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アスリートはコエンザイムQ10が不足? 抗酸化能などとの関連が横断研究で示される

炭水化物はスポーツの主要なエネルギー源であり、インスリン感受性の高いアスリートはパフォーマンス発揮に必要なエネルギーをグリコーゲンとして、より多く蓄えている。血糖およびインスリンの応答は、運動中の骨格筋収縮のエネルギー産生と、炭水化物および脂質酸化の調節に関与するため、血糖管理はスポーツ栄養の重要なポイントと考えられる。

アスリートはコエンザイムQ10が不足? 抗酸化能などとの関連が横断研究で示される

一方、コエンザイムQ10はミトコンドリア呼吸鎖におけるアデノシン三リン酸(ATP)合成に関与し、運動時の即時的熱産生にかかわる。よってコエンザイムQ10レベルとアスリートの血糖および抗酸化活性に相関が存在する可能性があるが、これまで検討はされていない。

本研究は、アスリートのコエンザイムQ10、血糖関連パラメーター、抗酸化能レベルは、非アスリートとは異なるとの仮説に基づき検討した、台湾の大学で行われた横断研究。著者らによると、「アスリートのコエンザイムQ10レベルと血糖値、抗酸化能を検討した初めての研究」という。

対象と試験デザイン

43名の大学生と健康な非アスリート大学生25名を対象とした。平均年齢は20歳、男女比2:1、アスリートの競技種目はテコンドー49%、サッカー51%。アスリート群は毎週12時間以上トレーニングしている者で、対照群は定期的なトレーニングをしていない者(毎週12時間未満)。除外基準は、18歳未満、栄養補助食品やコエンザイムQ10の摂取、抗高脂血症薬または抗トロンビン薬の服用。

背景因子に関しては2群間で、年齢、性別、BMI、喫煙・飲酒習慣に有意差はなかった。身体活動に関しては、アスリート群が対照群に比し有意に多く、総身体活動量1万7,610.5±7,781.7 vs 7,351.7±5,643.2MET分/週、中等強度運動3,384.3±2390.5 vs 1,443.2±1,682.9MET分/週、高強度運動1万2,485.6±5,759.6 vs 4,345.6±3,606.0MET分/週(いずれもp<0.01)。血液検査値ではアスリート群において尿素窒素(BUN)とHDL-Cが有意に高く、eGFRとTGは有意に低かった(いずれもp<0.05)。

2群間での比較検討

結果についてまず、アスリート群と対照群の対比をみてみる。

血糖関連パラメーター

血糖関連パラメーターでは、アスリート群は対照群より血糖の平均値と相関するHbA1cレベルが有意に高いながら(5.5±0.3 vs 5.3±0.3%,p=0.01)、インスリン感受性の指標であるQUICKIは有意に高く(0.37±0.03 vs 0.34±0.03,p<0.01)、インスリン抵抗性であるHOMA-IR(1.5±0.8 vs 2.9±3.8,p<0.01)と、インスリン値は有意に低かった(47.9±22.2 vs 88.2±97.7pmol/L,p<0.01)。血糖値やインスリン分泌能の指標であるHOMA-βは有意差がなかった。

酸化ストレス、抗酸化能

酸化ストレスについては、血漿マロンジアルデヒド(MDA)および赤血球MDAともに有意差がなかった。

抗酸化酵素については、スーパーオキシドジスムターゼ(super oxide dismutase;SOD)、カタラーゼ活性(catalase activity;CAT)、グルタチオンペルオキシダーゼ(glutathione peroxidase;GPx)のいずれも有意差がなかった。その一方で、総抗酸化能(total antioxidant capacity;TAC)は、血清(5.7±0.3 vs 5.4±0.2mM)、赤血球(10.5±0.6 vs 10.0±0.5mM)のいずれもアスリート群が有意に高値だった(p<0.01)。

コエンザイムQ10レベル

アスリート群と対照群とで、血漿コエンザイムQ10レベルに有意差はなかったが(0.54±0.17μM vs 0.52±0.11μM,p=0.56)、白血球コエンザイムQ10レベルはアスリート群が大幅に低値だった(0.34±0.24nmol/g vs 0.65±0.43nmol/g,p<0.01)。

アスリート群における抗酸化能の検討

続いてアスリート群におけるコエンザイムQ10レベルと抗酸化能、血糖関連パラメーターとの関連をみてみる。

コエンザイムQ10レベルと抗酸化能の相関

血漿および白血球のコエンザイムQ10レベルは、CAT活性と有意な正相関がみられた(血漿:r=0.50,p<0.01.白血球:r=0.56,p<0.01)。同様にGPxと有意な正相関がみられた(血漿:r=0.49,p<0.01.白血球:r=0.56,p<0.01)。また、血清TACとも有意な正相関がみられた(血漿:r=0.37,p<0.05.白血球:r=0.54,p<0.01)。

SODや赤血球TACとの相関は認められなかった。

コエンザイムQ10レベルと血糖関連パラメーターの相関

血漿および白血球のコエンザイムQ10レベルは、空腹時血糖値と有意な負の相関がみられた(血漿:β=-0.74,p=0.04.白血球:β=-1.10,p<0.01)。同様にHOMA-IRと有意な負の相関がみられた(血漿:β=−1.42,p=0.04.白血球:β=-1.81,p<0.01)。

HbA1cとの関連は、血漿コエンザイムQ10レベルではβ=-0.51,p=0.05で有意性は境界値だが、白血球コエンザイムQ10レベルはβ=-0.82,p<0.01で有意な負の相関がみられた。

QUICKとの関連は、血漿コエンザイムQ10レベルではβ=0.04,p=0.08で有意でなく、 白血球コエンザイムQ10レベルはβ=0.08,p<0.01で有意な正相関がみられた。

次のステップでは、パフォーマンスとの関連の検討へ

先行研究から、コエンザイムQ10は炎症反応にかかわる転写因子「NF-κB」の発現を阻害して炎症を抑制し、インスリン感受性を改善することが示されている。本研究の結果から、アスリートのコエンザイムQ10レベルと血糖関連パラメーターおよび抗酸化能に有意な相関があることが見出された。

著者らは「横断研究であるため因果関係は特定できないものの、アスリートにはコエンザイムQ10欠乏症が存在していて、適切なコエンザイムQ10レベルがアスリートの抗酸化能と糖代謝を向上させる可能性がある。今後は、アスリートのコエンザイムQ10補給の適切な用量を決定し、そのレベルを最適化して運動パフォーマンス改善に向けた、さらなるスポーツ栄養学的介入研究が必要だ」と結論をまとめている。

文献情報

原題のタイトルは、「Coenzyme Q10 status, glucose parameters, and antioxidative capacity in college athletes」。〔J Int Soc Sports Nutr. 2020 Jan 10;17(1):5〕

原文はこちら(Springer Nature)

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