家族の生活状況や兄弟の数も、子どもの身体活動量に影響を与える
小児期に身体活動に慣れ親しんでいると、成人後の心血管疾患や2型糖尿病のリスクが低下し、感情的な幸福感や適切な自尊心の維持にもつながると考えられている。本報告の著者らの出身国である英国でも、小児期には少なくとも1日あたり60分間の中等度から高強度の身体活動(moderate to vigorous physical activity;MVPA)が推奨されているが、実際に英国の7~8歳の子どものうちこれを満たしているのは51%のみと報告されている。
子どもの身体活動量は、家族構成の影響を受ける可能性が考えられる。ただしそれを裏付けるデータはない。本論文はこの点に着目した研究。英国では伝統的な二親の核家族が減少し、代わって一人親家庭や多世帯で構成された家庭が増えているという。
英国のブリストルとその周辺地域の小学校250校を対象に調査への協力を依頼したところ、26%にあたる65校が賛同。スケジュールの関係等で調査を実施できなかった学校を除き、57校の小学1年生(年齢中央値6歳)1,299人が最初の調査対象となった。その3年後に初回の調査対象校のうち47校から小学4年生(同9歳)1,223人を対象に2回目の調査が行われ、さらに2年後に50校から小学6年生(同11歳)1,296人を対象に3回目の調査が行われた。調査対象となった子どもの人数は合計2,132人で、958人は3回中1回の調査のみ、662人は3回中2回の調査対象となり、512人は3回すべての調査対象となった。
調査期間中、1週間のうち週末の2日を含む計5日間、毎日起床とともに加速度計を着用し身体活動状況を評価した。家族構成については保護者へのアンケートにより、兄弟の人数、ともに生活している保護者の人数、調査対象の子どもが複数の家庭で暮らしている場合(例えば平日と週末で別の家族のもとで暮らしている場合など)はその家族数を把握した。
子どもの身体活動量をまず男女で比較すると、年齢にかかわりなく男児は女児より活発だった。年齢の変化との関連をみると、男児の平日のMVPAは変化がなかったが、週末のMVPAは年齢が上がるにつれて減少していた。女子の場合は平日と週末の両方で、年齢が上がるにつれてMVPAが減少していた。
家族構成との関連を、年齢や家庭教育状況ほか影響を及ぼし得る因子で調整したうえで検討した結果、9歳児に関しては男児・女児、平日・週末のいずれにおいても、有意な影響はみられなかった。しかし11歳児では、複数の家庭で生活している男児は1家庭で暮らしている男児に比べ、休日のMVPAが15.99分有意に短かった。
さらに6~11歳の経過を縦断的に解析すると、複数の家庭で生活している男児は1家庭で暮らしている男児に比べ、休日のMVPAが11.02分有意に短かった。平日のMVPAも短い傾向がみられたが有意ではなかった。一方、女児に関しては、兄弟が多いほうが週末のMVPAが1.89分有意に長いという関連が認められた。
著者らは結論を「家族構成と子どものMVPAの間で若干の関連性が示された。子どもたちがMVPAの推奨事項を満たせるように、すべての家族構成の家庭を支援する必要がある」とまとめている。
文献情報
原題のタイトルは、「A Longitudinal Study of the Associations of Family Structure with Physical Activity across the Week in Boys and Girls」。〔Int J Environ Res Public Health. 2019 Oct 22;16(20)〕