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高エネルギー・低栄養食品の消費と味覚に関する好みの影響

経済的に発展した諸国では肥満が公衆衛生上の共通した問題であり続けている。その背景としてエネルギー含有量の高い食品が広く流通し、人々に好まれている状況がある。当然ながら、個人個人が食べるものを選択するにあたり、食品の「味」は大きな意味をもっている。本論文は、食品の「味」とエネルギー摂取量の過多、および低栄養の関連についての総説。

高エネルギー・低栄養食品の消費に関する好みの影響

味覚と栄養素の間に横たわる4つの問題

食品に含まれる栄養素は、9種類の主要栄養素の合計として表されるNRF(nutrient rich food)スコアで評価可能。NRFスコアの高い(つまり栄養素の豊富な)食品を多く含む食事は健康促進的でエネルギー摂取量が抑制される傾向がある。反対にNRFスコアが低い(つまり栄養素の乏しい)食品を多く含む食事は体重増加と負の健康と関連している。

今日の工業化された食糧供給システムは、後者のNRFスコアが低い食品が大きな割合を占める結果につながっている。これらの食品は、高用量の砂糖と飽和脂肪、ナトリウムが使われていることが多く、大量で低価格であり、かつ使いやすさのために高度に加工されており、簡単に食事に供される。このような食品の味と栄養の関連は、以下の4つのポイントで考える必要がある。

まず、人が食べ物を食べる時、味をもとに含まれている栄養素、添加物を容易に判断できるわけではないという点だ。例えばパンに含まれるナトリウムは同量のナトリウムを含むチップスより塩味は少ない。

第2に、技術革新によって味覚と栄養組成を分離することが可能になった。具体的には非栄養甘味料は、エネルギー量のない甘味食品を出現させ、甘味によるエネルギー量の判断を困難にしている。

3つ目のポイントは、健康的な食品と非健康的な食品の双方に共通する特定の味が存在することだ。例えば栄養が豊富な果物と、栄養が乏しい砂糖入り飲料はともに甘味がある。また苦みはビールなどのアルコール飲料に多いだけでなく、ブロッコリーや芽キャベツなどの栄養が豊かな食品にもある。

最後に、味の相互作用の問題が挙げられる。一例として苦味は甘味を抑制するために、味覚による栄養素の判断が正しくない結果につながることがある。また、栄養の乏しい食品に砂糖やナトリウム、脂肪が添加されやすい一方で、栄養の豊かな食品にはそのような手が加えられることが少ないことを考慮すると、栄養が豊かな食品はそうでない食品よりも味が薄いことが多いと考えられる。

栄養の少ない食品を好む味覚が、どのように発達するのか?

新生児に苦味のあるものを与えた時の症状から、ヒトは出生時、既に苦味を識別可能と考えられる。また甘味に関しても同様に、新生児は普通の水よりもショ糖を加えた水を好む。これらは、危険の回避と成長・発達に必要なエネルギーを確保するという進化上のメリットにつながる。実際に、幼児期に甘味を好むことは身体の成長スピードの速さと関連するとの報告が複数みられる。

塩味に関して新生児は無関心のように思われる。生後4~6カ月の乳児期には、塩辛い水に優先的に応答するような反応が見てとれる。幼児期(約3歳)になると塩味に拒否反応を示し始める。ただしその場合も文化的に受け入れられている塩辛い食べ物に対する好みは引き続き高いまま持続する。

脂肪乳剤に関しては新生児・乳児ともにほとんど無関心のようだ。苦味が明らかに新生児・乳児から拒否されるのと同様に、酸味も嫌われるようだ。1歳半前後の幼児の5分の1から3分の1は砂糖溶液中のクエン酸を好む。このような幼児は、クエン酸に興味を示さない幼児よりも果物の摂取量が増えることがわかっている。

このような新生児から乳幼児期の味に対する興味や好みは、成長に伴う学習によって変化していく。成人後であっても味の好みは個人内で一定せず、精神生理学的状態、空腹感などによって変化する。

甘味・塩味・脂肪味と食事摂取

甘味と食事摂取

甘味と食事摂取量の間に介在する最も強力で潜在的な関連は、快楽との関連である。一般的に甘味が好きな人は、栄養の乏しい食品である精製糖と全糖からより多くのエネルギーを摂取する。しかし、甘味と食物の摂取の関連を検討した17件の研究の系統的レビューからは、甘味の感受性と食事摂取パターンとの関連は認められないと結論付けられた。甘味そのものはエネルギー摂取量との高い相関は存在しないようだ。

塩味と食事摂取

塩味の好みと摂取量は関係が認められる。成人対象の縦断的研究は、食品の塩分を変えると、塩味の好みが変化し、塩味の強度が知覚されることを示唆している。具体的には、ナトリウム量の低い食事を続けると、被験者は塩分レベルが低いことを好むようになる一方で、ナトリウム摂取が増加すると、より好ましいと感じるナトリウムレベルが増加する。これらの研究は、食塩の味覚と好みは、食事のナトリウム摂取量を変えることで修正できることを意味する。

脂肪味と食事摂取

脂肪味受容体が刺激されると、GLP-1(glucagon-like peptide-1)やCCK(cholecystokinin)といった満腹ホルモンが放出され、満腹感が生じる。いくつかの研究では、脂肪の味覚感受性と肥満との間に有意な関連性が認められた。肥満の人は脂肪味に対する感度が低い可能性が高い。

子どもの頃に栄養の豊かな食品の味に馴染ませる

健康への関心が低い消費者の注意を健康食品の選択に向けることは難しく、食品包装に健康関連情報をより多く記載することによって問題が解決する可能性は高くない。一方で栄養価の低い食品は価格設定(例えば砂糖税などにより)を上げることで、相対的に魅力を低くすることができる。このようなアプローチは、栄養不良食品の購入を減らすことが実験的に示されている。

栄養の乏しい食品は典型的な場合、消費者にとって魅力的である。甘味や塩味が好きな生来の嗜好は、栄養の乏しい食品から消費者を遠ざけることを困難にする。しかし、味の好みと食品の選択は、とくに子どもの頃に繰り返し接することによって変更できる可能性がある。

文献情報

原題のタイトルは、「The Influence of Taste Liking on the Consumption of Nutrient Rich and Nutrient Poor Foods」。〔Front Nutr. 2019 Nov 15;6:174〕

原文はこちら(Frontiers Media)

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