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過食症の治療において、運動・食事療法は認知行動療法と同等の効果を期待できる

身体活動は、感情をポジティブに変え、自己認識、自己効力感、QOLを改善し、さらに不運やうつ症状を緩和することが知られている。過食症の治療にも身体活動をとり入れることが有効な可能性が考えられるが、エビデンスの裏付けは少なく、臨床では認知行動療法がとられることが多い。

過食症の治療において、運動・食事療法は認知行動療法と同等の効果を期待できる

本論文の著者らは、運動・食事療法が、抑うつ症状を改善させるのと同様に、神経性過食症(過食の代償行為を伴う過食症)と、過食性障害(代償行為を伴わない過食症)の症状を緩和し、主観的幸福感を高め、心理社会的障害を改善する効果が認知行動療法と同等であり、治療脱落率は低いとの仮定を立て、以下の無作為化比較試験を行った。

対象の割付けと介入方法:16週間の治療効果を検証

対象は、神経性過食症または過食性障害で年齢が18〜40歳、BMI17.5〜35の範囲内の女性。一般開業医、雑誌、新聞、全国テレビ、ソーシャルメディア、ポスター、および摂食障害患者組織のWebページを通じて募集し、スポーツ科学ノルウェー大学において実施した。性別と年齢を限定した理由は、治療介入法を割付けた際の群間の均質性を確保するためであり、BMIを限定した理由は、運動療法の一部にスクワットやインターバルランニング等の負荷の高いメニューがあり、安全性を考慮したため。

応募した418名のうち、選択基準にマッチする者から、双極性障害、PTSD、より積極的な治療が必要な状態などを除き、164名が参加登録された。無作為に2群に分け、76名を運動・食事療法群、73名を認知行動療法群とした。すぐには治療を受けないことを選択した23名は非介入の比較対照群とした。

運動・食事療法群に対しては理学療法士、運動療法士がレジスタンス運動やインターバルトレーニングなどを指導し、食事療法については栄養士が指導した。認知行動療法群に対しては少なくとも10年の経験をもつ臨床心理学専門家が介入した。

介入期間は16週間で、過食症の寛解を米国精神医学会DSM-5に即して判定したほか、うつ症状や生活満足度を各評価スケールを用いて点数化した。介入終了後も最大24カ月まで追跡した。

ベースラインの患者背景:神経性過食症は代償行為が多く、過食性障害はBMIが高い

ベースラインの患者背景をみると、運動・食事療法群と認知行動療法群とで、群間に有意差はなかった。

一方、神経性過食症(n=117)と過食性障害(n=55)の比較では、前者において嘔吐や下剤の使用などの代償行為が多く、後者はBMIが高いという有意な差がみられた。

両群で同等の有効性:効果発現の速さなどに群間差

では、結果をみてみよう。

治療の参加率、遵守率、脱落率

16週間にわたる介入期間中の治療参加率は、運動・食事療法群80.6%、認知行動療法群82.1%で同等だった。運動療法に関してはトレーニング記録から遵守率も検討された。それによると、レジスタンス運動は69.8%、インターバルトレーニングは56.7%遵守されていた。

介入期間中の脱落者は合計37名で、群間差はなかった。事後解析により、脱落者はベースライン時のうつ症状スコアが有意に高いことがわかった。

介入終了後の追跡不能者は、認知行動療法群が有意に多かった。

過食症の寛解率

両群ともに介入終了後から追跡期間中の完全寛解・部分寛解率は30~50%で、群間差がなかった。なお、比較対照群(非介入群)では完全寛解はなく、部分寛解が16週経過時点で約5%だった。

うつ症状等の変化

運動・食事療法群は過食症の症状緩和だけでなく、主観的な幸福感と心理社会的障害を認知行動療法群と同等に改善するとの仮説を支持する結果が得られた。さらに運動・食事療法群では、治療に対するより迅速な反応が認められた。またうつ症状の軽減もみられた。

一方で治療脱落率が低いとの仮説は証明されず、群間差がなかった。

運動・食事療法は認知行動療法の代替となり得る

以上一連の結果から著者らは本検討の結果を、「過食症に対する運動・食事療法の効果は認知行動療法と同等であり、身体活動や食事に焦点を当てた介入は多くの患者にとって魅力的な治療法と思われる。認知行動療法にアクセスできない環境などでは、運動・食事療法群が代替手段となり得る。今後はこの結果の追試と、運動と食事が効果を発揮するメカニズムの解明が必要」とまとめている。

文献情報

原題のタイトルは、「Is physical exercise and dietary therapy a feasible alternative to cognitive behavior therapy in treatment of eating disorders? A randomized controlled trial of two group therapies」。〔Int J Eat Disord. 2020 Jan 16〕

原文はこちら(John Wiley & Sons)

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