米陸軍グリーンベレー志願者では、日常の食事スコアが良好なほど身体能力が高い
米国陸軍特殊部隊「U.S.Army Special Force」、別称「グリーンベレー」は、世界最強の特殊部隊とされる。そこへの入隊は、まず志願者の中から候補者が登録され、その後約20日間に及ぶ過酷なテスト「Special Forces Assessment and Selection;SFAS」を通過した者だけが許される。SFASでは志願者の過半数がテストの途中でギブアップする。
志願者はアスリートと同様に、自身の身体的パフォーマンスを最大化しそれをSFASで実証する必要があり、食生活への配慮は必須となる。ただし入隊のためのSFAS期間中の食事はほぼ軍から供給されるため、SFAS期間中の身体パフォーマンスはSFAS以前の日常の食習慣によって決定される。そのためSFASは、日常の食習慣が身体パフォーマンスに及ぼす影響を評価する絶好の機会となる。このユニークさに着目して行われたのが本研究だ。
対象は現役の米陸軍兵士でSFASに候補として登録された者1,750名のうち、研究への参加に同意し実際にSFASにトライした782名。日常の食生活の質は、米国農務省「Healthy Eating Index2015;HEI」(アメリカ人のための食生活指針 2015-2020)で評価した。パフォーマンスとの関連の解析に際しては、年齢、学歴、BMI、レジスタンストレーニングのタイプと期間、喫煙で調整し検討した。
食事スコアは年齢、学歴、BMIと相関
結果についてまず、HEIスコアと関連のみられた因子を挙げると、年齢25歳以上の年長者は25歳未満の者よりスコアが高く、食事の質が有意に高かった。また学歴が高いこと、およびBMI25以上も、食事の質の高さと有意に関連していた。一方、軍における階級、有酸素運動能力、レジスタンストレーニングの実施期間、喫煙歴、摂取エネルギー量と有意な関連はなかった。
食事スコアとフィジカルテストの点数が相関
次に、食事スコアとSFASにおけるフィジカルテスト「Army Physical Fitness Test;APFT」の関連についても有意に相関することがわかった。具体的には、APFTの総合スコアを四分位に分けた場合、APFT総合スコアが第1四分位(フィジカルテストの成績が最も悪い群)に比し、第4四分位(成績が最も良い群)は、HEIスコアが有意に高かった。また、APFTは総合スコアのみでなく、細項目別にみた場合も、2マイル走行、上体起こし、ロードレースにおいて、HEIスコアと有意な関連がみられた。
食事スコアが高いほどテスト通過率が高い
さらに食事スコアは、グリーンベレー入隊志願者にとり最大の関心事である隊員としての採用率とも有意に相関していた。HEIスコアを四分位に分け採用率を比較すると、第1四分位(食習慣が最も良くない群)に比し、第3四分位と第4四分位は有意に採用率が高かった。以上の検討より、日常の食生活の質が良いほど身体的パフォーマンスが高いことが示された。
HEIスコアのコンポーネント別にみたAPFTスコアとの関連
続いてHEIスコアのコンポーネント別にAPFTスコアとの関連の有無を検討した。すると、豆類の摂取量が多いことが、APFT総合スコアが高いこと、およびロードレースの良好な成績と有意に関連していた。また野菜摂取量が多いこと、および魚介類や植物性蛋白質の摂取量が多いことが、ロードレースの良好な成績と有意に関連していた。
文献情報
原題のタイトルは、「Diet Quality Is Associated with Physical Performance and Special Forces Selection」。〔Med Sci Sports Exerc. 2020 Jan;52(1):178-186〕