、ビタミンD不足の評価・予防・治療のためのプロトコルの有無、コスト、ビタミンDサプリメントの取り扱いなど、8領域にわたる。まず、27名のヘッドアスレティックトレーナーにパイロット調査を行った。ヘッドアスレティックトレーナーが把握していないために回答が困難な質問、回答内容から所属機関が特定される可能があるために回答が困難な質問、アンケート全体の長さなど、明らかになった問題を調整した。

最終的に249名のヘッドアスレティックトレーナーから回答を得た(回答率72%)。回答者の65%は男性、82%が45歳以上、77%がヘッドアスレティックトレーナーとして16年以上の経験者。回答を寄せたプログラムの24.8%はスポンサード(資金提供のある)プログラムで、フルタイム勤務の担当者がいるプログラムは43%だった。

20%がビタミンD評価・治療プロトコルを所有

20%にあたる50名は、所属するプログラムがビタミンD不足の評価・予防・治療に関するプロトコルまたはポリシーが存在すると回答した。残りの80%(198名)は、プロトコルまたはポリシーが存在しないか、不明と回答した。

アンケートには、プロトコルまたはポリシーが存在すると回答した場合、その詳しい内容を記す自由回答形式の回答欄を設けてあったが、詳細を明らかにした記述はみられなかった。

血清25(OH)D検査

学生アスリートに対する血清25(OH)D検査の実施状況は、68%(169名)が「はい」、29%(70名)が「いいえ」、3%(8名)が「不明」と回答した。

約4分の1にあたる24%(59名)は、プログラムに所属している学生アスリート全員が血清25(OH)D検査を受けたと回答し、15%(37名)は女子学生アスリートは全員受けたと回答した。

ビタミンD検査の10%は管理栄養士・栄養士がオーダー

血清25(OH)D検査の実施を指示するのは、チームドクターが最も多く66%(163名)、続いてヘッドアスレティックトレーナー19%(47名)、登録栄養士または栄養士10%(25名)、その他の医療従事者5%(12名)だった。

スクリーニングとしての実施は20%

血清25(OH)D検査を実施する目的については、大半がアスリートの一般的な健康状態または健康履歴に基づいて判断(78%,193名)と、または傷害状態もしくは傷害履歴に基づいて判断(74%,183名)していた。具体的な理由や徴候のない学生アスリートに対しスクリーニングとして血清25(OH)D検査を実施するとの回答は20%(49名)だった。

ビタミンD不足に対する介入

管理目標値は「不明」が半数以上

血清25(OH)D値の目標値については、40~50ng/mLが27%(67名)、50ng/mL超が13%(32名)、30~40ng/mLが6%(15名)、20~30ng/mLが3%(7名)だったが、半数以上の51%(126名)は「不明」と回答した。

ビタミンDの目標値の適切さについて意見を求めたところ、30%(74名)は目標が適切であると考え、23%(57名)は低くすべきだと考え、9%(22名)は高くすべきだと考え、38%(94名)は「不明」と回答した。

ビタミンDサプリメントのコストを負担する/しないがともに4割

ビタミンDサプリメントのコストについては、42%がプログラムとして負担していると回答する一方、40%は負担しないと回答し拮抗していた。14%は時に負担、4%は不明だった。

プログラムとしてビタミンDサプリメントのコストを負担しているか否かの違いと、ビタミンDサプリメントの提供をプログラムの資金の有効活用として評価するか否かの判断には、相関がなかった。

自由記述の中には、「以前はすべてのアスリートがビタミンD検査を受けていた。現在は練習後にビタミンDサプリメントを配るだけで、全員が低値に戻ってきているようだ」「主として屋内でトレーニングするチームに対しては、ビタミンDサプリメントを予防的に配布している」といった回答がみられた。

血清25(OH)D検査やビタミンDサプリメントのコスト

血清25(OH)D検査のプログラムあたりの施行頻度は年間平均58.6回(範囲は8〜1,660回に分布)だった。1検査あたりのコストは51~100米ドルが51%、101~150米ドルが20%、150米ドル以上が10%、50米ドル未満が8%、不明が11%だった。

このコスト単価を検査回数を乗算し推定総コストを計算すると、平均7,250米ドル(範囲は600~16万米ドルに分布)が費やされていた。検査の単価と検査の実施回数に相関はなかった。

ビタミンD関連コストの有効性

回答者のうち58%(143名)は、ビタミンD検査とビタミンDサプリメントはプログラムの資金の有効利用ではないとする一方、31%(77名)は資金の有効利用であると回答した。9%(22名)は時に有効、2%(5名)は不明と答えた。これら回答者の認識と、検査の実施およびビタミンDサプリメントのコスト負担の実施の有無に、相関はなかった。

登録栄養士または栄養士を採用しているプログラムでは、ビタミンDプロトコルが導入されている割合が有意に高かった(p<0.05)。

以上の結果のまとめとして著者らは、「NCAAディビジョンIの競技プログラムにおけるビタミンDの取り扱いは大きなばらつきがみられる。スポーツ医学およびスポーツ栄養の専門家の最良の介入、プロトコルやポリシーの確立のため、より多くのエビデンスが必要とされる」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Vitamin D Practice Patterns in National Collegiate Athletic Association Division I Collegiate Athletics Programs」。〔J Athl Train. 2020 Jan;55(1):65-70〕

原文はこちら(National Athletic Trainers' Association)

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